【レビュー】Ghost of Tsushima

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對馬の冥人

Ghost of Tsushima(以下、GoT)はアメリカのデベロッパーであるサッカーパンチが制作した日本の侍にフィーチャーしたゲームである。
GoTが発表された際に意外であったのは海外のデベロッパーが侍ゲームの題材として選んだのが「蒙古襲来(元寇)」であった点だ。
日本史の中においては戦国時代や新選組がエンターテイメント作品でチョイスされる事が多いだけに、海外のメーカーがこの時代の侍(武士)を描こうとした事は驚きだったのだ。
しかし、今までにゲームでは余り描かれる事が少なかった時代であるため素晴らしい選択であると感じた事も確かだ。
とは言え、それを選択したのがお膝元である日本メーカーではなかったことは嘆かわしいが。

 

【PS4】Ghost of Tsushima (ゴースト オブ ツシマ)

【PS4】Ghost of Tsushima (ゴースト オブ ツシマ)

  • 発売日:2020/07/17
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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時代劇のような物語

GoTは蒙古襲来を題材にした侍(武士)を主役としたフィクションのストーリーが特徴的だ。
蒙古襲来と言う実際の出来事が題材となっているが、史実をなぞるようなものではなく、本作で描かれる侍像は後世のイメージが踏襲されていたりと、あくまでもエンターテイメント面を前面に押し出した時代劇映画のような内容となっている。
本作は海外デベロッパーが開発した日本題材の作品であり、そうなるとトンデモ日本になっていないかと心配になる方もいるかも知れないが、しっかりと研究をして作成されており「日本っぽくない」と感じた部分は全くと言って良い程に無かった印象だ。
立ち方から座り方といった細かな部分まで武士らしい所作を再現している。

主人公は対馬の武士の1人である境井仁という人物で、対馬に攻めてきた蒙古に正々堂々と戦って散々に打ち負かされ敗走した。
その後、仁は津島各地を巡り、有力者から協力を取り付け、蒙古に対して反撃を行う準備をする。
本作のストーリーは侍を主体としながらも、後世の創作である暗殺者的イメージの忍者を感じさせるものになっているのも特徴だ。
誇りを重んじる侍から、対馬を取り戻すために汚い手段も厭わない暗殺者的な忍者へと様相を変えていく仁の葛藤と生き様が描かれている。
また、そんな忍者のような姿へと変わっていく仁だが、劇中にて情報戦に重きを置く事で有名な孫子を学んだと言っており、その素養自体は最初から培われていた点はキャラクター設定としても面白い(実際には当時の日本では孫子兵法はそこまで知名度はなかったと思われる)。

チュートリアルの作りも過去の回想と言う形で自然な形で挿入されているが、それ以上のものに昇華できている点も良い。
仁という人物は武士としてはある程度は成長している存在であるため、まだ幼い頃の回想をチュートリアルにするのは当然の選択だろう。
その上で、物語最後の結末に通じる印象的なものとなっており、物語の始まりが結末へと回帰する優れている導入だ。

ストーリーはそれなりにバリエーションが用意されており、時には武人を思わせる合戦のようなシチュエーションもあれば、暗殺者のようなシチュエーションもある。
事件がどのように発生したのか捜査するようなパートが差し込まれる事も多い。
しかし、その進行は非常にシーケンシャルであり、展開を先に進めるためには順序を追う必要がある。
そのため、事前にイベントポイントなどに行ってもイベントが発生したり、進行する事は無いクラシックな作りになっている。
全体的に融通が利かない作りになっているとは言え、基本的には「敵を倒す」「敵から見つからないようにする」という単純でわかりやすいシチュエーションで構成されているため、意味が良くわからない理由で失敗扱いにされるケースは少ない。
オープンワールドで一本道な作りをした事による悪い面が出来るだけ前面に出て来ないように配慮はされているように感じ、プレイフィールとしてもストレスは余り感じないだろう。

本作では行き先を「風」の流れが導いてくれる。
フィールド上に矢印が表示されたり、マップ上にルートが表示されたりする作品は非常に多いが、本作は「風」という世界観を全く壊さない要素にその役割を与えた着眼点は素晴らしい。
フィールドが立体的な作品ではそのまま利用する事は難しいかも知れないが、様々な作品に応用ができる。
また、本作の「風」という設定もストーリーとしても意味があるスピリチュアルなものとして解釈できるものになっており、ただ矢印が風に置き換わっただけにしない努力をしている点は称賛できる。
その他にもフィールド上の様々なランドマークにはキツネや鳥が案内をしてくれるなど、ナビゲーションの工夫が良い味を出している。
ただし、鳥は特に顕著なのだが、それらのナビゲーションをしてくれる動物は地形に引っ掛かってしまい、およそ鳥らしい挙動にならないのは惜しいポイントだろう。
また、キツネや鳥によるナビゲーションはスピリチュアルな自然を感じつつ、更に親切なシステムでもある一方で、「能動的に探索している感」を減退させてしまう。
そのため、露骨に配置された動物の後ろをついていくだけの作業に感じてしまう人はいるかも知れない。試み自体は興味深いがもっと深掘りが必要だ。

サブクエストも多く用意されている。
内容としては悲惨なものが多い印象だが、それでもプレイヤーの気持ちも沈んでしまうような暗いものではない丁度良いバランスになっている。
また、サブクエストをクリアした後にはNPCが別の村などで生き延びており、ちょっとしたエピローグ的な会話も少し用意されている。
助けたNPCのその後が垣間見えるのは嬉しい要素だ。

本作のストーリーおよびストーリーテリングにて気になった点も記載したい。
まず、話しかけられるNPCが少ない点はインタラクションを好むプレイヤーには少し物足りなく感じるかも知れない。
話せるNPCはサブクエストを依頼してくる人物か、もしくはサブクエストの情報を教えてくれる人物くらいなものなのだ。
死亡しているキャラクターに対してお辞儀をすると専用のセリフが発生すると言うインタラクションはあるのだが、何故だか生きた人間には一言も喋らない仁というキャラクター性は勿体なさを感じる。

メインシナリオとサブシナリオに共通して言える事なのだが、発生した事件の調査を行った際に足跡が残っている事が多すぎるのは気になる所だろう。
ゲーム的な都合であるため、ある程度は仕方がないと割り切れるし、筆者は基本的にそういう事には寛容なタイプではあると思っているのだが、それにしても多すぎるのだ。
もう少しパターンをひねり出して欲しかったように思える。

メインシナリオクリア後の描き方も「蒙古の残党を倒すまで終わらない」となるのは仕方がない面もあるのは理解できるが凡庸なまとめ方だ。

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主人公の心情をプレイヤーが決める

特定のポイントに赴く事で、プレイヤーは和歌を創作する事ができる。
和歌の創作は予め与えられたお題と句のパターンの組み合わせで完成させるものとなっている。
また、特定の場所にある温泉に入ると、プレイヤーは与えられた選択肢の内容に思いを馳せる。

和歌や温泉によってプレイヤーが仁の心情を決定づける点は面白い。
このようなインタラクションを行うゲームの場合には基本的には無個性な主人公に対して行われると思うのだが、本作はしっかりと個性と意志が宿っている仁という人物が主人公だ。
そんな仁の心情を会話では無い方法でプレイヤー側が想像し、寄り添って決定させるのはユニークだ。

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魅力あるサブキャラクター

サブキャラクターにも魅力ある人物が多い。
復習の鬼と化した政子、昔馴染みでライバルのような関係性も感じさせる竜三などが筆者は好きだった。
サブキャラクター達の多くは専用のサブクエストが複数用意されているため、本編だけではわからないキャラクターの本質的な性格などはそちらで垣間見る事ができるようになっている。

これらのサブキャラクター達のサブクエストはプレイヤーキャラクターである仁のスキルとも関連させた作りとなっている。
政子であれば武士道あるいは剣劇のような戦闘がメインとなり、石川先生であれば弓術を使う事になる事が多い。
"ゆな"のサブクエストであればステルス要素が強くなる。
このようにキャラクターとスキルを関連させる事でストーリー性とシステム性を両面で把握しやすく構成しているモダンな作りだ。

 

システム

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間口の広いアクション

GoTは侍を題材としており、自分も敵も数回斬られればやられてしまうようなアクションゲームだ。
これだけを見るといわゆる「ソウルライク」のような「死にゲー」を想像するかも知れないが、実際には初心者でも十分に楽しめる簡単な部類のアクションゲームになっている。
敵に見つからないステルス要素もあるが、それに関しても敵の視界や索敵は基本的に緩いため難しいと感じる事は余り無いだろう。
他作品の例えで恐縮だが、本作のシステム面はRPG要素の無かった旧来のアサシンクリードを彷彿させるようなアクションとステルスとなっている印象だ。

戦闘では敵の攻撃に合わせてガードを行う事で発動するパリィによって攻撃を受け流す事と、ガード不可/パリィ不可の攻撃を回避する事が主体となっている。
パリィは敵の攻撃を引き付けてから行う事ができると、ジャストパリィのような形となり演出と効果がより大きくなる。
そのため、パリィはダメージを受けるリスクを負って、大きな反撃のチャンスを得ると言う駆け引きとなっているのだ。
とは言え、ジャストパリィこそ攻撃をしっかりと見極める必要はあるが、通常のパリィの受付時間は非常に長いためこれだけでも十分に戦闘を有利に進められる。
また、これらのガードやパリィは真後ろからの攻撃に対しても適用されるため囲まれたしまった場合でも問題なく処理する事が可能だ。
敵が発動するガード不可の攻撃に関してはガード(パリィ)ではなく回避する必要がある。
どの攻撃をパリィし、どの攻撃を回避するのかを理解しておく必要があるが、ガード不可の攻撃はサインが発生するため、見極めも決して難しいものではない。
そのため、戦闘に関しては攻撃、パリィ、回避と適切なボタン入力さえ行えていれば負けるという事はまずないのだ。
これは初心者でもプレイしやすいと言う間口を広げる一方で、ボタンを押すだけの単純なゲームプレイになる事も意味しているため、アクションゲームとしては凡庸な印象になってしまう事は否めないだろう。

敵の挙動は殺陣のような形式をベースとしており、「静と動」のメリハリをつけつつ、乱戦にならないように工夫されている。
まず「静と動」だが、敵はガンガン攻めてくるような事は無く、攻撃を行う場面、間合いを開けて様子を見る場面が交互に繰り返される。
アクションゲームではあるが、ある種のターン制RPGのような「攻撃するべき時」「防御(パリィや回避)を行うべき時」が明確になっているのだ。
そして乱戦にならないような工夫も行われている。
敵が複数人いた場合にはバラバラに攻撃してくることを出来るだけ避けるように制御されているように感じる。
敵の数が多すぎる場合には流石にグチャグチャとした乱戦になる事もあるが、2~4人程度の相手であれば時代劇の殺陣のような戦い方になるようになっている。
また、メリハリのある殺陣のような戦い方であるが故に、初心者のプレイしやすさにも寄与していると言えるだろう。

戦う事になる敵には剣、槍、盾持ちなどのバリエーションが存在する。
そして、それらのバリエーションに対抗する形でプレイヤーには「型」が用意されている。
型は敵の兵種に応じて特効効果があり、例えば槍兵に対しては槍に有効な型を選択して戦う事で有利に立ち回れるようになっているのだ。
この型は戦闘中にシームレスに変更可能で、敵に応じて即座に変更して対応できるようになっている。戦闘では1つの型を使い続けると言うよりも、敵にあった型を選択して戦うのが適切だ。
しかし、敵のバリエーション自体は少なく、中盤や後半になっても敵の体力多くなる程度であり、敵の種類が多いとは言えないのは少々残念だ。

カメラワークにしても様々に制御が行われているようだ。
戦闘中では全体を把握しやすいように状況に応じて俯瞰の度合いが変化し、ストーリー中ではシーンに応じてカメラが寄る事もあり工夫が感じられる。

戦闘で気になる点も書いておきたい。
戦闘では敵を自動ロックオンするような形になるのだが、GUIを最大限まで排除した本作では乱戦の際に誰をロックオンしているのかわかりにくい。
攻撃は基本的にロックオン対象に向かって行われるため、「あと一撃で倒せるのに」「鬱陶しい弓兵を片付けたいのに」といった状況でも倒したい相手を狙いにくいのだ。
この痒い所に手が届かないようなもどかしい操作感はややフラストレーションになるだろう。

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噂が広まる

RPG要素は多く無い本作ではあるが、仁の体力などのステータスが向上する要素のほか、攻撃や防御の性能を向上させるような要素が用意されている。
オープンワールドという広いフィールドを寄り道をする事によって強化要素を回収していくという構造としてはオーソドックスな作りだが、不慣れなプレイヤーであったとしてもある程度は有利に立ち回れるようになってくる。
”初心者でも十分に楽しめる難易度”と前述しているが、このような要素もそれを後押ししていると言えるだろう。

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ミニゲーム的な要素によるステータスアップ

フィールドの寄り道は敵を倒したり、敵の拠点を制圧したり、クエストをクリアするだけではなく、様々な場所にある温泉やミニゲームなども存在し、それらを達成する事で能力などが上がるようになっている。

ボタンを正しく入力して竹を全て斬るミニゲーム的なものがある。
やること自体は比較的単純だが、一定の時間内に指定されたボタンを入力する必要があるため中には少し難しいものもある。
ちょっとした気分展開にはなるのだが、一度クリアしてしまうと再挑戦が行えなくなってしまうため少々残念だ。

アスレチックのような神社参りもある。
鉤縄を使用した忍者を彷彿とさせるワイヤーアクションや前述のアサシンクリードライクなロッククライミングを駆使して、最終到達ポイントである神社を目指すと言うものになっている。
しかし、この神社参りはプレイヤーへの視線誘導が不親切な場所も多いのが気になる所だ。アスレチックのような構成のフィールドをスイスイと進める時には爽快感があるものの、次にどこに行って欲しいのかがわからなくなり周囲をグルグルと見回してようやく行き先がわかると言ったようなテンポが悪く感じてしまうケースも多い。
なお、神社参りに限らないがフィールドを様々に移動したり、地形を無理矢理に踏破しようとすると地形にハマってしまう事はこの手のゲームではありがちだが、地形に完全にハマり脱出不可能になってしまった場合でも瞬時にリスポーンされるなどの配慮がされており安心してプレイできるようにはなっている。

 

グラフィック

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彩度の高い印象派絵画のような映像

写実的ではなく、映画的な絵作りをしているのはGoTの特徴的なアートスタイルと言えるだろう。
全体的には彩度が非常に高く、印象画のような豊かな色彩で描写されている。
また、GUI/HUDがほとんど表示されない本作はそのままスクリーンショットを撮っても映えるのだが、フォトモードまで実装されているのは嬉しい限りだ。
フォトモードにしても機能が豊富で素晴らしい。

本作は津島が舞台ではあるが、日本全国の湿地から降雪地帯まで様々な土地や建物の特徴を取り入れている欲張りな構成も魅力的だ。

キャラクターの造形に関しても記述しておきたい。
各キャラクターはお世辞にも美男美女がいるとは言い難いのだが、プレイを進めていくうちにそんな彼らが非常にカッコよく見えてくる点も印象深い。
特に主人公である仁は最初こそ凡庸な顔立ちに見えるのだが、物語を進めていくうちに不思議と威厳や男前な雰囲気が感じられるようになってくるのだ。

その他にも若干のノイズがある白黒の映像でゲームプレイができる「黒澤モード」もユニークな試みだろう。

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服の色や刀の装具が変更可能

仁は服装が変えられるほか、服の色はプリセット方式で変更可能になっている。
服には浪人(牢人)の服装や武士らしい甲冑などが用意されている。
服装によってバフ効果が異なるため、見た目の好みと性能に折り合いをつけて装備する事になるだろう。

刀身は変更できないが、刀の装具は変更が可能だ。
高級感ある見た目もあれば、かなり派手なものも存在する。
刀の装具は変更を行っても性能に変化がないため、自分の好みの見た目のものを装備すると良い。
筆者は上図の「八幡之護」が最もお気に入りの装具だ。

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炎のエフェクトはやや張りぼて感がある

全体的には素晴らしい映像美だが、一部には気になる部分も存在する。
静止画ではわかりにくいかと思うが、炎のエフェクトがやや張りぼて感があるのは少々残念だ。
遠くから見る分には問題なく見えるのだが、炎上箇所を近距離でグリグリとカメラを動かして観るとその張りぼて感に気が付くかも知れない。
この作りによって負荷を下げているのかも知れないが、全体のディティールからやや浮いている印象だ。

 

サウンド

音楽も日本の侍映画の合戦を彷彿とさせるものが多く気分を盛り上げてくれる。
声優の演技も良い印象で、大自然の風や動物の鳴き声は蒙古襲来という殺伐とした時代設定の中に癒しを与えてくれている。

 

総評

Ghost of Tsushimaはストーリーの構成やゲームプレイ部分こそ凡庸ながら、基本に忠実であり大きく外す事の無い安心できる面白さを提供し、初心者向けの配慮も随所に取り入れられている。
そして、蒙古襲来という時代の武士を題材とした事によって、その凡庸さを感じさせない魔法をかける事に成功した作品だ。
しかし、プレイを重ねて武士というものに目新しさが無くなり、その魔法が解けてしまえば凡庸な印象もまた強くなってしまうだろう。

印象派絵画のように鮮やかな対馬は、どこを切り取っても美しい一枚になる。
フォトリアルとは一線を画した本作の絵作りには非凡さがある。

 

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【レビュー】ゼノブレイド

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未来を切り開く

筆者は当時(2010年頃)のJRPGに辟易していた。
2010年頃の「JRPG」という単語自体も「日本産RPG」というよりも「旧態依然のシステムを使い回し続けるRPG」という蔑称としてのニュアンスが日本でも海外でも強い印象で、かくいう筆者も日本メーカーが発売するRPGにウンザリしていたのだ。
進化が停滞しているようなJRPG、もしくは海外製RPGの質の悪い模倣品のようなJRPGばかりが市場に出ているように感じてしまっていたのだ。
そのため、筆者が小さい頃にプレイしていたようなRPG(ファイナルファンタジーゼノギアスクロノトリガーなど)の熱量を感じる事はもう無いのだと。
「自分自身がそう変わってしまった」のだと、そう思い込んでいたのだ。
しかし、そんなJRPGへの失望感の中で1つの作品が筆者の目を再び輝かせる事となる…。

今回のレビューはNintendo Switchにて発売されたゼノブレイド Definitive Edition(以下、ゼノブレイドDE)をメインのレビュー対象として記載していく。

 

Newニンテンドー3DS専用 ゼノブレイド - 3DS

Newニンテンドー3DS専用 ゼノブレイド - 3DS

  • 発売日:2015/04/02
  • メディア:Video Game
 
Xenoblade ゼノブレイド(特典なし) - Wii

Xenoblade ゼノブレイド(特典なし) - Wii

  • 発売日:2010/06/10
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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掴もうぜ未来

ゼノブレイドのストーリーは王道な少年マンガのような展開と次々と明かされていく謎によって引き込まれていく構造となっているのが特徴的だ。
遥か昔、二柱の強大な神、「巨神」と「機神」が互いの存亡をかけて争い、共に骸となった。
それから数万年の後、骸となった巨神の体の上(巨神界)には人間のような外見的特徴を持つホムスと言う種族を始めとした様々な動植物が活動するようになっていた。
しかし、骸となっている機神の体の上(機神界)に住む機神兵が巨神界に対して侵略を始める事となる。
強固な装甲を有した機神兵の前に人類ホムスは成すすべなく蹂躙されていくが、そんな装甲をもバターのように斬り裂く神剣モナドの存在がホムス達の希望の光となっている。
物語全体は少年マンガのような熱い展開が多く、またゼノシリーズ全般に多いSF要素や専門用語も比較的ライトに使用されているため、老若男女問わずに楽しみやすい上品で上質な作品に仕上がっている。
また、カットシーンのクオリティが非常に高い事もプレイヤーをストーリーに引き付ける要素だ。
キャラクターの表情や演技は細かく作り込まれ、喋っていないキャラクターもリアクションを行っており非常にリッチだ。
それ以外にもカメラワークや音楽の使い方などの演出も巧みでWii版であっても3Dアニメを観ているかのような気分になる。
そうなればモデリングなどが格段に向上したリマスター版の印象はもはや言うまでもないだろう。

本作のストーリーの導入はオーソドックスなマイナスになるというものが採用されているのだが、その描き方は非常に丁寧だ。
一般にマイナスから始まる(何かを失う)導入は多いのだが、導入であるが故に描写が少なく、プレイヤーにはその重大さが最大限に伝わらないケースも多い。つまり、「マイナスになっただけ」になってしまっている作品が多い事も事実なのだ。
しかし、本作では導入部分も非常に丁寧に描ききっているためマイナスになったとき(失ったとき)の喪失感がプレイヤーにも強く感じられるようになっているのは見事だ。
マイナスとなった時に、それを補填するための行動を取りたくなるのが心理であり、その心理をプレイヤーへの動機付けとするために物語の導入ではマイナスから始まる事が多いのだ。
それが実に見事に成立している本作の導入はプレイヤーを引き付けるだろう。

主人公は巨神界に住むホムスの青年シュルクだ。
シュルクはコロニー9という機神界からは非常に遠い立地の巨神のふくらはぎ部分にある街でエンジニアをしている。
物語を強力に引っ張っていくようなキャラクターという訳ではないのだが、その意志は強く目的を見失う事なく仲間達と足並みを揃えて進んでいく姿は好感が持てるハズだ。
本作の主人公は「嫌われない主人公」を目指して制作されたようだが、その試みは間違いなく成功していると言えるだろう。
筆者の印象としても本作が発売された2010年代頃までのゲームやマンガ、アニメなどでは主人公が不人気になる傾向がややあったように思うが、シュルクと言う存在には非常に好感を持って受け入れられた記憶がある。
また、このシュルクと言う主人公は物語に大きく関わるザンザやエギルといった主要なキャラクター達と対比するように構成されている点も興味深い作りになっている。 

本作はストーリーがゲームプレイを牽引するストーリードリブンな作品となっているのだが、そのストーリー自体も次に進めたくなるような展開や謎がふんだん用いられ興味をそそられる。
なぜモナドが効かない機神兵がいるのか、なぜ機神界の機械生命体は巨神界に侵攻するのか、なぜモナドによって未来が見えるのか、なぜモナドは片刃なのか、そもそもモナドとは何なのかなど、物語を進めていく事でその理由にどんどん興味が湧いていく事だろう。
ストーリー自体の面白さもさることながら、ストーリーに散りばめられた謎もゲームプレイに対して興味を引き付け続けるものになっている。
また、物語としてはライプニッツモナド論が引用されラプラスの悪魔的な発想へと繋がっているほか、プラトン思想やそれに影響受けたグノーシス主義思想、中心ではないがニーチェ的思想も散見される。
そういったメタ的な観点からも世界観を掘り下げる事ができるため、設定を調べるのが好きな人にっても面白いだろう。

地味なポイントではあるかも知れないが、ボイス付きの会話は全てオート送りで展開されるためコントローラーから手を離して物語展開に集中する事が出来る事も筆者としては嬉しい要素だ。

ゼノブレイドDE版ではイベントシアターという形でイベントのカットシーンをいつでも見返す事が可能になっている。非常に嬉しい追加要素だろう。
イベントの時間帯や見た目の装備などを自由に切り替えらえれるため利便性も良い。

本作のストーリー面であえて気になるポイントを挙げるとすればラスボスだろうか。
本作のラスボスは敵としては少々都合の良い側面があり、戦う相手として葛藤のようなものが少ないままに描かれているのは勿体ない。
特にそれまでの敵の多くが敵ながら大義や同情の余地があるだけになおさらだ。

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キャラクター間の関係性を補完するキズナトーク

本編ストーリー以外にもキャラクターの関係性を補完する役割を担った「キズナトーク」も良い要素だ。
このキズナトークはテキストのみであり、ボイスは無いのだが、内容には選択肢が用意されており、選択によって会話の内容が変化する。
一応、選択には正解と不正解があるのだが、どちらも面白い会話が繰り広げられるようになっており、不正解を選んだからと言って損をした気分にはならない。

なおゼノブレイドDE版では、このキズナトークに関してもイベントシアターとして後からいつでも見返す事が可能なのは嬉しいポイントだ。

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穏やかじゃないですね

メインストーリー自体も非常に魅力的だが、街中のNPC達の作り込みと怖ろしいまでの物量は目を見張るものがある。

他作品の例えで恐縮だが、本作のNPC達は「ゼルダの伝説 ムジュラの仮面」のように時間に応じて動くように設計されており、世界に厚みを持たせる事に成功している。
昼間は商業施設で働き、夕方ごろには家路に向かうなどの行動がNPC1人1人に設定されているため、各NPCキャラクターの生活感を感じさせてくれるのだ。

そしてNPCキャラクター達にはそれぞれNPC同士での関係性も設定されている。
「○○と××は親友」といった関係性が設定されているのだ。
その関係性を確認できるのが上図の右のキズナグラムだ。
キズナグラムではNPC同士の関係性も閲覧する事が可能になっているが、戦闘やキズナトークで変化するパーティーキャラクター同士の親密度を確認する事もできる。

NPCキャラクター達からはサブクエストを受注する事が可能だ。
サブクエストも暴力的なまでの数が用意されており、中にはNPC同士の関係性などを変化させるものや、プレイヤーの選択によって結末が変化するもの、特定の仲間キャラクターでしか受注できないものも用意されている。
しかし、全体的にはサブクエストはやや淡泊なものも多く、サブクエストのクリア条件にしても色々な場所をたらい回しにさせられたり、敵から確率でドロップするアイテムを集めさせられたりと億劫になるものも多い。
本作のサブクエストは物量に重点を置いている節があり、快適さや面白さはやや薄いと言わざるを得ない。
なお、Nintendo Switchにて発売されたゼノブレイドDE版ではサブクエストのクリア条件となるマーカーがマップ上に表示されるようになったため、ある程度は良心的でモダンなものに改良されている。

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ゼノギアスを彷彿とさせる設定が多い

ゼノブレイドのストーリーが興味深い点は他にもある。
ただし、ここでは若干のネタバレを含む記載があるため、気になる方は注意されたい。

本作のストーリーは少年マンガのような熱い展開や先が知りたくなる謎によって強力に牽引しているが、その内容はゼノギアスを編纂したようなものとなっている点は興味深い。
まず「モナド」という「願望機(意志を具現化する力)」の存在自体もゼノギアスにおいて近しい概念が登場している事はわかりやすいポイントだ。
また、巨神界の生命達とテレシアの役割はゼノギアスにおけるソイレントシステムと酷似していたり、またテレシアへと至る役割を克服するものが存在している点も類似している。
ホムスなどの生命が生まれでた経緯も類似している部分があると言えるだろう。
シュルクの中に複数の人格が存在していることも類似点として挙げても良いかも知れない。
本作はある意味でゼノギアスのリブートともいえる内容になっているのだ。

 

キャラクター

主人公シュルクも魅力的だが、主人公以外のパーティーキャラクターも非常に魅力的だ。どのキャラクターも甲乙つけがたい素晴らしい魅力を持って描かれており、キャラクターの全員が好きなるような作品になっている。
その中でも筆者が特にお気に入りのキャラクターも一部だけ紹介させて欲しい。

 

ダンバン

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ダンバン

ダンバンさんは「英雄のための英雄」という言葉がピッタリと当てはまるような人物だ。
ダンバンさんはホムスを機神兵の侵攻から救った伝説的な武人であり、またシュルク達パーティーメンバーの精神的な主柱でもあるが、機略に富むような知性的な部分もあり、とにかく非常にカッコいい存在だ。
ゼノブレイドをプレイした者であれば、彼の背中に心酔したプレイヤーは絶対に多いハズである。

ダンバンさんの声をあてた堀川りょうさんは最初こそドラゴンボールベジータの印象が強いのだが、物語を進めていくうちにその演技の巧みさにどんどんと引き込まれていく。物語が中盤にもなる頃には完全に堀川さん=ダンバンさんと感じているハズだ。
なお、堀川さんは本作の音響監督を務めている。

 

メリア

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メリア

メリアはもう一人の主人公であると言えるほどに最も過酷な運命にある人物であり、最も強く成長する事になるキャラクターだ。
ネタバレを避けるためここでは多くを語れないが、彼女に待ち受けている運命を目にした時、プレイヤーは必ずやメリアを応援したいという気持ちに至っているのではないだろうか。

なお、メリアの声優を務めた勝田詩織さんは本作がデビューであると言うが、非常に良い演技をしている。

ちなみにグッドスマイルカンパニーからフィギュアが発売されている。
(筆者は当然ながら購入済みだ)

 

リキ

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リキ

本作におけるマスコット的なキャラクターであるが、40歳で子供もたくさんいるという凄いギャップを持ったキャラクターだ。
性格もノポン特有の"あざとさ"と"純粋さ"、そしてマイペースな所があるのだが、これがなかなか憎めない。

基本的にはマスコット的なキャラクターとしてパーティーメンバーのムードを良い方向に持っていく立ち位置なのだが、実際にはその役割を狙ってやっている所があり、パーティーのメンター的な存在であるというギャップが素晴らしい。
見た目こそ可愛らしいが、そこはやはり子供をたくさん育て上げた父親なのだ。

 

システム

ここからはゼノブレイドのシステムに関して記載する。
「バトル」に関しては専用の章を設けて記載したいと思うが、それ以外の要素に関してはここでザックリと説明したい。

まず、本作のマップに関して少しだけ記載する。
ゼノブレイドでのマップはある程度の階層毎に区切られているため、それなりには機能性があるのだが、入り組んだ地形も多く痒い所に手が届かないケースが無いとは言えない。
マップは最初は全体が解禁されておらず、全てのランドマークを発見すると全体が全て表示されるしようとなっており、探索してマップを埋める楽しみがあるのは良い点だ。
サブクエストをこなす事でも多くの場所に行く事になるため、フィールドを寄り道するため導線も作られている。

フィールド上には強力なユニークモンスターが闊歩しており、時にはラスボスよりも強い存在もおり、それらを工夫して倒す楽しみもある。
しかし、倒したユニークモンスターはリポップするため、後々誰を倒したのかなどがわからないため、コンプリートがやりにくいのは少々気になる所だ。

ゼノブレイドDE版では全体的に遊びやすさが向上しており、そこも少しだけ記載したい。

個人的に最も嬉しい追加要素はアイテム全般の所持上限が上昇した点だ。
筆者は収集癖のあるタイプなのだが、原作版では序盤でもアイテム欄が埋まってしまい泣く泣くアイテム売却していた記憶がある。しかし、DE版では売却しなくても問題ないくらいには増えた事はありがたい。

難易度選択をいつでも選択できる「カジュアルモード」がある点も良い調整だ。
カジュアルモードをONにすると、敵の能力値が全体的に下がるほか、レベル差による命中率の低下も大幅に抑えられている印象だ。
また、後述するパーティーゲージの増加量も増えるため、仲間の復活も容易になり、チェインアタックを連発できるようにもなる。
バトルが難しい、どうしても勝てない敵がいる等の場合に使うと良いだろう。

キャラクターのレベル調整機能が用意されている点も嬉しいポイントだ。
自分のさじ加減でレベルを任意に下げたりできるため、ギリギリのバトルが楽しみたい時に非常に重宝する。
ゼノブレイドシリーズ全般がそうなのだが、バトルが楽しすぎるために、うっかりレベルを上げ過ぎてしまい、メインストーリーのバトルに緊張感が無くなってしまう事も多かった。
それがレベルを上げ過ぎても、適宜下げる事もできるため、丁度良いバランスの戦闘も楽しめるようになったのはありがたい要素だ。

ノポンダイセンニンによるタイムアタックバトルも追加されている。
タイムアタックバトルは現状の戦力で挑むものもあるが、固定の戦力で挑戦する詰将棋的なものも用意されている。
このタイムアタックバトルでは勝利する事でポイントを獲得でき、そのポイントで装備品などを交換できる。

ゼノブレイドDE版ではその他にも大小様々な遊びやすくなった要素が用意されている。
そのため、もしも今からゼノブレイドを遊ぶと言う方には、間違いなくゼノブレイドDE版をオススメしたい。

 

バトル

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綱渡りのような緊張感あるバトル

ゼノブレイドにおける綱渡りのような緊張感のあるバトルも本作の大きな魅力の1つだ。
後作であるゼノブレイドクロスゼノブレイド2が登場した現在では少々地味な戦闘になっている事は否めない。
しかし、それでも本作固有の楽しさがある点もまた事実である。
ゼノブレイドのバトルは、フィールド移動とバトルがシームレスに行われる。2010年当時のJRPGとしてはまだ珍しい部類の時代であった。
また、当時のJRPGに多かった「レベルを上げて(装備を整えて)殴る」という単純な構図からも脱却したシステムを採用しており、より奥深いバトルを実現させる事に成功している。

バトルにおいてはダメージを稼ぐ攻撃役(アタッカー)や被ダメージを引き受ける盾役(タンク)などの「ロール」の考え方が大切になっている。
また、キャラクター毎の個性や操作感が全く異なるため、自分が仲間キャラクターの誰を操作するのかによっても異なる楽しみ方が可能になっている。
とは言え、全体的なバランスを鑑みるに回復を担当するヒーラーはやや不遇だ。
ストーリークリアだけを目指すのであればヒーラーを戦闘メンバーに含めても良いかも知れないが、寄り道をして強力なユニークモンスターを倒そうと思った場合には本作のヒーラーの回復能力では焼け石に水になるケースも多く、逆にパーティー全体の火力が落ちるために強力な攻撃を多く喰らってしまうという本末転倒な事にもなりやすい。
本作のバトルバランスにおいては「ダメージコントロールを行う」というよりも「やられる前にやる」のが基本なのだ。
そのため、パーティー構成では攻撃役を充実させるか、盾役を充実させた方が安定する印象である。

バトル中では「オートアタック」と「アーツ」の関係性が大切だ。
「オートアタック」はキャラクターが敵に近付いた時に自動で行ってくれる攻撃だ。
ダメージソースとしても十分に機能しているほか、オートアタックを行う事でキャラクターのロールを際立たせる必殺技のような「タレントアーツ」の発動ゲージを溜める事ができる。
タレントアーツは戦況を好転させるためのものが多く、戦闘において非常に重要となる。
例えば、シュルクのタレントアーツであるモナドアーツであれば敵の強力な攻撃を防ぐために使用されるし、ダンバンさんのタレントアーツであれば敵に大ダメージを与えられるのだ。
対して「アーツ」はキャラクター毎に設定されているスキルのようなもので、特定条件において大ダメージを与えるものやバフ/デバフを与えるもの、回復を行うものなどが存在する。
アーツはバトルの主軸とも言えるものだが、アーツを使用するだけでは基本的にはタレントアーツが溜まらないため、「敵が強力な攻撃をしてくる!!」と言ったような緊急の事態に対処ができない。
本作では「オートアタックによってタレントアーツを発動できる準備をするか」「アーツによって畳み掛けるか」の駆け引きが根底には存在しているように思える。
つまり、オートアタックとアーツが競合した機能である事を活かしたデザインが成されているのだ。
そのため、キャラクターのステータスやプレイヤーのプレイスキルが向上していったとしても各要素が腐ってしまう事なく価値を持ち続けられるように構成されている。
バトルシステムの全体像をしっかりと把握した見事な設計であると言えるだろう。

ゼノブレイドのバトルでもう1つ忘れてはいけない要素がある。
それが「崩し⇒転倒⇒気絶」のコンボだ。
アーツには敵を「崩し」や「転倒」といった状態に陥れるものが存在している。
「崩し」はこのコンボの起点となるような状態だ。
崩し状態となった敵に対して、「転倒」のアーツを使用すれば敵を転倒状態にさせる事ができる。転倒状態となった敵に対しては攻撃が必ず命中するようになるほか、敵は攻撃を発動させる事ができなくなるため一方的に殴り掛かる事ができる。
このコンボは非常に重要であるため、本作のバトルにおいては必ず覚えておくべきであり、積極的に使用するべき要素だ。

この辺りの面でプレイするにあたって注意点があるとすれば、「独りよがりのプレイとならないこと」だろう。
操作キャラクター以外は全てオートで状況に合わせたアーツ選択を行い戦ってくれる賢く頼りになる存在である。
しかし、操作キャラクターである自分を中心に行動するだけでは、選んだキャラクターによってはチーム全体が上手く立ち回れないケースも少なくない。
そのため、「仲間を自分に合わせさせる」ような自分勝手とも言えるようなプレイスタイルではなく、本当に仲間と協力し合って戦っているという意識のもと行動するのが望ましい。この辺りは有人の対戦や協力プレイのゲームとも近しいものだと言っても差し支えないだろう。
周囲に気を配る事で「あのキャラは大技を出したから、しばらくは大技を出せないだろうな」と言ったような戦闘中のマネージメント自体が上達していき、仲間と一緒に戦っている共闘感と戦場をコントロールしている快感に目覚めていくハズだ。

ゼノブレイドDE版ではバトルに関しても遊びやすさが増している。
アーツの特効効果の条件を満たしているときに「!」アイコンからわかるようになった。上図を見ても「!」のアイコンが表示されているアーツが確認できるだろう。
ゼノブレイドにおいては「背面特効」や「側面特効」などの敵と自分の位置関係を意識させるような特効効果も用意されているのだが、原作においては特効条件を満たしているのかGUI上からは判断できなかったため、敵によっては側面から攻撃しているつもりでも実際には効果が発動せず「アレ?」と思う事が度々あった。
それが条件を満たしているかが明確にわかるようになったのはありがたい限りだ。

 

未来視

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未来の危機を察知する"未来視"

本作のバトルシステムでユニークなポイントの筆頭なのはモナドの「未来視」だろう。
未来視とはストーリー上でシュルクが観る事になる先の未来が視える現象だが、この設定はストーリーだけで登場するようなものではなく、バトルでも発生するのはストーリーとゲームプレイをシンクロさせる素晴らしいシステムだ。
戦闘ではこの未来視により敵の強力な攻撃が事前にわかるため、それに備えて対策を行うのが非常にユニークであり、バトルを盛り上げてくれる。
敵の強力な攻撃の発動までにモナド、あるいは仲間キャラクターへの指示を行う事でそれを回避し、その場の戦局をしのぐ事が大切となる。
戦局をしのげた時の達成感や戦場をコントロールしている感覚は最高だ。

なお、この未来視はサブクエストでも活躍する。
エストに必要なアイテムを取得したり、プレイヤーの選択によって結果が変化するようなクエストの場合に発動する。

 

チェインアタック

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極端なバランスのチェインアタック

ゼノブレイドのバトルにおいて唯一と言って良い物議を醸すポイントになっているのは「チェインアタック」だ。

チェインアタックは画面に左上にあるパーティーゲージを最大まで溜め、それを全て消費する事によって発動できる最大級の大技のようなものだ。
パーティーゲージはHPが0になった仲間の復帰にも使用する事になるため、チェインアタックを発動した直後は非常にピンチとなる。
このリスクとリターンがチェインアタックの根幹だ。

しかし、このチェインアタックにはシステム上の欠点となってしまっている仕様が存在する。
それは「チェインリンク」だ。
チェックアタックでは敵の時間が止まったような状態となり、パーティーメンバー3人が順番に好きなアーツを叩き込めるというシステムになっている。
そして、チェインリンクとはパーティーメンバー3人が攻撃を出した後に、更に追加で仲間が再度攻撃を繰り出せるといったものになっている。
このチェインリンクが最も問題である理由は、その発動条件が「完全な運」であるためだ。
本作にはパーティーキャラクター同士の親密度が設定されており、その親密度が高ければチェインリンクの発動確率は上昇するようなのだが、それは「戦闘とは全く関係の無いパラメーターに依存している」という事に他ならない。
つまり、「戦闘中にはチェインリンク発動確率をほぼ全く制御する事ができない」のだ。
発動が完全に運に依存しているため、チェインアタックをダメージソースとして計算する事は困難であると言わざるを得ない。
チェインリンクの発動条件がプレイヤーの制御化にないのは残念な仕様だ。

また、チェインアタックの有用性に大きな差がある点も勿体ない。
チェインアタックによる「崩し⇒転倒」を繰り返し狙う、いわゆる「転倒ハメ」が通用する敵は容易く蹂躙されてしまうのだ。
そのため、チェインリンクが「運ゲー」である事も相俟って、この「転倒ハメ」を行う以外の選択はリスキーとなってしまっているケースが大半なのだ。
この転倒ハメのような状況を避けるために、被ダメージ時にダメージまたはデバフを返す「スパイク」というシステムが登場するが、全体的な難易度がこのスパイクに依存し過ぎている感も否めない。
結局は「転倒ハメが成立する」ならば蹂躙が出来てしまい、転倒しないorスパイク持ちの敵に対しては専用に装備を整えない限りは苦戦しがちという構図になってしまうのだ。

そのような苦戦する相手であってもチェインリンクが運良く発動すると、とてつもないダメージを叩き出す事が可能になっており、レベル差をひっくり返せるだけの可能性は秘めているのだが、それはそれで問題がある。
何故なら、転倒ハメができない / 行いにくい強敵に対して、状況によってはチェインリンクが発動する事を天に祈るだけの戦闘になりかねないからだ。
チェインリンク発動ガチャに見事に成功するとサックリ勝ててしまうのは、どうにも腑に落ちない感覚だ。

全体的なバトルのシステムやバランスは繊細かつ巧みであるにも関わらず、チェインアタックだけが歪な仕組みとなってしまっているのは勿体ないと言わざるを得ない。

 

チャレンジバトル

一番おいしい部分がすっぽりと抜けたチャレンジバトル

チャレンジバトルはリマスターされたゼノブレイドDE版にて追加された新規要素だ。
ゼノブレイド2においても類似のアクティビティが導入されており、本作はそれに追従したような形となっている。

本作のチャレンジバトルはレベル制限・パーティー制限のないフリーバトルと固定のレベル・パーティーで挑むリミテッドの2種類が用意されている。

しかし、本作のチャレンジバトルは絶妙にやりがいの欠ける作りとなってしまっているのは勿体ない。
例えば、パーティーメンバーのレベルが80くらいある状態でフリーバトルのレベル20に挑戦すれば赤子の手をひねるが如しであり、逆にリミテッドに挑戦すればメンバー固定であるため詰将棋のような形となってしまいプレイヤーがビルドに関して試行錯誤を行う余地がない。
戦闘に緊張感を保てる適切なレベルで、ビルドを色々と試しながら攻略を目指す状態がゼノブレイドシリーズの戦闘の醍醐味であるハズなのだが、その最も旨味がある部分だけが綺麗に取り除かれているのだ。

別シリーズとの比較で恐縮だが、ゼノブレイド2においては選択したバトルにマッチしたレベルキャップにプレイヤー側のレベルが丸め込まれる形で、なおかつパーティーメンバーのビルドは自由であった。
適度な難易度を維持しつつ、プレイヤーの試行錯誤の余地もしっかりと設けているこのデザインが最適解であるハズである。
何かしらの技術的理由はあるのかも知れないが、それを採用しなかったのが悔やまれる部分だ。

 

つながる未来

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護る未来。つながる未来。

「つながる未来」 はゼノブレイドDEにおいて追加されたゼノブレイド本編のエピローグに相当する物語だ。
プレイ時間としては全て網羅してクリアしても10時間ほどの比較的プレイしやすいボリュームとなっている。

 

ストーリー

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本編のエピローグにあたるストーリー

「つながる未来」のストーリーは本編から1年後の世界が舞台となっているエピローグに相当するものとなっている。

本編の後に所在がわからなくなっていた皇都アカモートを探して巨神肩のあった地域を目指して行く事になる。
巨神肩の近くに皇都を発見したシュルクとメリアであるが、皇都には「霧乃王」という謎の存在が巣くっており、辛うじて逃げ延びたハイエンターが皇都を奪還しようとするも全く歯が立たない状況が続いていた。

「つながる未来」では本編の出来事によって大きく成長したメリアの存在によって、ハイエンター達が未来に向けた次の一歩を見出すようなストーリーとなっているのが特徴的だ。
本編の主人公であるシュルクはもちろん登場するが、「つながる未来」での主人公はあくまでもメリアとなっている。
また、新たなキャラクターとしてネネとキノという幼いノポン族の2人が同行する事となる。
ネネとキノは仲間キャラクターとして登場するノポン族の中ではゼノブレイドシリーズ中でも最も幼い部類に入り、リキやトラ(ゼノブレイド2)などのノポン族と比較しても"あざとさ"よりも"純粋さ"が際立っている。
この幼く可愛らしいノポン達の影響もあり本編の雰囲気とは少し変わり、コミカルであったり微笑ましい内容のストーリーが多くなっている。

そもそも、この「巨神肩」というフィールドは本編にて映像としてのみ登場する場所であり、フィールドとしては制作の都合により没となった経緯がある。
この巨神肩は原作であるWii版のデータ解析にて存在が確認されており、その時点のデータと比較するとゼノブレイドDEの巨神肩はフィールド構造こそ大半がそのままとなっているものの、巨人族文化のものと思われる建造物がゼノブレイドDE版においてはそれなりに崩壊していると言う違いが見られる点は興味深い。
これは物語本編の出来事によって崩壊したという事なのかも知れない。
ゼノブレイドファンには幻のフィールドを探索できる事は嬉しい要素だが、巨神肩から拝むことが出来たであろう巨神の横顔が見れなくなっている事は少々残念だ。
巨神肩とは言うものの、巨神の姿は無くなってしまっているため本編の「巨神脚」や「落ちた腕」のような対比的に感じる壮大なスケール感が薄れてしまっている。

この「つながる未来」のストーリーに不満点があるとすれば全てが解明されない消化不良感がある事だろう。
皇都付近に現れている空間の亀裂は別次元の存在を想起させる。
また、霧乃王と言われる存在は、全体的にボヤケているため輪郭がハッキリとしないが、後作ゼノブレイド2に登場する"とある敵"に非常に近い雰囲気をしている。
しかし、ストーリーを最後までクリアしても「空間に出来た亀裂は何だったのか」「霧乃王とは何だったのか」という部分が明確に解明される事が無いのは少しばかり心残りになる所だろう。

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メリアが「メリアであること」の嬉しさ

ゼノブレイドファンの中には、この「つながる未来」は演者の演技に違和感がないか心配される方もいるだろう。
なにせ、本編のリリースから10年が経過しており、演者の収録ともなればそれよりも更に経過している事も考えられるからだ(シュルクは「スマブラ」や「ゼノブレイド2」にも登場しており、10年のブランクでは無いが)。
10年も経過していれば演技の仕方や声の出し方に変化があるのは当たり前で、そのうえメリアを演じた勝田詩織さんは本作がデビュー作品であった。
そうなれば、その変化も大きなものであるだろうし、「新人だからできた」という部分もあったであろうと想像する。
しかし、筆者がプレイした限りでは演技の違和感は全くなかった。
メリアは10年を経てもしっかりとメリアであったのは筆者が最も嬉しかったポイントの1つだ。

気になった点があるとすれば、録音環境などの違いなのか本編と比べると音質自体に違いがあるように感じた所だろう。

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ボリューム満点のナカマトーク

つながる未来ではキズナトークのような立ち位置の「ナカマトーク」が用意されている。
このナカマトークキズナトークのような選択肢は存在しないが、全てフルボイスとなっており、1つ1つの会話のボリュームはかなり濃密だ。
つながる未来のストーリー同様にナカマトークに関しても和んでしまうような微笑ましい内容が多くなっている。

このナカマトークもイベントシアターからいつでも見返す事が可能だ。

 

システム

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メジャー!トレジャー!!ノポンジャー!!!

本編では「やられる前にやる」というのが主体であったが、「つながる未来」の戦闘システムでは大ダメージを与える手段が少ないため、よりダメージコントロールが大切になっている。
とは言え、基本的な戦闘の考え方は本編と同様だ。

パーティーキャラクターはシュルクとメリアのみが本編から引き続きストーリーで活躍する形となるが、ラインのようなタンク系の技を扱うノポン「ネネ」とカルナのようなヒーラー系の技を扱う「キノ」がいる。

チェインアタックに相当する「連携必殺技」はノポン族の測量部隊ノポンジャーが行う大技だ。
サブクエストによってノポンジャーの隊員を集める事によって効果が増幅するシステムとなっている。
この連携必殺技においてはエクストラチャンスというものが発生するとパーティーゲージの消費無しに連携必殺技を立て続けに使用できるのだが、本編と同様に発生するかは完全に運となるためエクストラチャンスを戦力として組み込むのが難しい点は本編のチェックアタックと同様に残念だ。
しかし、エクストラチャンスの発生確率は戦闘の状態(ノポンジャー達の士気)によって変化するため、本編と比較すれば戦闘に影響あるパラメーターに依存したシステムへと変化しており改善はされている。
また、連携必殺技の発動時にはQTEライクなボタン入力が発生し、その入力の成功具合に応じて効果も上昇するのだが、画面のエフェクトの影響によりボタンの入力タイミングがややわかりにくくなっているは少々勿体ない。

 

グラフィック

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神秘的で壮大なフィールド設計

ゼノブレイドの壮大で神が宿ったようなフィールドは息をのむほどの美しさだ。
本作が登場したのはオープンワールドのような広大なフィールドを制作するメーカーも少ない時代であり、そもそもWiiというハードでは考えられない程の広大で雄大な準オープンワールドとも言えるフィールドをシームレスに実現させた点は驚異的だ。
また、フィールドの構造にしても谷や洞窟などの閉所から一気に広大なフィールドを見せるなどの魅せ方の工夫も随所に感じられる。

ゼノブレイドDEではテクスチャーが一新され更に美しさが増している。
テクスチャーは非常に綺麗なっているが、フィールドの3Dモデル自体は変化していないのか、凹凸の激しい岩肌のように見えて3Dモデル自体は平面的になっていたりもする。
そのため、簡素な3Dモデルであってもテクスチャー次第でリッチに見えるという事がハッキリとわかるだろう。

本作は設定によりGUI/HUDの表示がオン/オフできるためスクリーンショットを撮る際にはありがたい仕様だ。
しかし、更なる欲を言えば近年は導入する作品も多いフォトモードのような機能があって欲しい所だ。

また、ファストトラベルの速さも驚異的だ。
別フィールドへの切り替えも数秒でありストレスフリーで非常に高水準だ。

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左:Wii版、右:Nintendo Switch

原作ゼノブレイドではスタイライズドとフォトリアルの中間的なスタイルとなっている印象でフェイシャルモーションはテクスチャーベースとなっているが、リマスター版であるゼノブレイドDEでは完全にスタイライズドなアニメ調なモデリングとなっている。
筆者としては(思い出補正も否めないが)原作版のモデリングも味わい深く好みであったため、Nintendo Switch版でモデルの方向性が変わった事は心境としては複雑な面もある。

カットシーンおけるキャラクターのアニメーションは非常に良く出来ており見応えがある。
当時としては日本産タイトルのカットシーンがリアルタイムレンダリングによる方式を採用しているケースはまだ多くない時代でもあり、装備の見た目がカットシーンに反映されるというのも印象的であった。

バトルにおけるアニメーションも悪くないが、ヒットストップがあればプレイフィールとしてより爽快だっただろう。
また、キャラクターの激しい動きなどにはブラーをつけて躍動感を向上させている点も工夫が感じられる。

また、キャラクターの服装は装備で変わる仕様となっている。
発売当時の2010年頃にはまだスタンダードになりつつある段階の仕様であり、特に日本産のタイトルの中ではまだ珍しかった印象だ。
これ自体は嬉しい要素ではあったのだが、いかんせん良いデザインと呼べるものは少なく、初期装備の見た目が一番良かったりするのは少々残念に感じる。

しかし、ゼノブレイドDE版では「ファッション装備」が新たに追加され、「この見た目が好き」という場合にも装備自体は変えつつも、見た目は好きなものにしたままに出来るようになった点は嬉しい修正ポイントになっている。
ただし、DE版では防具やジェムと言った装備品を外す操作がワンボタンで行えないのは少々不便に感じる所だ。

なお、New 3DS版ではamiiboを連動させる事でキャラクターモデルを鑑賞できるモードが存在する。

 

サウンド

ゼノブレイドの音楽は史上に残るべき素晴らしい楽曲である事も見逃してはならないポイントだ。
ゼノブレイドDE版では厚みを感じさせるオーケストラサウンドになっているが、主旋律が際立っているオリジナル版のサウンドも良く、甲乙つけがたい。
なお、ゼノブレイドDE版は新録版とオリジナル版の選択が可能になっている。聴き比べを比較的簡単に行う事も可能になっているのはファンとしては嬉しい。
また、ゼノブレイドDEにて追加されたシナリオ「つながる未来」では完全新規の楽曲も複数収録されており、本編の曲調とはまた異なった爽やかなBGMも必聴だ。
New 3DS版ではamiiboを連動させる事で劇中の楽曲を鑑賞できるモードが存在する。
筆者のお気に入りの楽曲の一部を紹介したい。

美しいピアノの旋律が印象的な「メインテーマ」

ゼノブレイドのストーリーを象徴する「敵との対峙」

ゼノブレイドのフィールド曲を象徴する「ガウル平原

神秘性のある「燐光の地ザトール / 夜」

暖かく優しい「マクナ原生林」「サイハテ村」

涼やかで壮大でありながらどこか物悲しさのある「エルト海」

負けられない緊迫感を感じさせる「行く手を阻む者」

涙を誘うオルゴールサウンド「リキの優しさ」

とても通常戦闘とは思えない激しさを持つ「機の律動」

ゼノブレイドのバトルを象徴するユニーク戦BGM「名を冠する者たち

アレンジが異なるが、どれも切なさを感じさせる「思い出」「回想」「回想 / オルゴール」

その他、声優の演技も非常に良い。
本作の演技は抑揚を抑えた2010年代以降にトレンドとなっている「自然さ」「ナチュラルさ」「リアルさ」を重視したものとなっている。
全体的には旧来のアニメ的な演技と言うよりも、洋画の吹き替えのようなリアルさを重視しているのだ。
また、リップシンクも比較的しっかりとしており、ストーリーへの没入を妨げない。

 

総評

ゼノブレイドとはJRPGの旧き神を斬り、未来を切り開いた傑作だ。

少年マンガのようなストーリーは理解しやすさを維持しつつも、先が知りたくなる多くの謎がプレイヤーを牽引し、老若男女にオススメできる内容になっている。
戦闘は足を引っ張る部分もあるにはあるが、それでも全体的には緻密なバランスで成り立っており高い完成度と言えるだろう。
史上に残るような印象的な音楽と壮大なフィールドは必ず体験して欲しいと言える内容だ。
荒々しいまでの物量は当時の年代には強く求められていた傾向がある要素だが、ゼノブレイドDE版では親切さも取り入れられモダンな形に近付いている。

ゼノブレイドDEにて追加された「つながる未来」にしても、蛇足となることなく添えられているのはファンとしては安堵し、そして嬉しいポイントだ。

本作には細かな気になる部分も多くあるが、それすらも愛しく感じられるような作品に仕上がっている。

 

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【レビュー】ファイアーエムブレム 封印の剣

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人の可能性を信じる

ファイアーエムブレム 封印の剣(以降、FE封印の剣)は筆者が初めて知ったファイアーエムブレム(以降、FE)シリーズタイトルだ。
理由は単純で大乱闘スマッシュブラザーズDXにて登場したロイがきっかけでファイアーエムブレムという作品に興味を持ったのだ。恐らく当時はそのような人も多かったのではないかと思う。

今回はゲームボーイアドバンス(以降、GBA)というハードで発売されたFE三部作の最初の一作となったFE封印の剣をレビューしていきたい。

なお、今回はWiiUバーチャルコンソール版でプレイした際のスクリーンショットとなる。GBA版との違いは無いとは思っているが、念のため留意されたい。

 

 

ストーリー

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ロイを中心として展開していくストーリー

FE封印の剣のストーリーは人と竜が存亡をかけて争った「人竜戦役」から約1000年が経過したエレブ大陸を舞台とする。
平和な日々が続いていたが、突如として「ベルン王国」がエレブ統一のために侵略戦争を行い始める。
主人公であるロイは領主達の同盟で成り立っている「リキア同盟」に参加するフェレ候エリウッドの嫡男で、病床のエリウッドの代行としてベルン王国に対抗していく。
なぜベルン王国が侵略を始めたのかなど含め、各国の情勢が進行とともに徐々に語られ、理解できるようになっている。

FEシリーズでは「幼馴染ヒロイン」や「赤緑騎士」「キルソード持ち剣士」「ペガサス三姉妹」などシリーズの”お約束”とも言える人物構成になる事は度々あるが、本作ではそのような伝統的な設定が特に色濃く意識されている。
そのためFE封印の剣はFEシリーズの「紋章の謎」のリブートにも近い作品になっているのは特徴的と言えるだろう。

主人公であるロイはFEシリーズの中でも特に若い設定になっている点も特徴だ。
これは比較的若年層が多いGBAと言うハードでリリースされたことが大きな要因では無いだろうか。
そんなロイだが、前漢の劉邦のような人物像で描かれる事が多いFEシリーズの主人公達の中にあって、物語では若さを感じさせない後漢の劉秀のような聡明なリーダーとして描かれているのは本作が持つ魅力の1つになっている。
ロイ以外が死んでも物語が進行すると言う本作のシステム上の都合が関係してか、他シリーズであれば軍師ポジションのキャラクターが助言をしたりする場面であっても、そういった役割を全てロイが担っている。
決断を行うリーダーでありながら、聡明な軍師のような役割もこなし、常に正道を突き進むロイの姿は先頭に立つ者として理想的な存在として映るだろう。

その他の関連する部分も紹介したい。
シリーズではお馴染みの要素だが、フィールドマップには民家などのエリアが設定されている。民家を訪ねる事でアイテムが入手できることがあるほか、世界観や世界情勢の設定を聴くことが出来るため、本編だけではわからない部分を補完する役割も担っている。攻略という側面以外にも、より深く世界観を知りたいという場合には積極的に訪問すると良いだろう。

セーブデータを開始すると章の冒頭から開始されるため、今がどういう状況なのかを復習しやすくなっている。
前回のプレイから時間が空いてしまった…なんて時にも、少なくとも現在の情勢は把握できる事だろう。
もちろん。これらの説明や会話はワンボタンでスキップが行えるため、煩わしくなる事もない。

また、本作のユニークな試みとしてメディアミックスのような展開が成されていた点もここで挙げておきたい。
本作は「FE覇者の剣」というFE封印の剣の外伝的作品がマンガとしてリリースされており、ゲームとマンガとでコラボレーションがされているのだ。
マンガである覇者の剣でもロイ達が登場し、FE封印の剣においては覇者の剣の登場人物であるアルやガント、ティーナの名を冠した武器が手に入る。
メディアミックス自体が徐々に増えていた時代であり、FEシリーズとしても珍しい試みでもあり、非常にユニークなポイントだ。

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最終盤でのロイとゼフィールのやり取りは必見だ

本作において最も見応えのある会話がなされるのは最終盤においてのベルン王国の国王ゼフィールとロイのやり取りだろう。
このやり取りは本作で最も観るべきポイントだ。

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キャラクター同士の関係性を補完する「支援会話

本作以前に存在した「支援効果」という要素が、本作ではキャラクター同士の関係性を描く「支援会話」というシステムとして導入され、キャラクター間の表現が強化されている。
支援会話ではキャラクター間の関係性やキャラクターの掘り下げを表現しており、本編だけではわからないキャラクターの生い立ちや立場、各国の文化などを知ることができ、世界観に厚みをもたらしている。
その他、支援を発生させたキャラクター同士が近くにいると、両者の能力値にバフが発生するようにもなっているため、キャラクターの仲が深まるだけでなく攻略にも役立つシステムである。
この支援会話システムは後作にも引き継がれていくFEシリーズの代名詞の1つとも言うべきものとなっている。

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より良くできるように思えるポイント

基本的には丁寧に作られている一方で、もっと良く出来たのではないかと思えるポイントもいくつか存在する。

1点目はチュートリアルだ。
本作には専用のチュートリアルモードが存在し、その内容はオスティアに留学していたというロイの設定が活かされたものになっている。
しかし、このチュートリアルで残念なのはストーリーの本編中に用意されているのではなく、タイトル画面にある「エクストラ」を選択した際に表示される項目であると言う点だ。
これではせっかく用意されているチュートリアルも存在自体に気が付きにくい。
チュートリアルの内容は作品の設定を活かしているため、そのまま本編自体に組み込んでしまって良かったのではないだろうか。

2点目はロイ以外のキャラクターの本編での存在感だろう。
本作は前述している通りロイ以外が死亡しても進行可能になっており、物語の進行はロイが中心となっている。
そのため、物語中では主人公ロイが全編を通じて非常に聡明に描かれる一方で、それ以外の味方キャラクターは支援会話を除いてしまうと登場する章をまたいで活躍する場がほとんど無いのは寂しい所だ。
「劉秀が非常に聡明であったために、優秀な部下たちが目立ちにくかった」とは諸葛亮による劉秀の評だが、このFE封印の剣のロイとそれ以外のキャラクターも正にそのような関係となってしまっている。
容量などリソース面の問題もあったのかも知れないが、キャラクターが生存していた場合に追加セリフが発生させるなど、もっと物語全体に様々なキャラクターが関与すれば更に良くなったに違いない。

 

システム

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難しすぎず、簡単すぎないSRPG

FE封印の剣SRPGタイトルであり、基本的に過去のFEシリーズを踏襲した要素で構成されている。
キャラクターをユニットとして扱い、ユニットを将棋のような形で操作して盤面を有利に進めていくのが基本的なゲームプレイだ。
全体として戦闘可能なマップ数は限られており、敵の数や出現場所などがランダムになる事も無いため詰将棋のような側面もあるにはあるが、ユニットは戦闘する事でレベルアップしていき、使い込んでいけば自然と強くなっていくRPG的要素も特徴だ。
レベルアップにしても能力値の成長率の傾向は設定されているもののランダムであり、思いがけないキャラクターが大きく成長する可能性を秘めている。
それによりプレイヤー毎に、またはプレイ毎に使い込むユニットに変化が生まれるようになっており、クリア後などに友人たちと「○○がめちゃくちゃ成長して凄い頼りになった」と話のタネになるナラティブがFEシリーズが持つ魅力的な部分と言えるだろう。

聖戦の系譜」より登場した剣・槍・斧の”三竦み”も健在だ。
三竦みにおいて有利な相性で戦いを挑めば、攻撃の命中率や回避率に有利な補正がかかるため、敵ユニットの装備武器を確認して有利ユニットを仕向けて対応するのがベターだ。
とは言え、本作では全体的には剣士が非常に強力な印象だ。
剣と言う武器自体が命中率が良いという側面もあるのだが、剣士がクラスチェンジによってソードマスターとなるとクリティカルヒットのようなものに相当する”必殺”を高確率で発動するのがその要因だろう。
高めの命中から必殺を連発するため、攻略においては非常に頼りになる存在となる。

マップ上には特定条件で仲間になるユニットが登場する事も多い。
これらの仲間になるユニットは仲間になるためのヒントになる会話や関係するユニットが示唆される事が多いが、初見プレイでは仲間にするのは難しい場合も多いだろう。

また、特定条件を満たしていれば外伝マップに行くことが出来る。
こちらも事前にセリフで示唆される場合もあるが、外伝進出に失敗したタイミングでそれらしいセリフが発生して外伝の存在を知るケースもある。
そのため初見では条件を達成するのは難しいケースもあるだろう。プレイには工夫が必要だ。
なお、本作のストーリーで真エンディングを迎えるためには全ての外伝に進出する事は必須条件となっている点は注意されたい。
この外伝マップは本編マップと比較するとマップ自体にギミックが設定されている事が特徴的だが、それによって難易度が大きく変わるという事は余りない。

本作におけるマップ攻略の全体の難易度は難しすぎず、簡単すぎないSRPGとして丁度良いバランスと言えるだろう。
全体的な傾向として回避主体と言う"運"に任せた立ち回りが必要になるマップがあるのは賛否がでる可能性はあるが、三竦みや「ストーリー」の項で記載したキャラクター同士の支援などのシステムを活かす事で、偶然を必然に変えて攻略するように設計されていると捉える事はできる。
レベルアップを含めて、システムを理解さえしていれば攻略するのは問題ないハズだ。

ゲームをクリアすると得点として高難易度のトライアルマップが解禁される。
トライアルマップはクリアデータを使用して挑む事になるため、本編中にキャラクターをいかに強力に育成できるかも重要となる。
このトライアルマップは本編のクリア回数に応じて敵ユニットとしてのみ登場したキャラクターなどの特殊なキャラクターをユニットとして使用する事が可能になる。

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主人公のクラスチェンジが遅すぎるのは考えものだ

本作のゲームバランスにおいて最も困った事になるのは主人公であるロイのクラスチェンジするのが遅すぎる事だ。

端的な説明となるが、各キャラクターは特定のアイテムを使用する事でクラスチェンジが可能で、クラスチェンジを行うとより強くなる。
普通の仲間キャラクターであれば宝箱などに入っているクラスチェンジ用アイテムでクラスチェンジが可能となるが、主人公ロイの場合にはストーリーを進行させないとクラスチェンジが行えない。
しかし、そのクラスチェンジが最終盤なのは勿体ないポイントだ。
ストーリー上では魅力的に描かれるロイだが、クラスチェンジによって能力が強化された状態をたくさん堪能できない。
それどころか、最終盤までクラスチェンジ前の状態で出撃しなくてはならないため、ロイが強く成長できなかった場合にはお荷物になりかねない。
物語の展開として仕方がない面があるとは言え、中盤で1回目のクラスチェンジ、最終盤で2回目のクラスチェンジと言った具合に、ロイのみクラスチェンジを複数段階にするなど配慮が欲しかった所だ。

 

グラフィック

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軽快に、そして躍動感のある戦闘アニメーション

SRPGの本作であるが、戦闘のドットアニメーションは躍動感があり非常に優れている。
攻撃がヒットした際にはヒットストップの演出もされるため、さながらアクションゲームのような爽快感も感じさせてくれる。
特に上図の封印の剣や神将器(フォルブレイズなど)による攻撃モーションは非常に派手でカッコいい。
これらの戦闘アニメーションは設定によりスキップも可能なため、サクサクと進めたい場合にはOFFにしてしまうのが良いだろう。

マップ上のマップチップはSRPGとしては標準的で、視認性と機能性を重視したものとなっている。

 

サウンド

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クリア後に解放されるサウンドルーム

FE封印の剣は全体的に明るい調子の音楽になっている。
それは特に自軍関連のものがその傾向が強い。これも若年層をターゲットとしている事が主な要因となっているだろう。
筆者が特に気に入っている楽曲をいくつか紹介したい。

自軍フェイズに流れる「あの空の向こうに(ロイの旅立ち)」

希望に満ち溢れた曲調が終盤に流れる事で感動を感じる自軍フェイズ曲「新たなる光の下へ(ロイの勇気)」

自軍優勢時に流れる「Winning Road(ロイの希望)」

コミカルで可愛らしい「キャス」

これらのBGMはストーリーをクリアする事で解放される「サウンドルーム」というものでいつでも聴く事が出来るようになるため、ゲーム音楽ファンにはありがたい要素だ。

 

総評

ファイアーエムブレム 封印の剣はストーリーと難易度が共にバランス良くまとめ上げられた素晴らしい作品だ。

SRPG初心者であっても比較的遊びやすいだけでなく、支援会話という要素によって起用すればするほどにキャラクターに愛着がわきやすい構造も構築されている。
また、ストーリーで大活躍し、クラスチェンジがとにかく遅い主人公ロイは本作において終始目立つ存在であると言えるだろう。

 

外部記事

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【レビュー】ASTRAL CHAIN

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1コントローラー2コントロール

ASTRAL CHAINはダイナミックなアクションゲームで高名なプラチナゲームズが開発したタイトルだ。
本作はプラチナゲームズ田浦貴久さんが初めてディレクションを担当する作品だ。
そういう事もあってかビジュアル面の方向性など目に見えて今までのプラチナゲームズとは異なる雰囲気が感じられるのも特徴的だろう。
事前に公開された動画では1人で2キャラクターを操作するプレイと推測できるものとなっており、その独特な操作方法も実際にプレイしてみたくなるようなものだった。

今回はASTRAL CHAINのレビューをしてみたい。

 

ASTRAL CHAIN(アストラル チェイン) -Switch

ASTRAL CHAIN(アストラル チェイン) -Switch

  • 発売日:2019/08/30
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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日本のアニメや特撮のような演出

本作の世界観自体はSFやサイバーパンクと言った要素で構成されているものの、ストーリーは少しだけ懐かしい息吹を感じさせるアニメテイストだ。
まずOPでは歌が挿入され、アニメのような演出でキャラクターの名前や声優の名前が表示される。
そしてストーリー自体にしても2000年代前半の少年マンガのような進行や演出で展開される。

本作の主人公選択は少しだけ珍しい手法を取り入れているのが印象的だ。
プレイヤーが操作する事になる主人公は男性と女性の好きな方を選ぶことが出来るのだが、選択されなかった片方は弟あるいは妹として登場するのだ。
弟妹は物語においても非常に重要なポジションであり、よく喋り、出番も非常に多い。
対して主人公として選択したキャラクターは基本的に無口となるため、その点は注意して選択した方が良いだろう。

物語の導入は非常にオーソドックスと言える「マイナスから始まるもの」が使用されており、本作においては「父親に相当するキャラクターを失う」こととなる。
また、本作の世界は人間の存続が危機に瀕しているなど、世界設定自体はかなり過酷な状態である。
しかし、物語のトーン自体が暗くなりすぎる事は無く、まさに少年マンガを観ているかのような気分にさせてくれる。

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ゲームプレイと紐づいたストーリー

本作の主人公は警官であり、様々な事件を章形式でクリアしていく形となる。
物語の描き方は「SFの警官」と言う設定を活かしたゲームプレイによってストーリーを描いている。

章は大雑把に説明すれば「捜査パート」と「戦闘パート」からなり、捜査パートでは街などで人々から聴き込みをしたりして情報を集めて何があったのか紐解いていく。
更にSF・サイバーパンク的要素として「アイリス(詳細は後述)」という視覚に情報を表示するAR / MR的なシステムが使用でき、それも駆使して捜査を進めていく。

また、「レギオン」という異世界の生命体を使役して捜査を行う点も忘れてはならないポイントだ。
ギオンは本作の要ともいえる存在で、プレイヤーキャラクターと一心同体の存在だ。
ギオンは複数の個体が存在しており、それぞれに特徴が異なる。
それらの特徴を駆使して戦闘を行う事がメインであるとは言えるのだが、その特徴は捜査をする場合にも有効に活用されるケースも多く用意されている。

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終わった感のないストーリー

しかし、本作がストーリーだけでも満足できるかと言うとそういう訳にはいかない。
そう感じる最大の理由は「本作をプレイしただけでは全貌が掴めないから」という点に尽きるだろう。
本作のメインシナリオを全てクリアしても、詳細な真相や設定が全て理解あるいは推測が可能なようにはなっていないのだ。
本作は「続編も可能なように懐深い構造に作られている」ようなのだが、それがかえって「ちゃんと終わってない感」に繋がっているように思えてならない。

少しばかり些細なポイントにも目を向けたい。
本作では前述の通り選択した主人公が全くと言って良い程に喋らない事になってしまうのは残念に思えた。
特に筆者の場合には女性主人公の声を当てている安済知佳さんの演技が以前よりかなり好みであったために女性主人公を選択したのだが、これが全くと言って良い程に喋らないために選択でかなり損をした気分になってしまった。
「喋らない主人公」というのはビデオゲームにおいて一般的手法であるが、選択したキャラクターと選択しなかったキャラクターが共に登場するように設計した本作ではその扱いに差が生まれてしまっており少々ではあるが相性が悪かったような気がしてならない。

また、シナリオが進行する会話のたびにキャラクターが操作不可状態となる点も地味ながら少々めんどうな仕様だ。
移動しながら説明して貰えればそれで良いのだが、何故か足を止めてセリフを聴かなければならないのはゲームプレイテンポを落としてしまっている。
当然、全て会話が移動しながら展開される必要は無いが、アクションのテンポを落とさない程度には移動しながらの会話を主体として欲しい所だった。

 

システム

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ステージクリア制のゲームプレイ

本作は基本的に警察庁をハブにして、事件が発生した場所に移動するような形式となっている。
「ストーリー」の項でも述べているが、ゲームプレイシーケンスはステージクリア制となっており大まかに捜査パートと戦闘パートに分かれる。
ステージではフィールド(街など)を歩き回り、人々から話を聴いて捜査パートを進行させるほか、サブクエストが豊富に用意されている。
サブクエストは様々なものが存在しており、戦闘が発生するものも存在するが、中には専用のちょっとしたミニゲームのようなものも存在するなど非常に作り込まれている。

しかし、好きなフィールドをいつでも探索することはできない点は少々残念だ。
以前のステージを再度プレイする事は簡単に出来るとは言え、自分の好きなタイミングで街に遊びに行く事が出来ないのは少し寂しい。

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1人で2キャラクターを操作する独特なプレイフィール

本作の最も特徴的なポイントはそのアクションだ。
「1つのコントローラーで2キャラクターを操作する」という独自アクションは新感覚で唯一無二だ。
プレイヤーキャラクターとレギオンの間は「鎖(チェイン)」で繋がっており、この鎖を駆使する事でも様々なアクションが行える。
ギオンはZLボタンを押す事で右スティックで移動させる事が可能になる(あくまで移動のみで、攻撃が出来るようにはならない)。
そのため、左スティックでプレイヤーキャラクターを、右スティックでレギオンを操作するような形となるのだ。
このユニークな操作で行える代表的なものは、上図のように敵を囲むように操作する事で鎖で拘束する行動だ。
こうする事で敵は無防備となり、その隙に連続攻撃を叩き込む事が出来る。
この他にも鎖を活用したアクションが用意されており、1つのコントローラーで2キャラクターを操作すると言う特性を活かして立ち回るゲームプレイは他では味わいようが無い体験だ。

また、その他にも敵の攻撃のタイミングで上手に回避が行えると専用の攻撃手段でカウンターを発動させられるなども可能だ。
この回避は一見・一聴するだけでは難しいが、敵が攻撃する際に特徴的な光や効果音が発生するケースも多いため、それを目安に回避を行う事で発動できる。
上手くなればなる程にキャラクターの動きが洗練されていくのはアクションゲームとして爽快なポイントを押さえていると言えるだろう。

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ダイナミックなボス戦達

本作で特に迫力があるのは各ステージの最後に現れるボスの存在だろう。
ボスによっては「どう戦って欲しいのか」が伝わりにくくなっており対処に困惑するケースも存在するが、見応えのある巨大な体格からド派手な攻撃を仕掛けてくるため戦っていて非常に楽しい気持ちにさせてくれる。

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ユニークなゲームプレイとトレードオフとなった要素

本作の特徴であり、長所であるレギオンだが、そのレギオンという存在が短所になっている事も多い。

まず地味に気になるのはレギオンジャンプだ。
ギオンジャンプはレギオンが鎖を引っ張る事でプレイヤーキャラクターをレギオンの位置に表示されたマーカーの位置にジャンプさせてくれるアクションとなっている。
しかし、レギオンコリジョン(当たり判定)がある事が影響しているのか、根本的にマーカーの位置に正確に着地させてくれていないのか、レギオンジャンプ時に表示される着地位置マーカーから微妙にズレてしまう事が多い印象を受けた。
そのため崖のギリギリでレギオンジャンプをしてしまうと、崖から落ちてしまうような事がままあったのだ。
素早い操作でレギオンジャンプを行いたい場合にも、崖のギリギリを狙わずに十分に余裕を持った位置にジャンプする必要がある。

そして、本作で最も気になる点を挙げるとするならば「カメラとロックオン」だろう。
ASTRAL CHAINではプレイヤーキャラクターとレギオンの2キャラクターを操作する事になるうえ、右スティックではカメラ位置では無くレギオンを操作するケースも存在するため、カメラワークに難が出る事は必然性があり想像に難くない。
最初にカメラワークに関してだが、プレイヤーキャラクターと呼びだしたレギオンが共に画面内に映るように自動でカメラ制御されているため、戦闘中に快適と感じるカメラワークと微妙にズレがある。
酷いと言うレベルでは無いものの、若干の視認しにくさ覚える所だ。

次にロックオンだが、こちらは挙動の仕様が良いとは言えない。
上述通りカメラは少々見えにくいため右スティックで位置を変更したいと思う事が多いのだが、敵をロックオンした状態で右スティックを一瞬だけ倒すとロックオン相手を変更する動作となってしまうのだ。
この仕様のせいでカメラ位置の微調整をしたいだけであるのにロックオン先が変更されてしまい戦闘中に困惑する事が多いのは残念でならない。

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サイバーパンク感を演出する”アイリス”

本作ではサイバーパンク感を強める「アイリス」 というシステムが存在する。
アイリスは様々な状況証拠から現場で何が起こったのかを推測・逆算して視覚化する事が可能なアイテムだ。
遷移はシームレスで自由にいつでもどこでも利用する事ができる。
建物の内部や壁の向こう側にいる相手を認識する事も可能で、SFを感じるストーリーテリングとして機能しているだけなく、ゲームプレイにおいて非常に重宝するものになっている。

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潜入ミッションも存在する

ストーリーのミッションの中には敵に見つからないようにする潜入ミッションも用意されている。
アイリスを使用する事で敵の視界を把握する事ができるほか、レギオンを上手く活用すれば相手を無力化できるため、難易度自体はそこまで高く無いが戦う以外のものも用意されており楽しめる。

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細かな遊び心

本作では細かな遊び心が用意されている事も忘れてはならない。

空き缶をゴミ箱に入れたり、猫を保護したり、バイクに乗ったシューティングゲームのようになったり、アイスクリームを運んだりと専用のミニゲーム的なものが用意されており、このような細かな遊び心が本作へのこだわりを感じさせる。

 

グラフィック

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サイバーパンク的な街並み

サイバーパンク的演出のライティング表現が印象的な街並みが魅力的だ。
特にニューヨークのタイムズスクエアをモチーフにしたと思われるハーモニースクエアなどは非常に魅力的な街に感じる事だろう。

キャラクターのアニメーションも非常にこだわりが感じられ、例えば移動中にゆっくり反対方向に向き変更をすればキャラクターがゆっくりと振り向くような動作したりする。
また、キャラクターの動きにはブラーをかけてダイナミックにみせる演出も行われている。しかし、動画では映える演出なのだが、スクリーンショットではブレて観えてしまうトレードオフの演出だ。

そのほか、処理負荷軽減のため遠景のモデルはフレームレートを落とす描画の工夫を行っているようだ。

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キャラクターのモデリングも悪くない

キャラクターのモデリングも比較的良く出来ている方で、特にボディラインは美しい。
私服のバリエーションがもっと豊富に存在していると嬉しかったが、少々贅沢な要望かも知れない。

 

サウンド

ASTRAL CHAINの音楽はカッコいい曲が揃っているが、ステージ毎に使いまわされる曲が少ない豪華な仕様が逆に1曲1曲の印象を薄くしてしまっている気がしてならない。
本作に限った事では無いのだが単純接触効果をもう少し狙っても良いのでは無いだろうか。

本作の中で最も聴くため印象が強い「Task Force Neuron」

クライマックス感の強い「Jena - Rebellion and Salvation」「Jena - Catastrophe」「Noah Prime」

主人公の性別により変化する「Dark Hero」

そのほか、本作のボイスは音声の有無でパクがあるのみで、リップシンクがないのは少々残念だろうか。

 

総評

ASTRAL CHAINが実現するプレイフィールは唯一無二だ。

1つのコントローラーで2人分のキャラクターを操作する独特な感覚は他では味わいようが無い体験になる事だろう。
しかし、そのユニークさが生み出す弊害は気になる所だ。

ストーリーは少々勿体ない部分もあるが悪いものでは無く、キャラクターのモデリング・アニメーションそしてロケーションはとても良いものに仕上がっている。
何より、ストーリークリアまでが20時間程度であるのは非常に丁度良い塩梅だ。
これより短ければ物足りないし、これより長ければ冗長と感じられたであろう。
この辺りのバランス感覚は流石はアクションゲームを熟知したプラチナゲームズだと言える。

 

外部記事

アストラルチェイン開発者ブログ : PlatinumGames Inc. Official WebSite

ASTRAL CHAIN Gameplay Pt. 1 - Nintendo Treehouse: Live | E3 2019 - YouTube

ASTRAL CHAIN Gameplay Pt. 2 - Nintendo Treehouse: Live | E3 2019 - YouTube

Three Things You Might Not Know About ASTRAL CHAIN - E3 2019 - YouTube

『ASTRAL CHAIN』には3部作どころかそれ以上に展開できるくらいの考えがある

【レビュー】聖剣伝説3 Trials of Mana

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マナの試練

聖剣伝説3 Trials of Mana(以降、聖剣3リメイク)は聖剣伝説3をリメイクして誕生した作品だ。
本作はE3 2019にて発表されたが、筆者はその発表に驚きと喜びが同時にあった事を覚えている。
驚いた点の1点目はリメイクが発表されたこと、それ自体だ。
聖剣伝説2のリメイクである「聖剣伝説2 Secret of Mana」が必ずしも良い評判を得られておらず、筆者に至ってはPVを観た時点で購入を諦めてしまっていた。
そんな中でも聖剣伝説シリーズというコンテンツの火が絶えることなく、比較的短いスパンでリリースすると言うのは意外だったのだ。
2点目は「聖剣伝説2 Secret of Mana」とは異なる方向性のリメイクを遂げたという事だろう。
内容は原作よりもアクション性が強くなっているように見えたし、何よりも立体的になった街並みや原作の雰囲気を壊さない良質なBGMが嬉しい驚きだったのだ。
PVの時点でもモーションのモッサリ感などの気になる部分もあったものの総じてポジティブな面が多かった印象だ。

今回は大好きな原作がリメイクされた聖剣伝説3 Trials of Manaをレビューしていきたい。

 

聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ - PS4

聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ - PS4

  • 発売日:2020/04/24
  • メディア:Video Game
 
聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ - Switch

聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ - Switch

  • 発売日:2020/04/24
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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原作に忠実なストーリー

聖剣3リメイクのストーリーやイベントの進行方法、会話の内容まで原作にほとんど完全に忠実だ。
ストーリーは忠実な再現であるため筆者の「聖剣伝説3のレビュー」と類似の事を記載してしまうが、本作は「人類の闘争に巻き込まれる自然」を描いており、原作の発売当時の1990年代の時代性が如実に取り込まれている内容だ。2020年の時点においてはそのようなテーマがメディアで取り上げられる事も少なくなり、その結果として本作のストーリーのテーマにリアリティあるいは身近さを若干感じにくくなっているのかも知れない。
ストーリーが6人の中から3人を選択してパーティーを組み、そして最初に選んだキャラクターが主役として描かれる点も原作同様だ。

当然ながら原作とは異なりモダナイズされている部分も数多く存在する。
次に誰に話しかければ物語が進行するのかがマップ上などにも記載されるようになったため、原作のようにストーリー進行のトリガーを探して道に迷うような事は無くなったと言って良いだろう。

基本的には原作に忠実なストーリーだが、場面によって移動中に会話が発生する点も本作オリジナルのモダナイズポイントだ。
この会話の内容は原作の物語の補完をしつつ、キャラクター同士の掛け合いによるパーティー間の関係性が補完されている。
原作ではパーティー間でのやり取りが希薄であったため、こういったやり取りが増えているのは嬉しい限りだ。
街中では操作キャラクターを仲間キャラクターに変更する事ができないのは残念だが、その代わりに街で仲間と会話をする事ができるようになっている。
ここでも仲間の存在を補完する役割を強化しているのだろう。

また、よりストーリードリブンになったという点も原作からの変更点だろう。
原作においては好きな順に攻略できた部分がより一本道の構造になっており、上述の移動中の会話によってよりストーリー仕立てになっているのだ。

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3Dモデルになった事によるストーリー進行の違和感

原作に忠実なリメイクを施している本作だが、環境が変わった事による違和感を改善するまでには至っていない。

2Dドット時代の進行方法をそのまま踏襲しているため、3Dモデルでは若干冗長な進行に感じる部分や逆に一足飛びに感じる部分もあるのだ。
2Dドット時代の物語、セリフを3Dモデルのキャラクターがそのまま行ったため「ん?それ必要あるんだっけ?」「え?なんでそう思い至ったの?」とキャラクターに感情移入しにくく感じる部分が少なからず出ているように思えた。
省略表現主体の2Dドット時代には脳内補完が自然に行われるために成立していた部分が、3Dモデルというディティールが豊かになった表現の下では脳内補完がしにくく若干の違和感になっているのではないかと推測される。

また、同様の理由で物語全体の印象も若干変化した印象だ。
2Dドットの原作をプレイしていた際には全体的にシリアスな物語の印象が強かったのだが、3Dモデルによってディティールの向上した本作ではコミカルな印象が強くなっている。
やり取り自体は当時とほぼ同等であるため、視覚から得られる情報によって受け取り方にも変化が生じたのだと思っている。

これらの問題を解決するには原作の要素を弄らざるを得ないため、場合によっては原作の良さを壊してしまう可能性もある。
非常に難しい選択あるいはバランス感覚を要求される部分だが、もう少し踏み込んでみても良かったのかも知れない。

 

システム

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簡単ながらアクション性が増した戦闘システム

聖剣3リメイクの戦闘はボタンによって攻撃や回避を行うようになったため、よりアクション要素が増した直感性の高いモダンなものに変更されている。
とは言え、攻撃と回避の駆け引きが強い訳ではなく、原作では凶悪な火力を誇った敵の攻撃も良心的な水準に落とされているため、アクションまたはRPGの初心者向けな調整がされていると感じられる。
そのため、戦闘においてはパーティーに回復役となるヒーラーさえいれば苦戦を強いられる事は余り無いと言っても良いだろう。

戦闘中はいつでも簡単に操作キャラクターを変更する事が可能だが、仲間のAIは原作とは異なり自身が指示をしなくても攻撃や回復、補助の魔法を使ってくれるため、頻繁に操作キャラクターを変更したり、魔法の指示を出したりする事は無いかも知れない。
AIの行動パターンの傾向も変更可能で、攻撃重視にしたり、サポート重視にしたりする事が出来るため役割に合わせて変更するのが好ましい。
しかし、回復に関してはAIが実行してくれるタイミングが遅きに失する事がややある印象で、ちゃんと回復したい時にはやはり自ら操作するなりして回復を行った方が無難だ。
全体的には非常に遊びやすく変更が行われており、余計なストレスなくゲームのプレイに集中できるように構築されている。

キャラクターの育成面においても変更があり、レベルアップ時に獲得できるポイントを攻・守・知性・精神・運の各種ステータスに好きなタイミングで割り振る形となった。
割り振った各種ステータスのポイントの数に応じてスキルやアビリティなどを覚えるようになっている。
特にキャラクターの性能に影響を与えるアビリティは攻撃役、回復役、盾役、補助役などロール的な概念でバトルを行う事も可能にする。
難易度の低めなアクションRPGの本作だが、何を覚えさせるか、どのアビリティを使用するか、どういう役割を持たせるかを考えて育成できるモダンな設計が採用されているのは面白いポイントだ。
しかし、盾役のようなヘイトを集めるようなスキルが守ステータスで得られず、運ステータスで得られるようになっているなど、ポイントを割り振った先とその結果として得られるロール的アビリティが微妙にマッチしていないのは少々勿体ない。

「ストーリー」の項でも記載した通り、本作ではプレイアブルキャラクターが6人いる。
そのため、キャラクターそれぞれに扱う武器や覚えるスキル・アビリティが異なる。
キャラクター毎の操作感の性能差として攻撃速度の違いは感じるが、リーチの差は五十歩百歩と言った程度で余り感じにくいと言った所だろう。
原作においては特定の必殺技や魔法を使用すると、強力で必中の反撃をほぼ確定で使用してくる敵が多数存在しており、その存在の影響により魔法主体のキャラクターは活躍しにくいと言う状況が生まれていた。
しかし、本作では攻撃を回避がする事が出来るようになっているため理不尽に感じる事も無くなった。
自分の好みのキャラクターを選択し、操作しやすくなったのは嬉しいポイントだ。

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健在のリングコマンド

本作ではリングコマンドも存在するが、基本的にアイテムを使用する際に利用するだけになっている。
原作においては魔法を実行する際にも使用したが、本作においてはショートカットが用意されているため利用頻度は減っている。

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健在のクラスチェンジ

クラスチェンジももちろん健在だ。
原作ファンとして嬉しいのはクラスチェンジ後の見た目がしっかりと3Dモデルで用意されている点だろう。
本作も原作と同様にクラスチェンジによりワンランク上の必殺技を使えるようになったり、新たなスキルを習得する事が可能になる。
また、アクション要素の強くなった本作においては通常攻撃の回数が増えるなどアクションが変化するという操作面での恩恵も存在する。

原作ではクラスチェンジをした辺りの中盤頃から金欠になりやすいが、本作では序盤から金欠になりがちな印象だ。
資金の需要と供給が設計されているという事でもあるが、筆者のようにアイテムの収集癖があるプレイヤーからすると、この金銭的余裕の無さは苦しい所だ。
なお、装備をキッチリと整えずともある程度は問題なく進行させる事ができるので、収集癖などなく攻略を目指すだけならば気になる事はないだろう。

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増量した探索要素

聖剣伝説 Legend of Manaで登場したサボテンくんを見つけるフィールド探索要素が増えている。フィールド上をしっかりと確認していれば見つけること自体はそう難しくない。

その他、街中やフィールドなどに宝箱やアイテムが落ちていたり、アイテムが入っていたり、回復が出来たりする壺を壊す事が出来る。
原作においては探索の要素がなくデッドスペースになっていた場所も存在したが、本作ではそれらのオブジェクトの存在によって探索の楽しみが増えている。

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気になる雑多な部分

その他、気になった点を雑多にまとめてみた。

本作のステージには謎解きとまではいかないが、原作ライクにギミックによって進行可能になる部分が存在する。
しかし、スイッチを押してもカメラが変化した場所を捉えるような演出がないケースもあるため、何が変化したのかがわかりにくい事もあるのは少し不親切だ。

移動には「ダッシュ」が存在するが、通常時との速度差を余り感じにくいのは少し勿体ない。
もう少し速度差を明確にしても良かったようには思うが、最高速度をこのレベルに抑える必要性があるのであれば、画面にエフェクトやブラーをかけて「速い感じ」を演出する工夫をした方が良かっただろう。

ボタンの割り当ても少々惜しい。
本作は原作と異なり街中でも剣を振れるのだが、剣を振るボタンと会話するボタンが同じため、話しかけようとして攻撃を行ってしまう誤操作をする事もある。
攻撃してもデメリットは無いが微妙なストレスになるため、割り当ては検討をして欲しかった所だ。

デフォルトのカメラ操作スピードが遅いのも少々不便に感じる。
設定から速度を変更可能なためマイナスの要素とまでは言わないが、なぜこのカメラスピードがデフォルトなのか疑問だ。

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やり込み要素や追加要素

聖剣3リメイクにおいてはクリアには必須ではないやり込み用の要素も存在する。

まず1つ目は原作にもあった「ブラックラビ」だ。
原作同様にシナリオを特定の段階まで進めると挑戦する事が可能で、本作ではデュランやアンジェラ以外を主人公として選択しても挑戦する事が可能となった。
敵としては比較的強いが、原作程の強烈なラッシュ攻撃などは無くなっている。
良く言えば良心的な調整が行われているが、悪く言うと数あるボス敵の1体になってしまっており、敵としての印象は薄まっている。

2つ目はクリア後に解放される追加シナリオだ。なお、これはクリア後要素ではあるがエピローグに当たるような部分ではない。
こちらは完全に新規に追加された内容のためストーリーや会話内容は完全新規のものだが世界観を崩すことなく進行するのは安堵するポイントだ。
このクリア後要素では裏ボスとも言うべき相手と戦う事になるほか、全く新しい上位クラス「クラス4」となりキャラクターを更に強化する事が可能となる。
また、強化した能力を試せるだけの長いダンジョンが用意されているのが特徴的だ。
しかしこのダンジョン、やや長すぎるのは欠点でもある。
ステージに入ってからボスに到達するまでの長さが、本編のダンジョンの3~4つ分程は少なくともあり、シチュエーションも敵が配置されているだけに近くモチベーションが長続きしにくい。
ダンジョンを何分割かに分け、その上で要所要素でストーリーなどの会話を織り交ぜるなどペーシングをするべきだったように思える。

 

グラフィック

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新たな発見のある3Dグラフィック

聖剣3リメイクのグラフィックはアンリアルエンジンによって美しく表現されている。
2Dドット時代には詳細にはわからなかった街の構造や立体感は「ここはこういう風に見えてたんだ」という原作では味わなかった雰囲気・空気感を楽しめる。

キャラクターのモデリングに関してはメインとなる6人の主人公は特に良く作り込まれている印象で、特徴的なサブキャラクターに関してもそれなりには作られている。
キャラクターが装備する武器を変更する事で見た目にも反映され、クラスチェンジでも見た目が変更される。

しかし、モーションは全体的にモッサリとした印象は拭えない。
攻撃モーションはメリハリがなく単調で、モッサリとした印象を覚えるのだ。
予備動作から攻撃、後隙と言った一連の動作が一定の速度で行われているためにそのようなモッサリ感があるのではないかと思える。
例え同じ総フレーム数にしたとしても、予備動作や後隙は残しつつも、攻撃はキビキビと敏捷に行う事で少しはモッサリ感が軽減できたのではないだろうか。
その他のカットシーンでのキャラクターモーションも少々ぎこちない。
口パクにしても口の動きが小さく、パクがちゃんとされているのかわかりにくく勿体ない。
モデリング自体は悪くないのだが、モーションの完成度は全体的に物足りない印象を受けるだろう。

その他の少し気になる点も記載しておく。
テキストのフォントサイズが小さい事が少し気になる所だ。Nintendo Switch版においては携帯モードも存在するため、人によっては少し見えにくいと感じる可能性はある。
設定にて「カメラ距離」という項目があるが、体感して目に見えてわかるほど距離が変化しないのも少し困惑する。
スクリーンショットで比較すると少し変化があるのがわかるのだが、逆に言えばそうしなければ違いがわからない程の距離しか変化しないのは不親切だろう。

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あれ?こんなでしたっけ?

マイナスとまで言うつもりは無いが、ウィル・オ・ウィスプのデザインがイメージと違うのは驚いたポイントだ。

筆者としては淡い青色に揺らめく炎の中に顔が付いているイメージだったのだが、顔の周囲の部分は揺らめいたりする事なく渦巻く特徴的な形をした石の塊ようなデザインになっていたのだ。
あれ…?そういう感じ?ま、まぁ良しとしよう。

 

サウンド

聖剣3リメイクでは音楽もリメイクされている。
リメイクされた音楽は原作のイメージを全く崩しておらず、素晴らしい完成度に仕上がっている。原曲厨の傾向がある筆者も全ての曲とまではいかないものの全体的には大満足の完成度だ。
そのうえ、設定により原作楽曲でプレイする事もに可能になっており、聴き比べを行う事でも改めて雰囲気を壊さない良いモダナイズがされている事が伝わる。

SEに関しても原作を踏襲したものを使用している場合も多く、サウンド面でニヤリとできるポイントは多いだろう。

本作ではキャラクターにボイスが追加されている。
メインストーリーはもちろん、戦闘後にもキャラクターがセリフを発するが進行や状況によって内容が変化する。
ボイスの途中で宝箱を開けると、ボイスが途中で途切れて宝箱のアイテムを入手し終わった後に途切れた所から続きが再生されるなど細かい点で微妙に違和感を感じる部分もある。

 

総評

聖剣伝説3 Trials of Manaは「原作に忠実なストーリー」と「モダナイズしたシステム」という、守るべき部分と挑戦する部分のバランスを取った「リメイクとして良い作品」に仕上がっている。

原作では感じ取れなかった街並みの立体感は聖剣伝説3に新たな視点を見出している。
リメイクされた楽曲達の完成度は素晴らしく、原曲をリスペクトしつつ純粋なモダナイズが行われているのは原作ファンとしても好印象だ。

ゲームとしては単純・単調で深みを生み出すまでには至っていない点はあるものの、聖剣伝説3を改めて楽しむには十分な完成度だ。

 

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【レビュー】ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ

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命知らず

ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ(以下、P5S)はアトラスとコーエーテクモゲームスとのコラボレーションによって生まれたタイトルだ。

発表当初は「ペルソナ無双か!?」という印象が強く、いわゆる"お祭りゲー"なのだろうと思っていた。
しかし、その印象は良い意味で裏切られる事となる…。

今回はP5Sのレビューをしていきたい。

 

 

ストーリー

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完全な続編としてのストーリー

まずP5Sのストーリーは外伝などでは無く「正当な続編である」という事を知って貰わなければならない。
本作はペルソナ5コーエーテクモゲームスとのコラボレーションによって生まれた作品ではあるが、その内容は完全な続編として成り立っているのだ。
そのため、ストーリーや会話はペルソナ5と同様にふんだんに用意されており、ペルソナ5とほとんど同じ形式で会話が行われ、たまに会話中に差し込まれるキャラクターの目をフォーカスした顔のカットインといった演出なども全て使用されている。
メーカー同士のコラボレーションタイトルと言うと一種のお祭りゲームのような様相を想像しがちであるが、本作は紛れもなく続編の立ち位置となっているのだ。

続編となると本作から触れる初心者は問題なくプレイできるのかも気になる所だが、その点は基本的には問題ないと言えるだろう。
本作は前作ペルソナ5から半年後という時間軸で物語が展開される。
しかし、前作の内容が本作で密接に関係する事は無いため、どのような事件が起こっていたのかを知らなくても本作の内容は問題なく楽しむ事が出来るハズだ。
とは言え、主要な人物として登場するモルガナやラヴェンツァと言った特殊な存在が何なのかという説明も無いため疑問符が残ったままにはなるかも知れない。そのため、本作から入るという人は「そういうもの」として受け入れるしか無い部分は少なからずあるだろう。

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対比がよく描かれたストーリー

では本作のストーリーをもう少し具体的に紐解いていきたい。
P5Sのストーリーのテーマを端的に表現しようとすれば「反逆の負の側面」になるだろう。
前作に当たるペルソナ5では主人公達は「反逆心」によって人を食い物にする「悪い大人」を成敗してきた。
しかし、本作の敵として登場する人物はどれも私利私欲のために悪行を行うような人物ではなく、主人公と同様の「反逆心」を起点にして大衆心理を操り復讐を行っている人物なのだ。
つまり、「主人公達と表裏一体の存在」あるいは「主人公達も一歩間違えばこうなっていた」といった対比になっている構図は「純粋な悪」として表現された前作ペルソナ5の敵よりも厚みある人物設定になっていると言えるだろう。

物語の進行は前作同様にストーリードリブンで物語を進行させる事でゲームが進行していく形だ。
その基本的な流れも前作を踏襲しており、フィールドワークによる調査を行った後に、パレスに相当するジェイルに侵入するステージクリア制となっている。
ステージは日本各地が舞台となっており、主人公達は各地を巡って世直しをしていくのだが、その旅では各地の観光名所や名物、名品に関する説明が「旅をしている感」を演出してくれている。

物語進行は前作同様に主人公達の特定の仲間にフィーチャーした「お当番制」になっていると言って良いだろう。
お当番であっても、お当番が過ぎても各キャラクターの存在感に大きな違いが出る事が無い点は良く出来ているストーリーだ。
しかし、各ステージの敵人物は特定の仲間キャラクター1人と対比するような構図となっているため、根本的にお当番になるステージが用意されていないキャラクターもいるのは少々勿体なく感じる所だ。
仲間全員がフィーチャーされるように1人で仲間キャラクター複数名と対比出来るような敵人物を用意できれば更に良かったのかも知れない。

大きなマイナスでは無いが、会話にオート送りが無いのは面倒に感じる。
本作は会話の大半がボイス付きで再生されるが、会話のオート送りが無いために会話を進行するためにボタンを押す必要がある。
ボイス付きの会話ではセリフとセリフの間も重要であるため、ボタンを押させるのではなくオート送りを是非とも用意して頂きたい。

前作にあったような仲間との親交イベントである「コープ」のようなシステムはないが、本作においてはそれを補うためにキャラクターと関連したサブクエストが用意されている。
サブクエストでのストーリーボリュームは余り無いため、本作での仲間キャラクターの多角的な掘り下げはやや不足している所だろう。

その他の前作と異なる点も記載したい。
前作ではプレイヤーが何かしら行動する事で一日一日が経過し、特定の日付までにステージを攻略する事が必要になっていた。
しかし、本作では物語の進行と日付が完全に同期しているため、プレイヤーが様々な行動を行っても日付が進んでしまうと言う事は無くなっている。
そのため、ゆったりと自由にプレイする事が可能となっている。

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シンプルな構造ながら冗長なストーリー進行手法

P5Sのストーリー進行はペルソナ5と同様にフィールドワークとジェイル(ダンジョン)パートの2プラトンシーケンスが基本だ。
フィールドワークでは敵の素性を捜査し、ジェイルパートでは敵が出て来るダンジョンを攻略していくような形となる。

フィールドワークやジェイル攻略は1つの大目標に対して、中目標が3、小目標が9といったようなわかりやすい構成が基本となっている。
例えば、ジェイルのボスを倒すためには3つ存在する○○を陥落させる必要があり、○○へ向かうためには警備している3体の××を倒す必要がある…といった具合なのだ。
この基本構造はシンプルな考えの構造なのだが、それをストーリードリブン(一本道)に行わせようとしているためにプレイヤーには非常に冗長なプレイを要求している事がしばしばある。そこがフラストレーションに繋がりやすいポイントなってしまっているのは残念だ。
この理由を端的に言えば「A地点にいって、B地点に行って、C地点に行って…」ととにかく色々な場所にたらい回し状態にされるからだ。
これが「目先の小目標を潰していったら大目標までたどり着いた」という構造にしているのであれば大きく気にならなかった可能性もあるのだが、本作では「大目標に行こうとする⇒行けないので中目標を目指す⇒行けないので小目標を目指す」という行き当たりばったりな構成になっており「たらい回し感」がかなり強くなってしまっているのだ。
このような状況となると、小目標や中目標が「大目標のための障害」としてしか捉えられなくなってしまいがちで、小目標・中目標を達成する事が楽しみに繋がらずモチベーションに水を差す形になっている。
また、たらい回し状態であるが故にストーリーの進行も遅く感じられてしまい、必要以上に時間がかかっている印象を受けてしまう。

このような進行はペルソナ5も同様であったため「前作通り」と言えばそうなのだが、冗長なストーリー部分でプレイ時間が間延びしてしまうのはフラストレーションだ。

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あらすじの機能を持った「仲間と話す」

アジトに集合して「仲間と話す」を実行すると前作同様に物語の進行状況に合わせてセリフが変化する。
これは”あらすじ”の機能を持っているためだが、キャラクター同士の会話で進行状況を確認できるのは手間のかかった作りと言えるだろう。

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ショップに相当する通販

ゲーム内ショップの通販では仕入れ先の情報が表示されるなど細かい部分でもこだわりが感じられる。
ゲームシステムとしては無意味な情報だが、このような設定があるだけでも世界観に広がりを持たせることが出来る。

 

システム

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ペルソナ5 x アクション

P5Sのバトルシステムについて記載していく。
しかし、まずは本作のバトルシステムが独自の路線で組まれているものである事を認識して貰う事が何よりも重要であるように筆者は感じている。
本作は無双シリーズでお馴染みのコーエーテクモゲームスとのコラボレーションタイトルだ。そのため、事前情報においても「ペルソナ無双」などと評される事も多かったように思う。
だが実際には無双シリーズと同じような感覚でプレイをするべきタイトルでは無いのだ。本作は従来のペルソナでも、無双系のゲームでも無い、「ペルソナという作品をアクションゲーム化した作品」になっているのだ。

本作はアクションゲーム(正確にはアクションRPG)だが、ペルソナ5のバトルコマンドとして存在した「スキル」や「ガン」、「総攻撃」など原作を再現した攻撃手段がふんだんに盛り込まれている。
スキルはペルソナによってお馴染みのイラストのカットインと共にカッコよく発動する。発動させるにはコマンドから任意のスキルを選択して発動する事になるが、発動するスキルを選択中は時間が停止するため問題なく使用する事が可能になっている。
しかし、スキル発動に必要なSPは簡単に枯渇し、SPの回復手段も限られるため、スキルをバンバン使っていく事は難しい。
SPはHPの回復手段としても有用であるため、折角用意されているにも関わらず気軽に使用できないのは少々勿体ないように感じる所だ。

戦闘の発生方法も原作同様のシンボルエンカウントで、敵キャラクターにインタラクトする事で周囲に敵が湧き戦闘になる。
そのため、無双系のようなワラワラ感はそこまで無く、無双系アクションを期待していた場合には違和感を覚えるポイントになるだろう。
繰り返しになるが、本作はあくまでも「ペルソナがアクションゲームになった」という表現の方が正しいと言える立ち位置の作品なのだ。

ペルソナ5で登場した魅力的なキャラクター達を自分で操作して楽しめるアクションというだけでもファンならば嬉しいものがあるだろう。
各キャラクターの操作にはコンセプトが設定されており、キャラクター毎に少し異なる戦い方になるようになっている。
ただし、本作は自分の好きなキャラクターを使い続けるようなプレイスタイルを推奨している訳では無く、敵の弱点となる属性を保有したキャラクターを操作するのが基本となっている。
しかし、レベルデザインがイマイチであるのは少々不親切にも感じる所だろう。
敵の弱点をつくことで有利に戦えるようになるメカニクスを用意しているのだが、出て来る敵の弱点属性がまばらであり、誰を使って欲しいのかという意図(デザイン)を感じ取れない。
もう少し「こう遊んで下さいね」というお膳立てをしても良いのでは無いだろうか。

その他、気になる点も少しだけ記載しておきたい。
全体的なカメラワークはデフォルト設定のままでは縦横の回転の速度が遅すぎて背後の敵を対処しにくくアクションにならない。
デフォルト値が何故この速度になっているのか疑問なレベルで、コンフィグからカメラ速度を最速に変更する方が望ましい。

同じボタンに複数機能を載せている事も誤操作に繋がり少々不親切だ。
敵に総攻撃がしたいのにオブジェクトに張り付いてしまったり、奇襲がしたいのにオブジェクトに張り付いてしまったりする事がままある。
この手の誤操作は"慣れ"だけでは対処が難しいため、ボタン割り当てはもう少し検討して欲しかった所だ。

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システムと相性が悪いボス戦

本作にはペルソナ5と同様にボスが存在しているほか、フィールドには強力な大型の敵も登場する。
しかし、ボス戦などの強力な敵との戦闘はお世辞にも良い完成度とは言い難い。
純粋な無双系アクションでは無いとは言え、無双系アクションを母体とした本作は基本構造が「一対多」を想定しているために強力な1体の敵と緊迫感を持って戦う事に向いていないのだ。

まず、画角の広いカメラワークについて記載したい。
無双系であれば「一対多」を基本とするため、画面内に可能な限り敵を描写する必要がある。そのため、カメラ位置は操作キャラクターから距離・高さ共にやや離れた位置に設定されているのだろう。
しかし、これがボスのような1対1のような状況では、カメラ位置がキャラクターから離れているために相手と自分の距離感が正確に掴みにくく、攻撃するにしても回避するにしても戦いにくい印象を与えてしまうのだ。

次に軽快過ぎる操作性もボス戦にとっては障害となる。
画角の広いカメラでは前述の通り敵との正確な距離感は掴みにくい。そのため、無双系アクションでは攻撃アクションの1つ1つの踏み込み距離が長めに設定され、敵に攻撃が当てやすくしていると思われる。
しかし、ボスのような体力も多く、のけ反りも無い敵の場合には懐に潜りやすくなってしまう。そのことが原因で問題が発生しているのだ。
カメラをボスにロックオンした状態で懐に潜ってしまった場合、操作キャラクターと敵の位置関係の問題でカメラがグルグルと回転してしまい視認性が著しく悪くなってしまう。
また、逆にロックオンしていない場合に懐に入ってしまうと、のけ反りの無い敵に対して踏み込んで攻撃をしてしまうために、敵を通過するような形となり攻撃を当てにくくなってしまう。

見た目以上に存在するヒットボックスも同様だ。
一対多を想定し、正確な距離感を掴みにくいという状況の無双系アクションでは、自分も敵も攻撃が当てやすいように見た目以上の攻撃の当たり判定を有している。
そのため、自分の攻撃は「いつ」「どこまで」近寄れば当てられるのかという正確な距離がわかりにくく、敵の攻撃は「いつ」「どこまで」回避すれば良いのかという正確な距離がわかりにくい。
そして、そのような大雑把な立ち回りしか行えないシステムが基盤になっているにも関わらず、繊細な行動を求められてしまうボス戦は楽しさが感じにくいと言えるだろう。

一対多をベースとしている故のこれらの諸問題の影響からか、本作のボス戦は「向いていない事をやらされている感」が強い。
戦闘の方式やカメラワークをシチュエーションに応じて変化させるような工夫がないため、「餅は餅屋」という言葉がピッタリと当てはまると言わざるを得ない内容だ。

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合体によるペルソナの誕生ももちろん再現

P5Sではペルソナとペルソナを合成して強くする「ペルソナ合体」も登場する。
登場するペルソナの数もかなり多く「こんなに作ったのか!!」と驚くばかりだ。

ペルソナ全般の仕様は従来のペルソナシリーズと同様で、合体させる事でスキルを継承させたりする事も出来る。

全てのペルソナは戦闘中に召喚してスキルを発動させる事などが可能であるが、スキルのエフェクトは全体的に派手なため、敵が見えないなどの視認性の悪さに繋がっているのはアクションゲームとしては少々残念なポイントではある。

 

グラフィック

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旅の気分を盛り上げる各地域を再現した街並み

人物のモデリングや前作ペルソナ5でも登場した街並みは流用されているのかそのまま再現されているのは嬉しいポイントだ。
また、前作では行く事のなかった日本各地の街並みも主人公達が旅している事を強く感じさせてくれる興味深い作り込みをしている。

キャラクターモデリングに関しては前作ペルソナ5自体もそうだったが、モデリング自体が精巧と言う訳では無い。
また、ストーリー上の演技にしてもイラストのグラフィックをメインにしており、キャラクターモデルは演技の雰囲気を伝えるに留めている。
他作品で恐縮だが、キャサリン幻影異聞録#FEでは3Dモデルにガッツリと演技をさせており、なぜペルソナシリーズではこのような形式のままでいるのかは不思議な所だ。

画面に表示されるGUIの1つ1つがスタイリッシュな点も継承されている。
視認性やレスポンスを抜群にするでもなく、GUIを風景に溶け込ませている訳でもない。
世界観を演出するようなリッチでスタイリッシュなGUIで統一させている。
この印象的なGUIが健在なのは嬉しい限りだ。

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戦闘中のカットインもバッチリ再現

スキルの発動時に挿入されるキャラクターのカットインもバッチリ再現されている。
こちらも非常にカッコよく、嬉しいポイントだ。

 

サウンド

無双シリーズらしいアレンジがなされたBGMはファンであれば必聴だろう。
それ以外に関しても世界観にマッチした非常にカッコいいジャズな音楽は印象的で思わず音楽と一緒に体動いてしまうだろう。

特にステージ攻略がだいぶ進行した際に流れる「Daredevil」は最高に気分を盛り上げてくれるだろう。

日本各地のショップでのセリフは地方の訛りも表現されていたり、洞窟のような空間ではボイスにリバーブがかかるなど、ボイス関連もしっかりと表現されている。
その他、ゲーム内ショップ画面では待機中ボイスが用意されていたりとボイス自体も充実していると言えるだろう。

 

総評

ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズは純粋なペルソナ作品でも無ければ、無双系のようなアクションゲームでも無い、完全な新機軸のアクションRPGだ。
逆に言えば無双系アクションを期待してプレイすると違和感を覚えてしまうかも知れない作品であり、全く別のアクションゲームとしてプレイするべきだろう。

前作にあたるペルソナ5よりも厚みを持ったストーリーは良く出来ており、ペルソナをアクションRPGとして落とし込んだ手法も素晴らしい。
GUIや音楽の素晴らしさが健在である点も最高だ。

しかし、度々登場する強力な敵やボス敵はシステムとの相性が根本的に悪く、フォークでプリンを食べているかのような親和性の悪さを感じずにはいられない。 

 

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【レビュー】幻影異聞録♯FE

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Reincarnation

幻影異聞録♯FE(以下、幻影異聞録)はファイアーエムブレムシリーズで知られるインテリジェントシステムズ女神転生やペルソナといった作品で知られるアトラスがコラボした事によって生まれた作品だ。
当初WiiUでコラボが発表された当時には一体どんな作品となるのか全く見当が付かなかったが、それは開発側も同様だったようで紆余曲折あった事が様々な媒体で語られている。
その影響もあり、新たな情報が公開されるまでに非常に長い期間を要した事を覚えている。
そして、新たな情報が解禁された時には煌びやかな世界観を引っ提げたゲームとなっていたのだ。

今回は異色のコラボ、そして独特の設定を有した幻影異聞録♯FEをレビューしてみたい。

なお、今回はNintendo Switch向けに発売されたEncore版をメインのレビュー対象として記載する。

 

幻影異聞録♯FE Encore -Switch

幻影異聞録♯FE Encore -Switch

  • 発売日:2020/01/17
  • メディア:Video Game
 
幻影異聞録♯FE - Wii U

幻影異聞録♯FE - Wii U

  • 発売日:2015/12/26
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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芸能界xファンタジー

幻影異聞録は芸能界を舞台にしたストーリーが特徴的だ。
ストーリーの会話はフルボイスで、全体的なトーンは明るく、仲間たちが夢に向かってひたむきに成長していく姿が描かれる。
敵として登場する人物にしても必ずしも悪意によって行動している存在とは言い難く、主人公達がアーティストあるいはエンターテイナーといった表現者としてステップアップするための乗り越えるべきハードルとして立ち塞がる存在になっている点も興味深い。

ストーリーの進行も単純なダンジョンクリアしていくものとは少し異なる。
ダンジョンを進めると表現者としてステップアップするためのハードルが登場し、それをクリアするためにイベントを進めるという形式だ。
つまり、大まかには「ダンジョン(探索・謎解きなど)⇒キャラクターのステップアップ⇒ボス戦」のような流れになっている。

本作ではキャラクター毎に用意されたサイドストーリーも用意されており、メインのストーリー以外でもキャラクターの成長が描かれる。
サイドストーリーはよくある「敵を倒せ」のようなもの以外にも「人と会話して進行する」ものも用意されている。
敵を倒させる事をプレイヤーに強要することなく、あくまでもキャラクターの成長に焦点をあてているのは素晴らしい選択だ。
また、サイドストーリーのクリア時にはキャラクターの歌唱やダンスのミュージックビデオのようなカットシーンが用意されており、サイドストーリーで成長した結果を感じさせてくれるご褒美が多めの内容になっている。
なお、サブストーリーの会話もフルボイスになっており聴きごたえも抜群だ。

また、前述の通りストーリーの大半はフルボイスで進行するが、会話にはしっかりとオート送りが実装されている点もありがたい。
ただし、オート送りは「その会話中の期間のみ」で有効となり、別の会話ではオート送りのON/OFF設定が引き継がれない。
そのため、筆者のようにコントローラーから手を離してストーリーを楽しみたいような場合には会話のたびにオート送りをONにする必要があるためパーフェクトとまではいかない仕様だ。

本作ではメインのキャラクター達とは関係の無いサブクエストも用意されている。
サブクエストに関してもある程度のストーリー性を持って展開されるほか、エピローグではサブクエストの人物のその後が垣間見えたりと比較的充実している。
しかし、サブクエストは受注したクエストが一覧で観られないため、各クエストの受注状況などは忘れないようにしなくてはならない点は不便だ。

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FEのキャラクター達

本作はファイアーエムブレム(以下、FE)とのコラボレーションによって生まれた作品だ。
そのためFEの暗黒竜や覚醒のキャラクターが仲間やボスとして登場する。

FEキャラクター達は「ミラージュ」といわれる記憶を失い彷徨っている異世界の存在で、人間が生み出す表現力の源「パフォーマ」と言われるものを糧としている。
彷徨えるミラージュの多くはパフォーマを得るために人々を襲っているが、主人公達を始めとしたミラージュと協力する事ができる程の強いパフォーマを持った存在は「ミラージュマスター」と呼ばれる。
表現者としての能力がパフォーマとなるため、パフォーマを糧とするミラージュを強くしていくためには主人公達も芸能界で表現者としての能力を高めていく事になるのだ。

敵がミラージュを集める理由は示されるのの、根本的にミラージュがパフォーマを糧とする理由は具体的に示されない。
しかし、メタ的な視点を交えれば「ゲームあるいはゲーム内キャラクターは表現者がいて初めて存在し得る」という事を表現したいのではないかと推察できる。
FEを始めとしたビデオゲームと言う作品自体が開発者や声優といった表現者たちの力によって成り立っている。
つまり「ミラージュがパフォーマを糧とする」のは「ゲームとは表現力によって生み出される」「ゲーム内キャラクターとは表現者がいなくては存在できない」という事を表していると読み解けるのだ。

なお、FEのキャラクター達はミラージュという形式以外にも、どこか見覚えのある風貌をした店員がコンビニやカフェにいたりもする。
ファイアーエムブレムシリーズをプレイしているファンならばニヤリとできるポイントだ。

とは言え、全体的にはFE成分は薄く、せっかくのコラボレーションを十分に活かし切れているとは言い難い。
根幹となるミラージュと言う設定にしても「FE」という作品である必然性はなく、他作品でも成り立ってしまうのだ。
良く言えばFEを知らない人でも楽しめるのだが、悪く言ってしまうとFEとコラボする必然性が感じられないのは勿体ない。

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現代的な要素をふんだんに取り込んだ要素

本作は現代(特に2010年代前半)の日本が舞台であるため、現代的なツールが様々に登場する。
代表的なものはSNSのようなツールを利用した「TOPIC」だ。
WiiU版ではゲームパッドの画面上に表示され、Nintendo Switch版では通常のGUI的に表示される。
TOPICのメインの利用方法はストーリーのあらすじとしての機能なのだが、全ての流れを網羅している訳では無い。
そのため、時間をおいてプレイすると次に何をすれば良いのかわからないケースも考えられる。また、オートセーブが無く全滅すると最後のセーブ地点にまで戻されるため、長時間セーブしなかった場合にはどこまで戻ってしまったのかがあらすじだけでは曖昧になってしまう事も多い。
本来の機能としては十分な役割を果たしていないが、TOPICは様々なタイミングで各キャラクターからの会話が追加されるため、キャラクターの生活感などを感じさせてくれるストーリーテリングとしての良いアクセントとしては寄与している。

TOPICの他にもボーカロイドをイメージした「Tiki」という設定も現代的な要素の代表格だろう。

 

Encore

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EXストーリー

Nintendo SwitchのEncore版での追加シナリオとして「EXストーリー」が用意されている。
キャラクターの更なるサイドストーリーといった内容であり、ボイスも新たに追加されている。
EXストーリーのダンジョンでは新衣装が入手できるなどの特典も存在する。

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左:WiiU版、右:Nintendo Switch

WiiU版とNintendo Switch(Encore)版ではストーリー表現の一部に差異が散在する。

Nintendo Switch版であるEncoreは北米版をベースとしており、北米版の改変内容がそのまま適用されている。
変更内容は衣装だけでは無く、セリフに関しても変更が適用されており、良く言えばWiiU版とは違う点を楽しむ事もできる。
しかし、この改変内容は大きなマイナスとまでは言わないが、ストーリーの説得力あるいはキャラクター性とマッチしておらず若干の違和感を感じる演出になってしまっている部分も出ている。
それはヒロインである織部つばさが水着となるシーンだ。
上図がそのシーンの一部となるが、子犬のような性格をしたつばさが撮影に対しての恥ずかしさや緊張する理由が北米版の衣装では説得力を少々落としているように思える。
その上に、根本的にキャラクターとマッチしている衣装だとも感じにくい。

各国のレーティングに対応し、なおかつ投入可能なリソースを天秤にかけた結果の処置だと言うのは十分に理解できるのだが、ユーザーファーストとは言い難い内容ではある。

 

システム

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仲間の絆で畳み掛けるセッション

幻影異聞録のバトルシステムではペルソナ系列のシステムがベースとなっている。
戦闘はターン制となっており、基本的には速さ順に各キャラクターが行動をしていく。
そして敵(自分もだが)には弱点が設定されており、その弱点を突いた攻撃をする事で攻撃側にメリットが発生する仕組みになっている。
RPGとしては比較的クラシックでオーソドックスな理解しやすいシステムだと言えるだろう。

本作の戦闘で特徴的なのはその弱点を突いた際に発生する「セッション」だ。
セッションは上図をご覧いただけると雰囲気が伝わるかも知れない。
まず最初に起点となる弱点を突く攻撃を行う。すると、それに呼応してセッションが発動し味方キャラクターが追撃を行ってくれるのだ。
キャラクターの育成が進めば戦闘に参加していない控えのメンバーもセッションに参加できるようになり非常に多くの追撃が発生する。
また、Encore版では特定の追加ダンジョンを進行する事によって非戦闘員もセッションに参加してくれるようになるため、更に多くの追撃が発生するようになる。
戦闘非参加のメンバーでもしっかりと活躍の場が用意されているのは「チームで戦っている感」を演出する嬉しくなるポイントだ。
他にも、セッション発生時にはキャラクター間で短い声掛けが行われるため、パーティー間の関係性を演出する事にも一役買っている。
行うこと自体は敵の弱点を突くと言う単純なものではあるのだが、数多くの連撃を行う爽快感と仲間と協力して戦う共闘感の2つを同時に生み出すセッションは非常に素晴らしいシステムだ。
なお、Encore版ではセッションのモーションを簡略化させて戦闘テンポを向上させるクイックセッションが用意されている。
クイックセッションは戦闘中にいつでもON/OFFが行われるため、じっくり見たい時にだけONにするなどが行いやすく配慮が行き届いている。

キャラクターの育成サイクルが比較的早い点もプレイのモチベーションに繋がりやすい。
本作は武器からスキルを習得するようなシステムなのだが、1戦闘でもスキルを覚えていく事も多い。
そして新しいスキルを覚えたかと思えば、次にはレベルアップするなど、早いサイクルで目に見えて強くなっていくため、サクサクと進行している印象を与えてくれるのだ。
また、既に同じスキルを持っていると「+1」のようにインクリメントされスキルの効果が増強される。
物語が進めば同じ武器を何度も作成する事も可能となるため、スキルを習得する楽しみが減る事もほとんど無いだろう。
ただし、キャラクターのスキルは並べ替えが行えないため視認性の向上が行えないのは痒い所に手が届いていない。

キャラクターの成長要素としてはFEシリーズではお馴染みの「クラスチェンジ」も存在する。
クラスチェンジは特定のアイテムを使用する事で行う事ができ、ステータスの向上や作成できる武器の数が増加する。
クラスチェンジでキャラクターが強くなることはRPG特有の魅力があるのだが、クラスチェンジを行うとキャラクター(ミラージュ)の見た目の個性が失われてしまい、一見するとモブ敵のようにすら思えてしまうのは少々残念だ。
クラスチェンジしても見た目の個性はある程度は残して欲しかった所だ。

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運要素が強いデュオアーツとアドリブパフォーマンス

本作の戦闘ではデュオアーツとアドリブパフォーマンスという華やかな要素も戦闘を鮮やかに彩っている。
デュオアーツやアドリブパフォーマンスが発動するとキャラクターの歌やパフォーマンスと共に攻撃が行われる豪華な演出が特徴的だ。
なによりも戦闘中に歌が挿入されるのはテンションを高めてくれる。

デュオアーツは端的に書くとセッションの最後に確率で発動するものなのだが、発動すれば大ダメージを与えるだけでなく、再度セッションが発生して連撃が発生する。
再度発生したセッションでもデュオアーツが発動する可能性があり、そうなれば一回の攻撃で20コンボ以上の大連鎖攻撃にもなる。
演出も威力も非常に強力だ。

アドリブパフォーマンスはスキルを使用した際に確率で発動するものだ。
こちらもデュオアーツ同様にキャラクターの歌やパフォーマンスなどによって強力な攻撃を行うものとなっている。

しかし、デュオアーツとアドリブパフォーマンスを戦術や戦略に組み込む事が出来ないのは残念でならない。
上記に記載している通り、この2つの要素の発動条件が確率に左右されるためだ。
「戦闘中に累計n回セッションを発生させると確実に発動する」「○○を行うたびに発動確率が上昇していく」など大小なりともプレイヤーが制御可能な形に落とし込む事で戦術性や戦略性を持って利用できるようにして欲しかった所だ。
豪華な演出で強力な攻撃を行うというご褒美のような攻撃手段だが、それがシステム全体のどこにも依存しない孤立した要素になってしまっているのは勿体ない。

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活かし切れていない要素

本作では活かし切れていない勿体ない要素も散見される。
どれも「勿体ない」というレベルであるため、マイナスの要素とまではならない事は留意されたい。

本作はFEとのコラボレーションタイトルでもあるが、「ストーリー」の項でも述べた通りFEとコラボする必然性が薄い。それはバトルシステムでも同様だ。
FEシリーズと言えば聖戦の系譜からではあるが「三竦み」が代名詞的なシステムとして知名度が高い。
それを踏襲し、敵のデザインは「剣を持っていれば槍に弱い」など視覚的に弱点が把握できるようになっている。
しかし、この活用方法は表面的な非常に薄いものであり、コラボレーションを見事に活用できているとはお世辞にも言い難い。
作品としてはしっかりと成立しているため問題は無いのだが、「FEとのコラボレーションでなければ実現しなかった」と言えるものにまで昇華していれば更に良かっただろう。

通常攻撃の価値が無い点も勿体ない。
本作の主軸のシステムは前述の通り弱点を突いて発動させるセッションなのだが、セッションが発動するのはスキルで攻撃した時のみなのだ。
通常攻撃では何も発生する事は無い。
ダメージも低いため、スキル発動のために必要なEPが枯渇している時にしか利用する事は無い。
だが、根本的にEPはふんだんに用意されているため枯渇させようと思わなければ、そのような状況になる事はほとんど無いと言っても良い。
通常攻撃をコマンドの選択肢に入れるのであれば役割を持たせるべきだったように思う。

ガードも同様に価値が薄い。
ターン制である本作のような戦闘では、「強力な攻撃が来そうだ」といったメッセージなどで敵が特定のターンに強力な攻撃を発動する事がわかっているような状況でも用意しなければガードと言う行動を選択する事は考えにくい。
また、ガードを行うとEPが回復するのだが、その回復量が2固定である事も存在意義の無さを助長している。キャラクターのEP最大値は200や300は当たり前で、消費するにしても10や20といった単位だからだ。
せめて最大EPの10%回復など成長しても恩恵があるようにして欲しかったと言える。
ガードを使用を促すようなお膳立てがされていないのは勿体ない。

 

グラフィック

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現代&ファンタジーの日本

幻影異聞録では現代の渋谷や新宿といった街並みを再現している。
街では様々な広告が表示されているのだが、物語の進行に応じて広告内容に変化があるなどキャラクターの成長や物語の進行を感じさせてくれる。

渋谷や新宿などのフィールドはやや狭いが窮屈に感じるような事は無く、ショップなどに回るのも苦にならない広さと言った印象だ。
また、ダンジョンはフィールドよりも広く設定されているが、冗長に感じない丁度いい程度の広さであるため良いバランス感覚で作られている。

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華やかなGUI

煌びやかなGUIや戦闘フィールドの華やかさも素晴らしい。
全体的に明るい黄緑をベースに統一している点も特徴的だ。

なお、メニューの各種項目名は北米版準拠となったのか、WiiU版とNintendo Switch版とでは異なっているようだ。

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良く動くキャラクター達

会話シーンではキャラクターの3Dモデルのリアクションによって行われる。
また、戦闘中アニメーションは良く出来ている。

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ダイナミックなカメラワーク

キャラクターの各種アニメーションも良く出来ているが、戦闘における攻撃(特にセッション)のカット割りが良く出来ている。
味方キャラクターと敵キャラクターを画面に収めつつも、ダイナミックに見えるように煽りや遠近のコントラスト使用したカメラワークを行っている点が素晴らしい。

 

サウンド

曲はとにかくポップで明るいトーンで統一されているものが多い。
劇中歌はメロディ自体も良いが、キャラクター性を歌い上げたものにもなっているため作品・キャラクターにも非常にマッチしている。
街頭では宣伝CMのような声が聞こえるなど、世界観を構築させる事に成功している。

ポップな通常戦闘曲「SESSION!!!」

緊迫したボス戦闘曲「絶対に負けられない!」

キャラクターの成長を感じさせる明るいFEのメインテーマアレンジ「ステップアップ!」

強大な相手との対峙を感じさせる「導かれし運命」

強いメロディを持ちながらも霧亜の内面性を歌い上げた「Reincarnation」「迷路」

つばさの内面性と成長を歌い上げた「Feel」「友達以上、恋人未満。」「Fly ~君という風~」

ポップでアップテンポな「ドリーム☆キャッチャー」

物語の最後に相応しい明るく感動的な歌詞が非常に印象的な「Smile Smile」

本作の劇中歌はどれも非常に素晴らしく印象に残るものばかりだ。

また、ボイス関連においても戦闘中のセリフの多さがパーティーの雰囲気を作り上げている。物語の進行によっても戦闘中のセリフ内容も変化する事があるためこだわりが感じられる。
その他、衣装によっても専用のセリフが発生するケースもある。

 

総評

幻影異聞録♯FEはバランス良く整えられた一作だ。

共闘感を演出する戦闘はシンプルながら華やかさがあり面白い。
ダンジョンの長さは把握しやすく、攻略もしやすい適度な広さとなっている。
ストーリーや戦闘中に挿入される印象的な楽曲の数々は曲としての良さを確立しつつもキャラクター性を歌い上げており、作品とのシンクロを果たしている。
そして芸能界と言う煌びやかな世界で純粋に成長していくキャラクター達からは元気を貰うことが出来るハズだ。

また、サイドストーリーやサブクエストを網羅しつつクリアしても50時間前後であると言う点は本作を最後まで飽きずに楽しむことが出来る丁度良いボリューム感でまとめ上げられている。
FEというシリーズとコラボする必然性が薄い内容になっているのは勿体ない所だが、それは本作の質の良さに大きな影を落とすようなものではない。

 

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