【レビュー】ファイアーエムブレム 封印の剣

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人の可能性を信じる

ファイアーエムブレム 封印の剣(以降、FE封印の剣)は筆者が初めて知ったファイアーエムブレム(以降、FE)シリーズタイトルだ。
理由は単純で大乱闘スマッシュブラザーズDXにて登場したロイがきっかけでファイアーエムブレムという作品に興味を持ったのだ。恐らく当時はそのような人も多かったのではないかと思う。

今回はゲームボーイアドバンス(以降、GBA)というハードで発売されたFE三部作の最初の一作となったFE封印の剣をレビューしていきたい。

なお、今回はWiiUバーチャルコンソール版でプレイした際のスクリーンショットとなる。GBA版との違いは無いとは思っているが、念のため留意されたい。

 

 

ストーリー

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ロイを中心として展開していくストーリー

FE封印の剣のストーリーは人と竜が存亡をかけて争った「人竜戦役」から約1000年が経過したエレブ大陸を舞台とする。
平和な日々が続いていたが、突如として「ベルン王国」がエレブ統一のために侵略戦争を行い始める。
主人公であるロイは領主達の同盟で成り立っている「リキア同盟」に参加するフェレ候エリウッドの嫡男で、病床のエリウッドの代行としてベルン王国に対抗していく。
なぜベルン王国が侵略を始めたのかなど含め、各国の情勢が進行とともに徐々に語られ、理解できるようになっている。

FEシリーズでは「幼馴染ヒロイン」や「赤緑騎士」「キルソード持ち剣士」「ペガサス三姉妹」などシリーズの”お約束”とも言える人物構成になる事は度々あるが、本作ではそのような伝統的な設定が特に色濃く意識されている。
そのためFE封印の剣はFEシリーズの「紋章の謎」のリブートにも近い作品になっているのは特徴的と言えるだろう。

主人公であるロイはFEシリーズの中でも特に若い設定になっている点も特徴だ。
これは比較的若年層が多いGBAと言うハードでリリースされたことが大きな要因では無いだろうか。
そんなロイだが、前漢の劉邦のような人物像で描かれる事が多いFEシリーズの主人公達の中にあって、物語では若さを感じさせない後漢の劉秀のような聡明なリーダーとして描かれているのは本作が持つ魅力の1つになっている。
ロイ以外が死んでも物語が進行すると言う本作のシステム上の都合が関係してか、他シリーズであれば軍師ポジションのキャラクターが助言をしたりする場面であっても、そういった役割を全てロイが担っている。
決断を行うリーダーでありながら、聡明な軍師のような役割もこなし、常に正道を突き進むロイの姿は先頭に立つ者として理想的な存在として映るだろう。

その他の関連する部分も紹介したい。
シリーズではお馴染みの要素だが、フィールドマップには民家などのエリアが設定されている。民家を訪ねる事でアイテムが入手できることがあるほか、世界観や世界情勢の設定を聴くことが出来るため、本編だけではわからない部分を補完する役割も担っている。攻略という側面以外にも、より深く世界観を知りたいという場合には積極的に訪問すると良いだろう。

セーブデータを開始すると章の冒頭から開始されるため、今がどういう状況なのかを復習しやすくなっている。
前回のプレイから時間が空いてしまった…なんて時にも、少なくとも現在の情勢は把握できる事だろう。
もちろん。これらの説明や会話はワンボタンでスキップが行えるため、煩わしくなる事もない。

また、本作のユニークな試みとしてメディアミックスのような展開が成されていた点もここで挙げておきたい。
本作は「FE覇者の剣」というFE封印の剣の外伝的作品がマンガとしてリリースされており、ゲームとマンガとでコラボレーションがされているのだ。
マンガである覇者の剣でもロイ達が登場し、FE封印の剣においては覇者の剣の登場人物であるアルやガント、ティーナの名を冠した武器が手に入る。
メディアミックス自体が徐々に増えていた時代であり、FEシリーズとしても珍しい試みでもあり、非常にユニークなポイントだ。

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最終盤でのロイとゼフィールのやり取りは必見だ

本作において最も見応えのある会話がなされるのは最終盤においてのベルン王国の国王ゼフィールとロイのやり取りだろう。
このやり取りは本作で最も観るべきポイントだ。

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キャラクター同士の関係性を補完する「支援会話

本作以前に存在した「支援効果」という要素が、本作ではキャラクター同士の関係性を描く「支援会話」というシステムとして導入され、キャラクター間の表現が強化されている。
支援会話ではキャラクター間の関係性やキャラクターの掘り下げを表現しており、本編だけではわからないキャラクターの生い立ちや立場、各国の文化などを知ることができ、世界観に厚みをもたらしている。
その他、支援を発生させたキャラクター同士が近くにいると、両者の能力値にバフが発生するようにもなっているため、キャラクターの仲が深まるだけでなく攻略にも役立つシステムである。
この支援会話システムは後作にも引き継がれていくFEシリーズの代名詞の1つとも言うべきものとなっている。

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より良くできるように思えるポイント

基本的には丁寧に作られている一方で、もっと良く出来たのではないかと思えるポイントもいくつか存在する。

1点目はチュートリアルだ。
本作には専用のチュートリアルモードが存在し、その内容はオスティアに留学していたというロイの設定が活かされたものになっている。
しかし、このチュートリアルで残念なのはストーリーの本編中に用意されているのではなく、タイトル画面にある「エクストラ」を選択した際に表示される項目であると言う点だ。
これではせっかく用意されているチュートリアルも存在自体に気が付きにくい。
チュートリアルの内容は作品の設定を活かしているため、そのまま本編自体に組み込んでしまって良かったのではないだろうか。

2点目はロイ以外のキャラクターの本編での存在感だろう。
本作は前述している通りロイ以外が死亡しても進行可能になっており、物語の進行はロイが中心となっている。
そのため、物語中では主人公ロイが全編を通じて非常に聡明に描かれる一方で、それ以外の味方キャラクターは支援会話を除いてしまうと登場する章をまたいで活躍する場がほとんど無いのは寂しい所だ。
「劉秀が非常に聡明であったために、優秀な部下たちが目立ちにくかった」とは諸葛亮による劉秀の評だが、このFE封印の剣のロイとそれ以外のキャラクターも正にそのような関係となってしまっている。
容量などリソース面の問題もあったのかも知れないが、キャラクターが生存していた場合に追加セリフが発生させるなど、もっと物語全体に様々なキャラクターが関与すれば更に良くなったに違いない。

 

システム

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難しすぎず、簡単すぎないSRPG

FE封印の剣SRPGタイトルであり、基本的に過去のFEシリーズを踏襲した要素で構成されている。
キャラクターをユニットとして扱い、ユニットを将棋のような形で操作して盤面を有利に進めていくのが基本的なゲームプレイだ。
全体として戦闘可能なマップ数は限られており、敵の数や出現場所などがランダムになる事も無いため詰将棋のような側面もあるにはあるが、ユニットは戦闘する事でレベルアップしていき、使い込んでいけば自然と強くなっていくRPG的要素も特徴だ。
レベルアップにしても能力値の成長率の傾向は設定されているもののランダムであり、思いがけないキャラクターが大きく成長する可能性を秘めている。
それによりプレイヤー毎に、またはプレイ毎に使い込むユニットに変化が生まれるようになっており、クリア後などに友人たちと「○○がめちゃくちゃ成長して凄い頼りになった」と話のタネになるナラティブがFEシリーズが持つ魅力的な部分と言えるだろう。

聖戦の系譜」より登場した剣・槍・斧の”三竦み”も健在だ。
三竦みにおいて有利な相性で戦いを挑めば、攻撃の命中率や回避率に有利な補正がかかるため、敵ユニットの装備武器を確認して有利ユニットを仕向けて対応するのがベターだ。
とは言え、本作では全体的には剣士が非常に強力な印象だ。
剣と言う武器自体が命中率が良いという側面もあるのだが、剣士がクラスチェンジによってソードマスターとなるとクリティカルヒットのようなものに相当する”必殺”を高確率で発動するのがその要因だろう。
高めの命中から必殺を連発するため、攻略においては非常に頼りになる存在となる。

マップ上には特定条件で仲間になるユニットが登場する事も多い。
これらの仲間になるユニットは仲間になるためのヒントになる会話や関係するユニットが示唆される事が多いが、初見プレイでは仲間にするのは難しい場合も多いだろう。

また、特定条件を満たしていれば外伝マップに行くことが出来る。
こちらも事前にセリフで示唆される場合もあるが、外伝進出に失敗したタイミングでそれらしいセリフが発生して外伝の存在を知るケースもある。
そのため初見では条件を達成するのは難しいケースもあるだろう。プレイには工夫が必要だ。
なお、本作のストーリーで真エンディングを迎えるためには全ての外伝に進出する事は必須条件となっている点は注意されたい。
この外伝マップは本編マップと比較するとマップ自体にギミックが設定されている事が特徴的だが、それによって難易度が大きく変わるという事は余りない。

本作におけるマップ攻略の全体の難易度は難しすぎず、簡単すぎないSRPGとして丁度良いバランスと言えるだろう。
全体的な傾向として回避主体と言う"運"に任せた立ち回りが必要になるマップがあるのは賛否がでる可能性はあるが、三竦みや「ストーリー」の項で記載したキャラクター同士の支援などのシステムを活かす事で、偶然を必然に変えて攻略するように設計されていると捉える事はできる。
レベルアップを含めて、システムを理解さえしていれば攻略するのは問題ないハズだ。

ゲームをクリアすると得点として高難易度のトライアルマップが解禁される。
トライアルマップはクリアデータを使用して挑む事になるため、本編中にキャラクターをいかに強力に育成できるかも重要となる。
このトライアルマップは本編のクリア回数に応じて敵ユニットとしてのみ登場したキャラクターなどの特殊なキャラクターをユニットとして使用する事が可能になる。

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主人公のクラスチェンジが遅すぎるのは考えものだ

本作のゲームバランスにおいて最も困った事になるのは主人公であるロイのクラスチェンジするのが遅すぎる事だ。

端的な説明となるが、各キャラクターは特定のアイテムを使用する事でクラスチェンジが可能で、クラスチェンジを行うとより強くなる。
普通の仲間キャラクターであれば宝箱などに入っているクラスチェンジ用アイテムでクラスチェンジが可能となるが、主人公ロイの場合にはストーリーを進行させないとクラスチェンジが行えない。
しかし、そのクラスチェンジが最終盤なのは勿体ないポイントだ。
ストーリー上では魅力的に描かれるロイだが、クラスチェンジによって能力が強化された状態をたくさん堪能できない。
それどころか、最終盤までクラスチェンジ前の状態で出撃しなくてはならないため、ロイが強く成長できなかった場合にはお荷物になりかねない。
物語の展開として仕方がない面があるとは言え、中盤で1回目のクラスチェンジ、最終盤で2回目のクラスチェンジと言った具合に、ロイのみクラスチェンジを複数段階にするなど配慮が欲しかった所だ。

 

グラフィック

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軽快に、そして躍動感のある戦闘アニメーション

SRPGの本作であるが、戦闘のドットアニメーションは躍動感があり非常に優れている。
攻撃がヒットした際にはヒットストップの演出もされるため、さながらアクションゲームのような爽快感も感じさせてくれる。
特に上図の封印の剣や神将器(フォルブレイズなど)による攻撃モーションは非常に派手でカッコいい。
これらの戦闘アニメーションは設定によりスキップも可能なため、サクサクと進めたい場合にはOFFにしてしまうのが良いだろう。

マップ上のマップチップはSRPGとしては標準的で、視認性と機能性を重視したものとなっている。

 

サウンド

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クリア後に解放されるサウンドルーム

FE封印の剣は全体的に明るい調子の音楽になっている。
それは特に自軍関連のものがその傾向が強い。これも若年層をターゲットとしている事が主な要因となっているだろう。
筆者が特に気に入っている楽曲をいくつか紹介したい。

自軍フェイズに流れる「あの空の向こうに(ロイの旅立ち)」

希望に満ち溢れた曲調が終盤に流れる事で感動を感じる自軍フェイズ曲「新たなる光の下へ(ロイの勇気)」

自軍優勢時に流れる「Winning Road(ロイの希望)」

コミカルで可愛らしい「キャス」

これらのBGMはストーリーをクリアする事で解放される「サウンドルーム」というものでいつでも聴く事が出来るようになるため、ゲーム音楽ファンにはありがたい要素だ。

 

総評

ファイアーエムブレム 封印の剣はストーリーと難易度が共にバランス良くまとめ上げられた素晴らしい作品だ。

SRPG初心者であっても比較的遊びやすいだけでなく、支援会話という要素によって起用すればするほどにキャラクターに愛着がわきやすい構造も構築されている。
また、ストーリーで大活躍し、クラスチェンジがとにかく遅い主人公ロイは本作において終始目立つ存在であると言えるだろう。

 

外部記事

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【レビュー】ASTRAL CHAIN

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1コントローラー2コントロール

ASTRAL CHAINはダイナミックなアクションゲームで高名なプラチナゲームズが開発したタイトルだ。
本作はプラチナゲームズ田浦貴久さんが初めてディレクションを担当する作品だ。
そういう事もあってかビジュアル面の方向性など目に見えて今までのプラチナゲームズとは異なる雰囲気が感じられるのも特徴的だろう。
事前に公開された動画では1人で2キャラクターを操作するプレイと推測できるものとなっており、その独特な操作方法も実際にプレイしてみたくなるようなものだった。

今回はASTRAL CHAINのレビューをしてみたい。

 

ASTRAL CHAIN(アストラル チェイン) -Switch

ASTRAL CHAIN(アストラル チェイン) -Switch

  • 発売日:2019/08/30
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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日本のアニメや特撮のような演出

本作の世界観自体はSFやサイバーパンクと言った要素で構成されているものの、ストーリーは少しだけ懐かしい息吹を感じさせるアニメテイストだ。
まずOPでは歌が挿入され、アニメのような演出でキャラクターの名前や声優の名前が表示される。
そしてストーリー自体にしても2000年代前半の少年マンガのような進行や演出で展開される。

本作の主人公選択は少しだけ珍しい手法を取り入れているのが印象的だ。
プレイヤーが操作する事になる主人公は男性と女性の好きな方を選ぶことが出来るのだが、選択されなかった片方は弟あるいは妹として登場するのだ。
弟妹は物語においても非常に重要なポジションであり、よく喋り、出番も非常に多い。
対して主人公として選択したキャラクターは基本的に無口となるため、その点は注意して選択した方が良いだろう。

物語の導入は非常にオーソドックスと言える「マイナスから始まるもの」が使用されており、本作においては「父親に相当するキャラクターを失う」こととなる。
また、本作の世界は人間の存続が危機に瀕しているなど、世界設定自体はかなり過酷な状態である。
しかし、物語のトーン自体が暗くなりすぎる事は無く、まさに少年マンガを観ているかのような気分にさせてくれる。

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ゲームプレイと紐づいたストーリー

本作の主人公は警官であり、様々な事件を章形式でクリアしていく形となる。
物語の描き方は「SFの警官」と言う設定を活かしたゲームプレイによってストーリーを描いている。

章は大雑把に説明すれば「捜査パート」と「戦闘パート」からなり、捜査パートでは街などで人々から聴き込みをしたりして情報を集めて何があったのか紐解いていく。
更にSF・サイバーパンク的要素として「アイリス(詳細は後述)」という視覚に情報を表示するAR / MR的なシステムが使用でき、それも駆使して捜査を進めていく。

また、「レギオン」という異世界の生命体を使役して捜査を行う点も忘れてはならないポイントだ。
ギオンは本作の要ともいえる存在で、プレイヤーキャラクターと一心同体の存在だ。
ギオンは複数の個体が存在しており、それぞれに特徴が異なる。
それらの特徴を駆使して戦闘を行う事がメインであるとは言えるのだが、その特徴は捜査をする場合にも有効に活用されるケースも多く用意されている。

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終わった感のないストーリー

しかし、本作がストーリーだけでも満足できるかと言うとそういう訳にはいかない。
そう感じる最大の理由は「本作をプレイしただけでは全貌が掴めないから」という点に尽きるだろう。
本作のメインシナリオを全てクリアしても、詳細な真相や設定が全て理解あるいは推測が可能なようにはなっていないのだ。
本作は「続編も可能なように懐深い構造に作られている」ようなのだが、それがかえって「ちゃんと終わってない感」に繋がっているように思えてならない。

少しばかり些細なポイントにも目を向けたい。
本作では前述の通り選択した主人公が全くと言って良い程に喋らない事になってしまうのは残念に思えた。
特に筆者の場合には女性主人公の声を当てている安済知佳さんの演技が以前よりかなり好みであったために女性主人公を選択したのだが、これが全くと言って良い程に喋らないために選択でかなり損をした気分になってしまった。
「喋らない主人公」というのはビデオゲームにおいて一般的手法であるが、選択したキャラクターと選択しなかったキャラクターが共に登場するように設計した本作ではその扱いに差が生まれてしまっており少々ではあるが相性が悪かったような気がしてならない。

また、シナリオが進行する会話のたびにキャラクターが操作不可状態となる点も地味ながら少々めんどうな仕様だ。
移動しながら説明して貰えればそれで良いのだが、何故か足を止めてセリフを聴かなければならないのはゲームプレイテンポを落としてしまっている。
当然、全て会話が移動しながら展開される必要は無いが、アクションのテンポを落とさない程度には移動しながらの会話を主体として欲しい所だった。

 

システム

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ステージクリア制のゲームプレイ

本作は基本的に警察庁をハブにして、事件が発生した場所に移動するような形式となっている。
「ストーリー」の項でも述べているが、ゲームプレイシーケンスはステージクリア制となっており大まかに捜査パートと戦闘パートに分かれる。
ステージではフィールド(街など)を歩き回り、人々から話を聴いて捜査パートを進行させるほか、サブクエストが豊富に用意されている。
サブクエストは様々なものが存在しており、戦闘が発生するものも存在するが、中には専用のちょっとしたミニゲームのようなものも存在するなど非常に作り込まれている。

しかし、好きなフィールドをいつでも探索することはできない点は少々残念だ。
以前のステージを再度プレイする事は簡単に出来るとは言え、自分の好きなタイミングで街に遊びに行く事が出来ないのは少し寂しい。

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1人で2キャラクターを操作する独特なプレイフィール

本作の最も特徴的なポイントはそのアクションだ。
「1つのコントローラーで2キャラクターを操作する」という独自アクションは新感覚で唯一無二だ。
プレイヤーキャラクターとレギオンの間は「鎖(チェイン)」で繋がっており、この鎖を駆使する事でも様々なアクションが行える。
ギオンはZLボタンを押す事で右スティックで移動させる事が可能になる(あくまで移動のみで、攻撃が出来るようにはならない)。
そのため、左スティックでプレイヤーキャラクターを、右スティックでレギオンを操作するような形となるのだ。
このユニークな操作で行える代表的なものは、上図のように敵を囲むように操作する事で鎖で拘束する行動だ。
こうする事で敵は無防備となり、その隙に連続攻撃を叩き込む事が出来る。
この他にも鎖を活用したアクションが用意されており、1つのコントローラーで2キャラクターを操作すると言う特性を活かして立ち回るゲームプレイは他では味わいようが無い体験だ。

また、その他にも敵の攻撃のタイミングで上手に回避が行えると専用の攻撃手段でカウンターを発動させられるなども可能だ。
この回避は一見・一聴するだけでは難しいが、敵が攻撃する際に特徴的な光や効果音が発生するケースも多いため、それを目安に回避を行う事で発動できる。
上手くなればなる程にキャラクターの動きが洗練されていくのはアクションゲームとして爽快なポイントを押さえていると言えるだろう。

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ダイナミックなボス戦達

本作で特に迫力があるのは各ステージの最後に現れるボスの存在だろう。
ボスによっては「どう戦って欲しいのか」が伝わりにくくなっており対処に困惑するケースも存在するが、見応えのある巨大な体格からド派手な攻撃を仕掛けてくるため戦っていて非常に楽しい気持ちにさせてくれる。

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ユニークなゲームプレイとトレードオフとなった要素

本作の特徴であり、長所であるレギオンだが、そのレギオンという存在が短所になっている事も多い。

まず地味に気になるのはレギオンジャンプだ。
ギオンジャンプはレギオンが鎖を引っ張る事でプレイヤーキャラクターをレギオンの位置に表示されたマーカーの位置にジャンプさせてくれるアクションとなっている。
しかし、レギオンコリジョン(当たり判定)がある事が影響しているのか、根本的にマーカーの位置に正確に着地させてくれていないのか、レギオンジャンプ時に表示される着地位置マーカーから微妙にズレてしまう事が多い印象を受けた。
そのため崖のギリギリでレギオンジャンプをしてしまうと、崖から落ちてしまうような事がままあったのだ。
素早い操作でレギオンジャンプを行いたい場合にも、崖のギリギリを狙わずに十分に余裕を持った位置にジャンプする必要がある。

そして、本作で最も気になる点を挙げるとするならば「カメラとロックオン」だろう。
ASTRAL CHAINではプレイヤーキャラクターとレギオンの2キャラクターを操作する事になるうえ、右スティックではカメラ位置では無くレギオンを操作するケースも存在するため、カメラワークに難が出る事は必然性があり想像に難くない。
最初にカメラワークに関してだが、プレイヤーキャラクターと呼びだしたレギオンが共に画面内に映るように自動でカメラ制御されているため、戦闘中に快適と感じるカメラワークと微妙にズレがある。
酷いと言うレベルでは無いものの、若干の視認しにくさ覚える所だ。

次にロックオンだが、こちらは挙動の仕様が良いとは言えない。
上述通りカメラは少々見えにくいため右スティックで位置を変更したいと思う事が多いのだが、敵をロックオンした状態で右スティックを一瞬だけ倒すとロックオン相手を変更する動作となってしまうのだ。
この仕様のせいでカメラ位置の微調整をしたいだけであるのにロックオン先が変更されてしまい戦闘中に困惑する事が多いのは残念でならない。

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サイバーパンク感を演出する”アイリス”

本作ではサイバーパンク感を強める「アイリス」 というシステムが存在する。
アイリスは様々な状況証拠から現場で何が起こったのかを推測・逆算して視覚化する事が可能なアイテムだ。
遷移はシームレスで自由にいつでもどこでも利用する事ができる。
建物の内部や壁の向こう側にいる相手を認識する事も可能で、SFを感じるストーリーテリングとして機能しているだけなく、ゲームプレイにおいて非常に重宝するものになっている。

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潜入ミッションも存在する

ストーリーのミッションの中には敵に見つからないようにする潜入ミッションも用意されている。
アイリスを使用する事で敵の視界を把握する事ができるほか、レギオンを上手く活用すれば相手を無力化できるため、難易度自体はそこまで高く無いが戦う以外のものも用意されており楽しめる。

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細かな遊び心

本作では細かな遊び心が用意されている事も忘れてはならない。

空き缶をゴミ箱に入れたり、猫を保護したり、バイクに乗ったシューティングゲームのようになったり、アイスクリームを運んだりと専用のミニゲーム的なものが用意されており、このような細かな遊び心が本作へのこだわりを感じさせる。

 

グラフィック

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サイバーパンク的な街並み

サイバーパンク的演出のライティング表現が印象的な街並みが魅力的だ。
特にニューヨークのタイムズスクエアをモチーフにしたと思われるハーモニースクエアなどは非常に魅力的な街に感じる事だろう。

キャラクターのアニメーションも非常にこだわりが感じられ、例えば移動中にゆっくり反対方向に向き変更をすればキャラクターがゆっくりと振り向くような動作したりする。
また、キャラクターの動きにはブラーをかけてダイナミックにみせる演出も行われている。しかし、動画では映える演出なのだが、スクリーンショットではブレて観えてしまうトレードオフの演出だ。

そのほか、処理負荷軽減のため遠景のモデルはフレームレートを落とす描画の工夫を行っているようだ。

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キャラクターのモデリングも悪くない

キャラクターのモデリングも比較的良く出来ている方で、特にボディラインは美しい。
私服のバリエーションがもっと豊富に存在していると嬉しかったが、少々贅沢な要望かも知れない。

 

サウンド

ASTRAL CHAINの音楽はカッコいい曲が揃っているが、ステージ毎に使いまわされる曲が少ない豪華な仕様が逆に1曲1曲の印象を薄くしてしまっている気がしてならない。
本作に限った事では無いのだが単純接触効果をもう少し狙っても良いのでは無いだろうか。

本作の中で最も聴くため印象が強い「Task Force Neuron」

クライマックス感の強い「Jena - Rebellion and Salvation」「Jena - Catastrophe」「Noah Prime」

主人公の性別により変化する「Dark Hero」

そのほか、本作のボイスは音声の有無でパクがあるのみで、リップシンクがないのは少々残念だろうか。

 

総評

ASTRAL CHAINが実現するプレイフィールは唯一無二だ。

1つのコントローラーで2人分のキャラクターを操作する独特な感覚は他では味わいようが無い体験になる事だろう。
しかし、そのユニークさが生み出す弊害は気になる所だ。

ストーリーは少々勿体ない部分もあるが悪いものでは無く、キャラクターのモデリング・アニメーションそしてロケーションはとても良いものに仕上がっている。
何より、ストーリークリアまでが20時間程度であるのは非常に丁度良い塩梅だ。
これより短ければ物足りないし、これより長ければ冗長と感じられたであろう。
この辺りのバランス感覚は流石はアクションゲームを熟知したプラチナゲームズだと言える。

 

外部記事

アストラルチェイン開発者ブログ : PlatinumGames Inc. Official WebSite

ASTRAL CHAIN Gameplay Pt. 1 - Nintendo Treehouse: Live | E3 2019 - YouTube

ASTRAL CHAIN Gameplay Pt. 2 - Nintendo Treehouse: Live | E3 2019 - YouTube

Three Things You Might Not Know About ASTRAL CHAIN - E3 2019 - YouTube

『ASTRAL CHAIN』には3部作どころかそれ以上に展開できるくらいの考えがある

【レビュー】聖剣伝説3 Trials of Mana

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マナの試練

聖剣伝説3 Trials of Mana(以降、聖剣3リメイク)は聖剣伝説3をリメイクして誕生した作品だ。
本作はE3 2019にて発表されたが、筆者はその発表に驚きと喜びが同時にあった事を覚えている。
驚いた点の1点目はリメイクが発表されたこと、それ自体だ。
聖剣伝説2のリメイクである「聖剣伝説2 Secret of Mana」が必ずしも良い評判を得られておらず、筆者に至ってはPVを観た時点で購入を諦めてしまっていた。
そんな中でも聖剣伝説シリーズというコンテンツの火が絶えることなく、比較的短いスパンでリリースすると言うのは意外だったのだ。
2点目は「聖剣伝説2 Secret of Mana」とは異なる方向性のリメイクを遂げたという事だろう。
内容は原作よりもアクション性が強くなっているように見えたし、何よりも立体的になった街並みや原作の雰囲気を壊さない良質なBGMが嬉しい驚きだったのだ。
PVの時点でもモーションのモッサリ感などの気になる部分もあったものの総じてポジティブな面が多かった印象だ。

今回は大好きな原作がリメイクされた聖剣伝説3 Trials of Manaをレビューしていきたい。

 

聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ - PS4

聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ - PS4

  • 発売日:2020/04/24
  • メディア:Video Game
 
聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ - Switch

聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ - Switch

  • 発売日:2020/04/24
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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原作に忠実なストーリー

聖剣3リメイクのストーリーやイベントの進行方法、会話の内容まで原作にほとんど完全に忠実だ。
ストーリーは忠実な再現であるため筆者の「聖剣伝説3のレビュー」と類似の事を記載してしまうが、本作は「人類の闘争に巻き込まれる自然」を描いており、原作の発売当時の1990年代の時代性が如実に取り込まれている内容だ。2020年の時点においてはそのようなテーマがメディアで取り上げられる事も少なくなり、その結果として本作のストーリーのテーマにリアリティあるいは身近さを若干感じにくくなっているのかも知れない。
ストーリーが6人の中から3人を選択してパーティーを組み、そして最初に選んだキャラクターが主役として描かれる点も原作同様だ。

当然ながら原作とは異なりモダナイズされている部分も数多く存在する。
次に誰に話しかければ物語が進行するのかがマップ上などにも記載されるようになったため、原作のようにストーリー進行のトリガーを探して道に迷うような事は無くなったと言って良いだろう。

基本的には原作に忠実なストーリーだが、場面によって移動中に会話が発生する点も本作オリジナルのモダナイズポイントだ。
この会話の内容は原作の物語の補完をしつつ、キャラクター同士の掛け合いによるパーティー間の関係性が補完されている。
原作ではパーティー間でのやり取りが希薄であったため、こういったやり取りが増えているのは嬉しい限りだ。
街中では操作キャラクターを仲間キャラクターに変更する事ができないのは残念だが、その代わりに街で仲間と会話をする事ができるようになっている。
ここでも仲間の存在を補完する役割を強化しているのだろう。

また、よりストーリードリブンになったという点も原作からの変更点だろう。
原作においては好きな順に攻略できた部分がより一本道の構造になっており、上述の移動中の会話によってよりストーリー仕立てになっているのだ。

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3Dモデルになった事によるストーリー進行の違和感

原作に忠実なリメイクを施している本作だが、環境が変わった事による違和感を改善するまでには至っていない。

2Dドット時代の進行方法をそのまま踏襲しているため、3Dモデルでは若干冗長な進行に感じる部分や逆に一足飛びに感じる部分もあるのだ。
2Dドット時代の物語、セリフを3Dモデルのキャラクターがそのまま行ったため「ん?それ必要あるんだっけ?」「え?なんでそう思い至ったの?」とキャラクターに感情移入しにくく感じる部分が少なからず出ているように思えた。
省略表現主体の2Dドット時代には脳内補完が自然に行われるために成立していた部分が、3Dモデルというディティールが豊かになった表現の下では脳内補完がしにくく若干の違和感になっているのではないかと推測される。

また、同様の理由で物語全体の印象も若干変化した印象だ。
2Dドットの原作をプレイしていた際には全体的にシリアスな物語の印象が強かったのだが、3Dモデルによってディティールの向上した本作ではコミカルな印象が強くなっている。
やり取り自体は当時とほぼ同等であるため、視覚から得られる情報によって受け取り方にも変化が生じたのだと思っている。

これらの問題を解決するには原作の要素を弄らざるを得ないため、場合によっては原作の良さを壊してしまう可能性もある。
非常に難しい選択あるいはバランス感覚を要求される部分だが、もう少し踏み込んでみても良かったのかも知れない。

 

システム

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簡単ながらアクション性が増した戦闘システム

聖剣3リメイクの戦闘はボタンによって攻撃や回避を行うようになったため、よりアクション要素が増した直感性の高いモダンなものに変更されている。
とは言え、攻撃と回避の駆け引きが強い訳ではなく、原作では凶悪な火力を誇った敵の攻撃も良心的な水準に落とされているため、アクションまたはRPGの初心者向けな調整がされていると感じられる。
そのため、戦闘においてはパーティーに回復役となるヒーラーさえいれば苦戦を強いられる事は余り無いと言っても良いだろう。

戦闘中はいつでも簡単に操作キャラクターを変更する事が可能だが、仲間のAIは原作とは異なり自身が指示をしなくても攻撃や回復、補助の魔法を使ってくれるため、頻繁に操作キャラクターを変更したり、魔法の指示を出したりする事は無いかも知れない。
AIの行動パターンの傾向も変更可能で、攻撃重視にしたり、サポート重視にしたりする事が出来るため役割に合わせて変更するのが好ましい。
しかし、回復に関してはAIが実行してくれるタイミングが遅きに失する事がややある印象で、ちゃんと回復したい時にはやはり自ら操作するなりして回復を行った方が無難だ。
全体的には非常に遊びやすく変更が行われており、余計なストレスなくゲームのプレイに集中できるように構築されている。

キャラクターの育成面においても変更があり、レベルアップ時に獲得できるポイントを攻・守・知性・精神・運の各種ステータスに好きなタイミングで割り振る形となった。
割り振った各種ステータスのポイントの数に応じてスキルやアビリティなどを覚えるようになっている。
特にキャラクターの性能に影響を与えるアビリティは攻撃役、回復役、盾役、補助役などロール的な概念でバトルを行う事も可能にする。
難易度の低めなアクションRPGの本作だが、何を覚えさせるか、どのアビリティを使用するか、どういう役割を持たせるかを考えて育成できるモダンな設計が採用されているのは面白いポイントだ。
しかし、盾役のようなヘイトを集めるようなスキルが守ステータスで得られず、運ステータスで得られるようになっているなど、ポイントを割り振った先とその結果として得られるロール的アビリティが微妙にマッチしていないのは少々勿体ない。

「ストーリー」の項でも記載した通り、本作ではプレイアブルキャラクターが6人いる。
そのため、キャラクターそれぞれに扱う武器や覚えるスキル・アビリティが異なる。
キャラクター毎の操作感の性能差として攻撃速度の違いは感じるが、リーチの差は五十歩百歩と言った程度で余り感じにくいと言った所だろう。
原作においては特定の必殺技や魔法を使用すると、強力で必中の反撃をほぼ確定で使用してくる敵が多数存在しており、その存在の影響により魔法主体のキャラクターは活躍しにくいと言う状況が生まれていた。
しかし、本作では攻撃を回避がする事が出来るようになっているため理不尽に感じる事も無くなった。
自分の好みのキャラクターを選択し、操作しやすくなったのは嬉しいポイントだ。

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健在のリングコマンド

本作ではリングコマンドも存在するが、基本的にアイテムを使用する際に利用するだけになっている。
原作においては魔法を実行する際にも使用したが、本作においてはショートカットが用意されているため利用頻度は減っている。

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健在のクラスチェンジ

クラスチェンジももちろん健在だ。
原作ファンとして嬉しいのはクラスチェンジ後の見た目がしっかりと3Dモデルで用意されている点だろう。
本作も原作と同様にクラスチェンジによりワンランク上の必殺技を使えるようになったり、新たなスキルを習得する事が可能になる。
また、アクション要素の強くなった本作においては通常攻撃の回数が増えるなどアクションが変化するという操作面での恩恵も存在する。

原作ではクラスチェンジをした辺りの中盤頃から金欠になりやすいが、本作では序盤から金欠になりがちな印象だ。
資金の需要と供給が設計されているという事でもあるが、筆者のようにアイテムの収集癖があるプレイヤーからすると、この金銭的余裕の無さは苦しい所だ。
なお、装備をキッチリと整えずともある程度は問題なく進行させる事ができるので、収集癖などなく攻略を目指すだけならば気になる事はないだろう。

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増量した探索要素

聖剣伝説 Legend of Manaで登場したサボテンくんを見つけるフィールド探索要素が増えている。フィールド上をしっかりと確認していれば見つけること自体はそう難しくない。

その他、街中やフィールドなどに宝箱やアイテムが落ちていたり、アイテムが入っていたり、回復が出来たりする壺を壊す事が出来る。
原作においては探索の要素がなくデッドスペースになっていた場所も存在したが、本作ではそれらのオブジェクトの存在によって探索の楽しみが増えている。

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気になる雑多な部分

その他、気になった点を雑多にまとめてみた。

本作のステージには謎解きとまではいかないが、原作ライクにギミックによって進行可能になる部分が存在する。
しかし、スイッチを押してもカメラが変化した場所を捉えるような演出がないケースもあるため、何が変化したのかがわかりにくい事もあるのは少し不親切だ。

移動には「ダッシュ」が存在するが、通常時との速度差を余り感じにくいのは少し勿体ない。
もう少し速度差を明確にしても良かったようには思うが、最高速度をこのレベルに抑える必要性があるのであれば、画面にエフェクトやブラーをかけて「速い感じ」を演出する工夫をした方が良かっただろう。

ボタンの割り当ても少々惜しい。
本作は原作と異なり街中でも剣を振れるのだが、剣を振るボタンと会話するボタンが同じため、話しかけようとして攻撃を行ってしまう誤操作をする事もある。
攻撃してもデメリットは無いが微妙なストレスになるため、割り当ては検討をして欲しかった所だ。

デフォルトのカメラ操作スピードが遅いのも少々不便に感じる。
設定から速度を変更可能なためマイナスの要素とまでは言わないが、なぜこのカメラスピードがデフォルトなのか疑問だ。

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やり込み要素や追加要素

聖剣3リメイクにおいてはクリアには必須ではないやり込み用の要素も存在する。

まず1つ目は原作にもあった「ブラックラビ」だ。
原作同様にシナリオを特定の段階まで進めると挑戦する事が可能で、本作ではデュランやアンジェラ以外を主人公として選択しても挑戦する事が可能となった。
敵としては比較的強いが、原作程の強烈なラッシュ攻撃などは無くなっている。
良く言えば良心的な調整が行われているが、悪く言うと数あるボス敵の1体になってしまっており、敵としての印象は薄まっている。

2つ目はクリア後に解放される追加シナリオだ。なお、これはクリア後要素ではあるがエピローグに当たるような部分ではない。
こちらは完全に新規に追加された内容のためストーリーや会話内容は完全新規のものだが世界観を崩すことなく進行するのは安堵するポイントだ。
このクリア後要素では裏ボスとも言うべき相手と戦う事になるほか、全く新しい上位クラス「クラス4」となりキャラクターを更に強化する事が可能となる。
また、強化した能力を試せるだけの長いダンジョンが用意されているのが特徴的だ。
しかしこのダンジョン、やや長すぎるのは欠点でもある。
ステージに入ってからボスに到達するまでの長さが、本編のダンジョンの3~4つ分程は少なくともあり、シチュエーションも敵が配置されているだけに近くモチベーションが長続きしにくい。
ダンジョンを何分割かに分け、その上で要所要素でストーリーなどの会話を織り交ぜるなどペーシングをするべきだったように思える。

 

グラフィック

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新たな発見のある3Dグラフィック

聖剣3リメイクのグラフィックはアンリアルエンジンによって美しく表現されている。
2Dドット時代には詳細にはわからなかった街の構造や立体感は「ここはこういう風に見えてたんだ」という原作では味わなかった雰囲気・空気感を楽しめる。

キャラクターのモデリングに関してはメインとなる6人の主人公は特に良く作り込まれている印象で、特徴的なサブキャラクターに関してもそれなりには作られている。
キャラクターが装備する武器を変更する事で見た目にも反映され、クラスチェンジでも見た目が変更される。

しかし、モーションは全体的にモッサリとした印象は拭えない。
攻撃モーションはメリハリがなく単調で、モッサリとした印象を覚えるのだ。
予備動作から攻撃、後隙と言った一連の動作が一定の速度で行われているためにそのようなモッサリ感があるのではないかと思える。
例え同じ総フレーム数にしたとしても、予備動作や後隙は残しつつも、攻撃はキビキビと敏捷に行う事で少しはモッサリ感が軽減できたのではないだろうか。
その他のカットシーンでのキャラクターモーションも少々ぎこちない。
口パクにしても口の動きが小さく、パクがちゃんとされているのかわかりにくく勿体ない。
モデリング自体は悪くないのだが、モーションの完成度は全体的に物足りない印象を受けるだろう。

その他の少し気になる点も記載しておく。
テキストのフォントサイズが小さい事が少し気になる所だ。Nintendo Switch版においては携帯モードも存在するため、人によっては少し見えにくいと感じる可能性はある。
設定にて「カメラ距離」という項目があるが、体感して目に見えてわかるほど距離が変化しないのも少し困惑する。
スクリーンショットで比較すると少し変化があるのがわかるのだが、逆に言えばそうしなければ違いがわからない程の距離しか変化しないのは不親切だろう。

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あれ?こんなでしたっけ?

マイナスとまで言うつもりは無いが、ウィル・オ・ウィスプのデザインがイメージと違うのは驚いたポイントだ。

筆者としては淡い青色に揺らめく炎の中に顔が付いているイメージだったのだが、顔の周囲の部分は揺らめいたりする事なく渦巻く特徴的な形をした石の塊ようなデザインになっていたのだ。
あれ…?そういう感じ?ま、まぁ良しとしよう。

 

サウンド

聖剣3リメイクでは音楽もリメイクされている。
リメイクされた音楽は原作のイメージを全く崩しておらず、素晴らしい完成度に仕上がっている。原曲厨の傾向がある筆者も全ての曲とまではいかないものの全体的には大満足の完成度だ。
そのうえ、設定により原作楽曲でプレイする事もに可能になっており、聴き比べを行う事でも改めて雰囲気を壊さない良いモダナイズがされている事が伝わる。

SEに関しても原作を踏襲したものを使用している場合も多く、サウンド面でニヤリとできるポイントは多いだろう。

本作ではキャラクターにボイスが追加されている。
メインストーリーはもちろん、戦闘後にもキャラクターがセリフを発するが進行や状況によって内容が変化する。
ボイスの途中で宝箱を開けると、ボイスが途中で途切れて宝箱のアイテムを入手し終わった後に途切れた所から続きが再生されるなど細かい点で微妙に違和感を感じる部分もある。

 

総評

聖剣伝説3 Trials of Manaは「原作に忠実なストーリー」と「モダナイズしたシステム」という、守るべき部分と挑戦する部分のバランスを取った「リメイクとして良い作品」に仕上がっている。

原作では感じ取れなかった街並みの立体感は聖剣伝説3に新たな視点を見出している。
リメイクされた楽曲達の完成度は素晴らしく、原曲をリスペクトしつつ純粋なモダナイズが行われているのは原作ファンとしても好印象だ。

ゲームとしては単純・単調で深みを生み出すまでには至っていない点はあるものの、聖剣伝説3を改めて楽しむには十分な完成度だ。

 

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【レビュー】ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ

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命知らず

ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ(以下、P5S)はアトラスとコーエーテクモゲームスとのコラボレーションによって生まれたタイトルだ。

発表当初は「ペルソナ無双か!?」という印象が強く、いわゆる"お祭りゲー"なのだろうと思っていた。
しかし、その印象は良い意味で裏切られる事となる…。

今回はP5Sのレビューをしていきたい。

 

 

ストーリー

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完全な続編としてのストーリー

まずP5Sのストーリーは外伝などでは無く「正当な続編である」という事を知って貰わなければならない。
本作はペルソナ5コーエーテクモゲームスとのコラボレーションによって生まれた作品ではあるが、その内容は完全な続編として成り立っているのだ。
そのため、ストーリーや会話はペルソナ5と同様にふんだんに用意されており、ペルソナ5とほとんど同じ形式で会話が行われ、たまに会話中に差し込まれるキャラクターの目をフォーカスした顔のカットインといった演出なども全て使用されている。
メーカー同士のコラボレーションタイトルと言うと一種のお祭りゲームのような様相を想像しがちであるが、本作は紛れもなく続編の立ち位置となっているのだ。

続編となると本作から触れる初心者は問題なくプレイできるのかも気になる所だが、その点は基本的には問題ないと言えるだろう。
本作は前作ペルソナ5から半年後という時間軸で物語が展開される。
しかし、前作の内容が本作で密接に関係する事は無いため、どのような事件が起こっていたのかを知らなくても本作の内容は問題なく楽しむ事が出来るハズだ。
とは言え、主要な人物として登場するモルガナやラヴェンツァと言った特殊な存在が何なのかという説明も無いため疑問符が残ったままにはなるかも知れない。そのため、本作から入るという人は「そういうもの」として受け入れるしか無い部分は少なからずあるだろう。

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対比がよく描かれたストーリー

では本作のストーリーをもう少し具体的に紐解いていきたい。
P5Sのストーリーのテーマを端的に表現しようとすれば「反逆の負の側面」になるだろう。
前作に当たるペルソナ5では主人公達は「反逆心」によって人を食い物にする「悪い大人」を成敗してきた。
しかし、本作の敵として登場する人物はどれも私利私欲のために悪行を行うような人物ではなく、主人公と同様の「反逆心」を起点にして大衆心理を操り復讐を行っている人物なのだ。
つまり、「主人公達と表裏一体の存在」あるいは「主人公達も一歩間違えばこうなっていた」といった対比になっている構図は「純粋な悪」として表現された前作ペルソナ5の敵よりも厚みある人物設定になっていると言えるだろう。

物語の進行は前作同様にストーリードリブンで物語を進行させる事でゲームが進行していく形だ。
その基本的な流れも前作を踏襲しており、フィールドワークによる調査を行った後に、パレスに相当するジェイルに侵入するステージクリア制となっている。
ステージは日本各地が舞台となっており、主人公達は各地を巡って世直しをしていくのだが、その旅では各地の観光名所や名物、名品に関する説明が「旅をしている感」を演出してくれている。

物語進行は前作同様に主人公達の特定の仲間にフィーチャーした「お当番制」になっていると言って良いだろう。
お当番であっても、お当番が過ぎても各キャラクターの存在感に大きな違いが出る事が無い点は良く出来ているストーリーだ。
しかし、各ステージの敵人物は特定の仲間キャラクター1人と対比するような構図となっているため、根本的にお当番になるステージが用意されていないキャラクターもいるのは少々勿体なく感じる所だ。
仲間全員がフィーチャーされるように1人で仲間キャラクター複数名と対比出来るような敵人物を用意できれば更に良かったのかも知れない。

大きなマイナスでは無いが、会話にオート送りが無いのは面倒に感じる。
本作は会話の大半がボイス付きで再生されるが、会話のオート送りが無いために会話を進行するためにボタンを押す必要がある。
ボイス付きの会話ではセリフとセリフの間も重要であるため、ボタンを押させるのではなくオート送りを是非とも用意して頂きたい。

前作にあったような仲間との親交イベントである「コープ」のようなシステムはないが、本作においてはそれを補うためにキャラクターと関連したサブクエストが用意されている。
サブクエストでのストーリーボリュームは余り無いため、本作での仲間キャラクターの多角的な掘り下げはやや不足している所だろう。

その他の前作と異なる点も記載したい。
前作ではプレイヤーが何かしら行動する事で一日一日が経過し、特定の日付までにステージを攻略する事が必要になっていた。
しかし、本作では物語の進行と日付が完全に同期しているため、プレイヤーが様々な行動を行っても日付が進んでしまうと言う事は無くなっている。
そのため、ゆったりと自由にプレイする事が可能となっている。

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シンプルな構造ながら冗長なストーリー進行手法

P5Sのストーリー進行はペルソナ5と同様にフィールドワークとジェイル(ダンジョン)パートの2プラトンシーケンスが基本だ。
フィールドワークでは敵の素性を捜査し、ジェイルパートでは敵が出て来るダンジョンを攻略していくような形となる。

フィールドワークやジェイル攻略は1つの大目標に対して、中目標が3、小目標が9といったようなわかりやすい構成が基本となっている。
例えば、ジェイルのボスを倒すためには3つ存在する○○を陥落させる必要があり、○○へ向かうためには警備している3体の××を倒す必要がある…といった具合なのだ。
この基本構造はシンプルな考えの構造なのだが、それをストーリードリブン(一本道)に行わせようとしているためにプレイヤーには非常に冗長なプレイを要求している事がしばしばある。そこがフラストレーションに繋がりやすいポイントなってしまっているのは残念だ。
この理由を端的に言えば「A地点にいって、B地点に行って、C地点に行って…」ととにかく色々な場所にたらい回し状態にされるからだ。
これが「目先の小目標を潰していったら大目標までたどり着いた」という構造にしているのであれば大きく気にならなかった可能性もあるのだが、本作では「大目標に行こうとする⇒行けないので中目標を目指す⇒行けないので小目標を目指す」という行き当たりばったりな構成になっており「たらい回し感」がかなり強くなってしまっているのだ。
このような状況となると、小目標や中目標が「大目標のための障害」としてしか捉えられなくなってしまいがちで、小目標・中目標を達成する事が楽しみに繋がらずモチベーションに水を差す形になっている。
また、たらい回し状態であるが故にストーリーの進行も遅く感じられてしまい、必要以上に時間がかかっている印象を受けてしまう。

このような進行はペルソナ5も同様であったため「前作通り」と言えばそうなのだが、冗長なストーリー部分でプレイ時間が間延びしてしまうのはフラストレーションだ。

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あらすじの機能を持った「仲間と話す」

アジトに集合して「仲間と話す」を実行すると前作同様に物語の進行状況に合わせてセリフが変化する。
これは”あらすじ”の機能を持っているためだが、キャラクター同士の会話で進行状況を確認できるのは手間のかかった作りと言えるだろう。

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ショップに相当する通販

ゲーム内ショップの通販では仕入れ先の情報が表示されるなど細かい部分でもこだわりが感じられる。
ゲームシステムとしては無意味な情報だが、このような設定があるだけでも世界観に広がりを持たせることが出来る。

 

システム

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ペルソナ5 x アクション

P5Sのバトルシステムについて記載していく。
しかし、まずは本作のバトルシステムが独自の路線で組まれているものである事を認識して貰う事が何よりも重要であるように筆者は感じている。
本作は無双シリーズでお馴染みのコーエーテクモゲームスとのコラボレーションタイトルだ。そのため、事前情報においても「ペルソナ無双」などと評される事も多かったように思う。
だが実際には無双シリーズと同じような感覚でプレイをするべきタイトルでは無いのだ。本作は従来のペルソナでも、無双系のゲームでも無い、「ペルソナという作品をアクションゲーム化した作品」になっているのだ。

本作はアクションゲーム(正確にはアクションRPG)だが、ペルソナ5のバトルコマンドとして存在した「スキル」や「ガン」、「総攻撃」など原作を再現した攻撃手段がふんだんに盛り込まれている。
スキルはペルソナによってお馴染みのイラストのカットインと共にカッコよく発動する。発動させるにはコマンドから任意のスキルを選択して発動する事になるが、発動するスキルを選択中は時間が停止するため問題なく使用する事が可能になっている。
しかし、スキル発動に必要なSPは簡単に枯渇し、SPの回復手段も限られるため、スキルをバンバン使っていく事は難しい。
SPはHPの回復手段としても有用であるため、折角用意されているにも関わらず気軽に使用できないのは少々勿体ないように感じる所だ。

戦闘の発生方法も原作同様のシンボルエンカウントで、敵キャラクターにインタラクトする事で周囲に敵が湧き戦闘になる。
そのため、無双系のようなワラワラ感はそこまで無く、無双系アクションを期待していた場合には違和感を覚えるポイントになるだろう。
繰り返しになるが、本作はあくまでも「ペルソナがアクションゲームになった」という表現の方が正しいと言える立ち位置の作品なのだ。

ペルソナ5で登場した魅力的なキャラクター達を自分で操作して楽しめるアクションというだけでもファンならば嬉しいものがあるだろう。
各キャラクターの操作にはコンセプトが設定されており、キャラクター毎に少し異なる戦い方になるようになっている。
ただし、本作は自分の好きなキャラクターを使い続けるようなプレイスタイルを推奨している訳では無く、敵の弱点となる属性を保有したキャラクターを操作するのが基本となっている。
しかし、レベルデザインがイマイチであるのは少々不親切にも感じる所だろう。
敵の弱点をつくことで有利に戦えるようになるメカニクスを用意しているのだが、出て来る敵の弱点属性がまばらであり、誰を使って欲しいのかという意図(デザイン)を感じ取れない。
もう少し「こう遊んで下さいね」というお膳立てをしても良いのでは無いだろうか。

その他、気になる点も少しだけ記載しておきたい。
全体的なカメラワークはデフォルト設定のままでは縦横の回転の速度が遅すぎて背後の敵を対処しにくくアクションにならない。
デフォルト値が何故この速度になっているのか疑問なレベルで、コンフィグからカメラ速度を最速に変更する方が望ましい。

同じボタンに複数機能を載せている事も誤操作に繋がり少々不親切だ。
敵に総攻撃がしたいのにオブジェクトに張り付いてしまったり、奇襲がしたいのにオブジェクトに張り付いてしまったりする事がままある。
この手の誤操作は"慣れ"だけでは対処が難しいため、ボタン割り当てはもう少し検討して欲しかった所だ。

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システムと相性が悪いボス戦

本作にはペルソナ5と同様にボスが存在しているほか、フィールドには強力な大型の敵も登場する。
しかし、ボス戦などの強力な敵との戦闘はお世辞にも良い完成度とは言い難い。
純粋な無双系アクションでは無いとは言え、無双系アクションを母体とした本作は基本構造が「一対多」を想定しているために強力な1体の敵と緊迫感を持って戦う事に向いていないのだ。

まず、画角の広いカメラワークについて記載したい。
無双系であれば「一対多」を基本とするため、画面内に可能な限り敵を描写する必要がある。そのため、カメラ位置は操作キャラクターから距離・高さ共にやや離れた位置に設定されているのだろう。
しかし、これがボスのような1対1のような状況では、カメラ位置がキャラクターから離れているために相手と自分の距離感が正確に掴みにくく、攻撃するにしても回避するにしても戦いにくい印象を与えてしまうのだ。

次に軽快過ぎる操作性もボス戦にとっては障害となる。
画角の広いカメラでは前述の通り敵との正確な距離感は掴みにくい。そのため、無双系アクションでは攻撃アクションの1つ1つの踏み込み距離が長めに設定され、敵に攻撃が当てやすくしていると思われる。
しかし、ボスのような体力も多く、のけ反りも無い敵の場合には懐に潜りやすくなってしまう。そのことが原因で問題が発生しているのだ。
カメラをボスにロックオンした状態で懐に潜ってしまった場合、操作キャラクターと敵の位置関係の問題でカメラがグルグルと回転してしまい視認性が著しく悪くなってしまう。
また、逆にロックオンしていない場合に懐に入ってしまうと、のけ反りの無い敵に対して踏み込んで攻撃をしてしまうために、敵を通過するような形となり攻撃を当てにくくなってしまう。

見た目以上に存在するヒットボックスも同様だ。
一対多を想定し、正確な距離感を掴みにくいという状況の無双系アクションでは、自分も敵も攻撃が当てやすいように見た目以上の攻撃の当たり判定を有している。
そのため、自分の攻撃は「いつ」「どこまで」近寄れば当てられるのかという正確な距離がわかりにくく、敵の攻撃は「いつ」「どこまで」回避すれば良いのかという正確な距離がわかりにくい。
そして、そのような大雑把な立ち回りしか行えないシステムが基盤になっているにも関わらず、繊細な行動を求められてしまうボス戦は楽しさが感じにくいと言えるだろう。

一対多をベースとしている故のこれらの諸問題の影響からか、本作のボス戦は「向いていない事をやらされている感」が強い。
戦闘の方式やカメラワークをシチュエーションに応じて変化させるような工夫がないため、「餅は餅屋」という言葉がピッタリと当てはまると言わざるを得ない内容だ。

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合体によるペルソナの誕生ももちろん再現

P5Sではペルソナとペルソナを合成して強くする「ペルソナ合体」も登場する。
登場するペルソナの数もかなり多く「こんなに作ったのか!!」と驚くばかりだ。

ペルソナ全般の仕様は従来のペルソナシリーズと同様で、合体させる事でスキルを継承させたりする事も出来る。

全てのペルソナは戦闘中に召喚してスキルを発動させる事などが可能であるが、スキルのエフェクトは全体的に派手なため、敵が見えないなどの視認性の悪さに繋がっているのはアクションゲームとしては少々残念なポイントではある。

 

グラフィック

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旅の気分を盛り上げる各地域を再現した街並み

人物のモデリングや前作ペルソナ5でも登場した街並みは流用されているのかそのまま再現されているのは嬉しいポイントだ。
また、前作では行く事のなかった日本各地の街並みも主人公達が旅している事を強く感じさせてくれる興味深い作り込みをしている。

キャラクターモデリングに関しては前作ペルソナ5自体もそうだったが、モデリング自体が精巧と言う訳では無い。
また、ストーリー上の演技にしてもイラストのグラフィックをメインにしており、キャラクターモデルは演技の雰囲気を伝えるに留めている。
他作品で恐縮だが、キャサリン幻影異聞録#FEでは3Dモデルにガッツリと演技をさせており、なぜペルソナシリーズではこのような形式のままでいるのかは不思議な所だ。

画面に表示されるGUIの1つ1つがスタイリッシュな点も継承されている。
視認性やレスポンスを抜群にするでもなく、GUIを風景に溶け込ませている訳でもない。
世界観を演出するようなリッチでスタイリッシュなGUIで統一させている。
この印象的なGUIが健在なのは嬉しい限りだ。

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戦闘中のカットインもバッチリ再現

スキルの発動時に挿入されるキャラクターのカットインもバッチリ再現されている。
こちらも非常にカッコよく、嬉しいポイントだ。

 

サウンド

無双シリーズらしいアレンジがなされたBGMはファンであれば必聴だろう。
それ以外に関しても世界観にマッチした非常にカッコいいジャズな音楽は印象的で思わず音楽と一緒に体動いてしまうだろう。

特にステージ攻略がだいぶ進行した際に流れる「Daredevil」は最高に気分を盛り上げてくれるだろう。

日本各地のショップでのセリフは地方の訛りも表現されていたり、洞窟のような空間ではボイスにリバーブがかかるなど、ボイス関連もしっかりと表現されている。
その他、ゲーム内ショップ画面では待機中ボイスが用意されていたりとボイス自体も充実していると言えるだろう。

 

総評

ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズは純粋なペルソナ作品でも無ければ、無双系のようなアクションゲームでも無い、完全な新機軸のアクションRPGだ。
逆に言えば無双系アクションを期待してプレイすると違和感を覚えてしまうかも知れない作品であり、全く別のアクションゲームとしてプレイするべきだろう。

前作にあたるペルソナ5よりも厚みを持ったストーリーは良く出来ており、ペルソナをアクションRPGとして落とし込んだ手法も素晴らしい。
GUIや音楽の素晴らしさが健在である点も最高だ。

しかし、度々登場する強力な敵やボス敵はシステムとの相性が根本的に悪く、フォークでプリンを食べているかのような親和性の悪さを感じずにはいられない。 

 

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【レビュー】幻影異聞録♯FE

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Reincarnation

幻影異聞録♯FE(以下、幻影異聞録)はファイアーエムブレムシリーズで知られるインテリジェントシステムズ女神転生やペルソナといった作品で知られるアトラスがコラボした事によって生まれた作品だ。
当初WiiUでコラボが発表された当時には一体どんな作品となるのか全く見当が付かなかったが、それは開発側も同様だったようで紆余曲折あった事が様々な媒体で語られている。
その影響もあり、新たな情報が公開されるまでに非常に長い期間を要した事を覚えている。
そして、新たな情報が解禁された時には煌びやかな世界観を引っ提げたゲームとなっていたのだ。

今回は異色のコラボ、そして独特の設定を有した幻影異聞録♯FEをレビューしてみたい。

なお、今回はNintendo Switch向けに発売されたEncore版をメインのレビュー対象として記載する。

 

幻影異聞録♯FE Encore -Switch

幻影異聞録♯FE Encore -Switch

  • 発売日:2020/01/17
  • メディア:Video Game
 
幻影異聞録♯FE - Wii U

幻影異聞録♯FE - Wii U

  • 発売日:2015/12/26
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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芸能界xファンタジー

幻影異聞録は芸能界を舞台にしたストーリーが特徴的だ。
ストーリーの会話はフルボイスで、全体的なトーンは明るく、仲間たちが夢に向かってひたむきに成長していく姿が描かれる。
敵として登場する人物にしても必ずしも悪意によって行動している存在とは言い難く、主人公達がアーティストあるいはエンターテイナーといった表現者としてステップアップするための乗り越えるべきハードルとして立ち塞がる存在になっている点も興味深い。

ストーリーの進行も単純なダンジョンクリアしていくものとは少し異なる。
ダンジョンを進めると表現者としてステップアップするためのハードルが登場し、それをクリアするためにイベントを進めるという形式だ。
つまり、大まかには「ダンジョン(探索・謎解きなど)⇒キャラクターのステップアップ⇒ボス戦」のような流れになっている。

本作ではキャラクター毎に用意されたサイドストーリーも用意されており、メインのストーリー以外でもキャラクターの成長が描かれる。
サイドストーリーはよくある「敵を倒せ」のようなもの以外にも「人と会話して進行する」ものも用意されている。
敵を倒させる事をプレイヤーに強要することなく、あくまでもキャラクターの成長に焦点をあてているのは素晴らしい選択だ。
また、サイドストーリーのクリア時にはキャラクターの歌唱やダンスのミュージックビデオのようなカットシーンが用意されており、サイドストーリーで成長した結果を感じさせてくれるご褒美が多めの内容になっている。
なお、サブストーリーの会話もフルボイスになっており聴きごたえも抜群だ。

また、前述の通りストーリーの大半はフルボイスで進行するが、会話にはしっかりとオート送りが実装されている点もありがたい。
ただし、オート送りは「その会話中の期間のみ」で有効となり、別の会話ではオート送りのON/OFF設定が引き継がれない。
そのため、筆者のようにコントローラーから手を離してストーリーを楽しみたいような場合には会話のたびにオート送りをONにする必要があるためパーフェクトとまではいかない仕様だ。

本作ではメインのキャラクター達とは関係の無いサブクエストも用意されている。
サブクエストに関してもある程度のストーリー性を持って展開されるほか、エピローグではサブクエストの人物のその後が垣間見えたりと比較的充実している。
しかし、サブクエストは受注したクエストが一覧で観られないため、各クエストの受注状況などは忘れないようにしなくてはならない点は不便だ。

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FEのキャラクター達

本作はファイアーエムブレム(以下、FE)とのコラボレーションによって生まれた作品だ。
そのためFEの暗黒竜や覚醒のキャラクターが仲間やボスとして登場する。

FEキャラクター達は「ミラージュ」といわれる記憶を失い彷徨っている異世界の存在で、人間が生み出す表現力の源「パフォーマ」と言われるものを糧としている。
彷徨えるミラージュの多くはパフォーマを得るために人々を襲っているが、主人公達を始めとしたミラージュと協力する事ができる程の強いパフォーマを持った存在は「ミラージュマスター」と呼ばれる。
表現者としての能力がパフォーマとなるため、パフォーマを糧とするミラージュを強くしていくためには主人公達も芸能界で表現者としての能力を高めていく事になるのだ。

敵がミラージュを集める理由は示されるのの、根本的にミラージュがパフォーマを糧とする理由は具体的に示されない。
しかし、メタ的な視点を交えれば「ゲームあるいはゲーム内キャラクターは表現者がいて初めて存在し得る」という事を表現したいのではないかと推察できる。
FEを始めとしたビデオゲームと言う作品自体が開発者や声優といった表現者たちの力によって成り立っている。
つまり「ミラージュがパフォーマを糧とする」のは「ゲームとは表現力によって生み出される」「ゲーム内キャラクターとは表現者がいなくては存在できない」という事を表していると読み解けるのだ。

なお、FEのキャラクター達はミラージュという形式以外にも、どこか見覚えのある風貌をした店員がコンビニやカフェにいたりもする。
ファイアーエムブレムシリーズをプレイしているファンならばニヤリとできるポイントだ。

とは言え、全体的にはFE成分は薄く、せっかくのコラボレーションを十分に活かし切れているとは言い難い。
根幹となるミラージュと言う設定にしても「FE」という作品である必然性はなく、他作品でも成り立ってしまうのだ。
良く言えばFEを知らない人でも楽しめるのだが、悪く言ってしまうとFEとコラボする必然性が感じられないのは勿体ない。

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現代的な要素をふんだんに取り込んだ要素

本作は現代(特に2010年代前半)の日本が舞台であるため、現代的なツールが様々に登場する。
代表的なものはSNSのようなツールを利用した「TOPIC」だ。
WiiU版ではゲームパッドの画面上に表示され、Nintendo Switch版では通常のGUI的に表示される。
TOPICのメインの利用方法はストーリーのあらすじとしての機能なのだが、全ての流れを網羅している訳では無い。
そのため、時間をおいてプレイすると次に何をすれば良いのかわからないケースも考えられる。また、オートセーブが無く全滅すると最後のセーブ地点にまで戻されるため、長時間セーブしなかった場合にはどこまで戻ってしまったのかがあらすじだけでは曖昧になってしまう事も多い。
本来の機能としては十分な役割を果たしていないが、TOPICは様々なタイミングで各キャラクターからの会話が追加されるため、キャラクターの生活感などを感じさせてくれるストーリーテリングとしての良いアクセントとしては寄与している。

TOPICの他にもボーカロイドをイメージした「Tiki」という設定も現代的な要素の代表格だろう。

 

Encore

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EXストーリー

Nintendo SwitchのEncore版での追加シナリオとして「EXストーリー」が用意されている。
キャラクターの更なるサイドストーリーといった内容であり、ボイスも新たに追加されている。
EXストーリーのダンジョンでは新衣装が入手できるなどの特典も存在する。

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左:WiiU版、右:Nintendo Switch

WiiU版とNintendo Switch(Encore)版ではストーリー表現の一部に差異が散在する。

Nintendo Switch版であるEncoreは北米版をベースとしており、北米版の改変内容がそのまま適用されている。
変更内容は衣装だけでは無く、セリフに関しても変更が適用されており、良く言えばWiiU版とは違う点を楽しむ事もできる。
しかし、この改変内容は大きなマイナスとまでは言わないが、ストーリーの説得力あるいはキャラクター性とマッチしておらず若干の違和感を感じる演出になってしまっている部分も出ている。
それはヒロインである織部つばさが水着となるシーンだ。
上図がそのシーンの一部となるが、子犬のような性格をしたつばさが撮影に対しての恥ずかしさや緊張する理由が北米版の衣装では説得力を少々落としているように思える。
その上に、根本的にキャラクターとマッチしている衣装だとも感じにくい。

各国のレーティングに対応し、なおかつ投入可能なリソースを天秤にかけた結果の処置だと言うのは十分に理解できるのだが、ユーザーファーストとは言い難い内容ではある。

 

システム

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仲間の絆で畳み掛けるセッション

幻影異聞録のバトルシステムではペルソナ系列のシステムがベースとなっている。
戦闘はターン制となっており、基本的には速さ順に各キャラクターが行動をしていく。
そして敵(自分もだが)には弱点が設定されており、その弱点を突いた攻撃をする事で攻撃側にメリットが発生する仕組みになっている。
RPGとしては比較的クラシックでオーソドックスな理解しやすいシステムだと言えるだろう。

本作の戦闘で特徴的なのはその弱点を突いた際に発生する「セッション」だ。
セッションは上図をご覧いただけると雰囲気が伝わるかも知れない。
まず最初に起点となる弱点を突く攻撃を行う。すると、それに呼応してセッションが発動し味方キャラクターが追撃を行ってくれるのだ。
キャラクターの育成が進めば戦闘に参加していない控えのメンバーもセッションに参加できるようになり非常に多くの追撃が発生する。
また、Encore版では特定の追加ダンジョンを進行する事によって非戦闘員もセッションに参加してくれるようになるため、更に多くの追撃が発生するようになる。
戦闘非参加のメンバーでもしっかりと活躍の場が用意されているのは「チームで戦っている感」を演出する嬉しくなるポイントだ。
他にも、セッション発生時にはキャラクター間で短い声掛けが行われるため、パーティー間の関係性を演出する事にも一役買っている。
行うこと自体は敵の弱点を突くと言う単純なものではあるのだが、数多くの連撃を行う爽快感と仲間と協力して戦う共闘感の2つを同時に生み出すセッションは非常に素晴らしいシステムだ。
なお、Encore版ではセッションのモーションを簡略化させて戦闘テンポを向上させるクイックセッションが用意されている。
クイックセッションは戦闘中にいつでもON/OFFが行われるため、じっくり見たい時にだけONにするなどが行いやすく配慮が行き届いている。

キャラクターの育成サイクルが比較的早い点もプレイのモチベーションに繋がりやすい。
本作は武器からスキルを習得するようなシステムなのだが、1戦闘でもスキルを覚えていく事も多い。
そして新しいスキルを覚えたかと思えば、次にはレベルアップするなど、早いサイクルで目に見えて強くなっていくため、サクサクと進行している印象を与えてくれるのだ。
また、既に同じスキルを持っていると「+1」のようにインクリメントされスキルの効果が増強される。
物語が進めば同じ武器を何度も作成する事も可能となるため、スキルを習得する楽しみが減る事もほとんど無いだろう。
ただし、キャラクターのスキルは並べ替えが行えないため視認性の向上が行えないのは痒い所に手が届いていない。

キャラクターの成長要素としてはFEシリーズではお馴染みの「クラスチェンジ」も存在する。
クラスチェンジは特定のアイテムを使用する事で行う事ができ、ステータスの向上や作成できる武器の数が増加する。
クラスチェンジでキャラクターが強くなることはRPG特有の魅力があるのだが、クラスチェンジを行うとキャラクター(ミラージュ)の見た目の個性が失われてしまい、一見するとモブ敵のようにすら思えてしまうのは少々残念だ。
クラスチェンジしても見た目の個性はある程度は残して欲しかった所だ。

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運要素が強いデュオアーツとアドリブパフォーマンス

本作の戦闘ではデュオアーツとアドリブパフォーマンスという華やかな要素も戦闘を鮮やかに彩っている。
デュオアーツやアドリブパフォーマンスが発動するとキャラクターの歌やパフォーマンスと共に攻撃が行われる豪華な演出が特徴的だ。
なによりも戦闘中に歌が挿入されるのはテンションを高めてくれる。

デュオアーツは端的に書くとセッションの最後に確率で発動するものなのだが、発動すれば大ダメージを与えるだけでなく、再度セッションが発生して連撃が発生する。
再度発生したセッションでもデュオアーツが発動する可能性があり、そうなれば一回の攻撃で20コンボ以上の大連鎖攻撃にもなる。
演出も威力も非常に強力だ。

アドリブパフォーマンスはスキルを使用した際に確率で発動するものだ。
こちらもデュオアーツ同様にキャラクターの歌やパフォーマンスなどによって強力な攻撃を行うものとなっている。

しかし、デュオアーツとアドリブパフォーマンスを戦術や戦略に組み込む事が出来ないのは残念でならない。
上記に記載している通り、この2つの要素の発動条件が確率に左右されるためだ。
「戦闘中に累計n回セッションを発生させると確実に発動する」「○○を行うたびに発動確率が上昇していく」など大小なりともプレイヤーが制御可能な形に落とし込む事で戦術性や戦略性を持って利用できるようにして欲しかった所だ。
豪華な演出で強力な攻撃を行うというご褒美のような攻撃手段だが、それがシステム全体のどこにも依存しない孤立した要素になってしまっているのは勿体ない。

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活かし切れていない要素

本作では活かし切れていない勿体ない要素も散見される。
どれも「勿体ない」というレベルであるため、マイナスの要素とまではならない事は留意されたい。

本作はFEとのコラボレーションタイトルでもあるが、「ストーリー」の項でも述べた通りFEとコラボする必然性が薄い。それはバトルシステムでも同様だ。
FEシリーズと言えば聖戦の系譜からではあるが「三竦み」が代名詞的なシステムとして知名度が高い。
それを踏襲し、敵のデザインは「剣を持っていれば槍に弱い」など視覚的に弱点が把握できるようになっている。
しかし、この活用方法は表面的な非常に薄いものであり、コラボレーションを見事に活用できているとはお世辞にも言い難い。
作品としてはしっかりと成立しているため問題は無いのだが、「FEとのコラボレーションでなければ実現しなかった」と言えるものにまで昇華していれば更に良かっただろう。

通常攻撃の価値が無い点も勿体ない。
本作の主軸のシステムは前述の通り弱点を突いて発動させるセッションなのだが、セッションが発動するのはスキルで攻撃した時のみなのだ。
通常攻撃では何も発生する事は無い。
ダメージも低いため、スキル発動のために必要なEPが枯渇している時にしか利用する事は無い。
だが、根本的にEPはふんだんに用意されているため枯渇させようと思わなければ、そのような状況になる事はほとんど無いと言っても良い。
通常攻撃をコマンドの選択肢に入れるのであれば役割を持たせるべきだったように思う。

ガードも同様に価値が薄い。
ターン制である本作のような戦闘では、「強力な攻撃が来そうだ」といったメッセージなどで敵が特定のターンに強力な攻撃を発動する事がわかっているような状況でも用意しなければガードと言う行動を選択する事は考えにくい。
また、ガードを行うとEPが回復するのだが、その回復量が2固定である事も存在意義の無さを助長している。キャラクターのEP最大値は200や300は当たり前で、消費するにしても10や20といった単位だからだ。
せめて最大EPの10%回復など成長しても恩恵があるようにして欲しかったと言える。
ガードを使用を促すようなお膳立てがされていないのは勿体ない。

 

グラフィック

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現代&ファンタジーの日本

幻影異聞録では現代の渋谷や新宿といった街並みを再現している。
街では様々な広告が表示されているのだが、物語の進行に応じて広告内容に変化があるなどキャラクターの成長や物語の進行を感じさせてくれる。

渋谷や新宿などのフィールドはやや狭いが窮屈に感じるような事は無く、ショップなどに回るのも苦にならない広さと言った印象だ。
また、ダンジョンはフィールドよりも広く設定されているが、冗長に感じない丁度いい程度の広さであるため良いバランス感覚で作られている。

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華やかなGUI

煌びやかなGUIや戦闘フィールドの華やかさも素晴らしい。
全体的に明るい黄緑をベースに統一している点も特徴的だ。

なお、メニューの各種項目名は北米版準拠となったのか、WiiU版とNintendo Switch版とでは異なっているようだ。

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良く動くキャラクター達

会話シーンではキャラクターの3Dモデルのリアクションによって行われる。
また、戦闘中アニメーションは良く出来ている。

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ダイナミックなカメラワーク

キャラクターの各種アニメーションも良く出来ているが、戦闘における攻撃(特にセッション)のカット割りが良く出来ている。
味方キャラクターと敵キャラクターを画面に収めつつも、ダイナミックに見えるように煽りや遠近のコントラスト使用したカメラワークを行っている点が素晴らしい。

 

サウンド

曲はとにかくポップで明るいトーンで統一されているものが多い。
劇中歌はメロディ自体も良いが、キャラクター性を歌い上げたものにもなっているため作品・キャラクターにも非常にマッチしている。
街頭では宣伝CMのような声が聞こえるなど、世界観を構築させる事に成功している。

ポップな通常戦闘曲「SESSION!!!」

緊迫したボス戦闘曲「絶対に負けられない!」

キャラクターの成長を感じさせる明るいFEのメインテーマアレンジ「ステップアップ!」

強大な相手との対峙を感じさせる「導かれし運命」

強いメロディを持ちながらも霧亜の内面性を歌い上げた「Reincarnation」「迷路」

つばさの内面性と成長を歌い上げた「Feel」「友達以上、恋人未満。」「Fly ~君という風~」

ポップでアップテンポな「ドリーム☆キャッチャー」

物語の最後に相応しい明るく感動的な歌詞が非常に印象的な「Smile Smile」

本作の劇中歌はどれも非常に素晴らしく印象に残るものばかりだ。

また、ボイス関連においても戦闘中のセリフの多さがパーティーの雰囲気を作り上げている。物語の進行によっても戦闘中のセリフ内容も変化する事があるためこだわりが感じられる。
その他、衣装によっても専用のセリフが発生するケースもある。

 

総評

幻影異聞録♯FEはバランス良く整えられた一作だ。

共闘感を演出する戦闘はシンプルながら華やかさがあり面白い。
ダンジョンの長さは把握しやすく、攻略もしやすい適度な広さとなっている。
ストーリーや戦闘中に挿入される印象的な楽曲の数々は曲としての良さを確立しつつもキャラクター性を歌い上げており、作品とのシンクロを果たしている。
そして芸能界と言う煌びやかな世界で純粋に成長していくキャラクター達からは元気を貰うことが出来るハズだ。

また、サイドストーリーやサブクエストを網羅しつつクリアしても50時間前後であると言う点は本作を最後まで飽きずに楽しむことが出来る丁度良いボリューム感でまとめ上げられている。
FEというシリーズとコラボする必然性が薄い内容になっているのは勿体ない所だが、それは本作の質の良さに大きな影を落とすようなものではない。

 

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【レビュー】SDガンダム Gジェネレーション クロスレイズ

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交差しない光

SDガンダム Gジェネレーション クロスレイズ(以下、クロスレイズ)は名前の通りだがGジェネレーション(以下、Gジェネ)シリーズの作品だ。
筆者のGジェネシリーズ遍歴は「Gジェネレーション アドバンス」「ワールド」をプレイしている程度であり、それほど熱心なファンという訳では無い。
しかし、Gジェネシリーズはオリンピックのように数年間に一度くらいの周期で無性にプレイしたくなるタイトルの1つなのだ。
今回はそんなサイクルにぶち当たり購入に至ったクロスレイズをレビューしてみたい。

 

SDガンダム ジージェネレーション クロスレイズ -Switch
 
【PS4】SDガンダム ジージェネレーション クロスレイズ
 

 

ストーリー

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作品を追体験するストーリー

クロスレイズはガンダムにおけるいわゆる「宇宙世紀を舞台にしていない作品群」を1つにまとめたタイトルだ。
本作のストーリーは各作品を追体験するようになっており、作品の様々なシーンをストーリーとして、そしてシミュレーションゲームとして再現している。
アニメを観て、そして作品が好きになったファンであれば嬉しい要素ではあるだろう。

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交差(クロス)していない問題

では、本作が複数の異なる世界観を内包する事に成功しているかと言うと「否!断じて否!」と言う他ない。

各作品は「追体験」するに留まっており、作品間を跨いだようなストーリーや演出は皆無だ。
登場作品を宇宙世紀以外のガンダムに絞っているにも関わらず、追体験のみで終わってしまうのは作品をクロスオーバーさせている意味を欠いている。

また、追体験形式のストーリーではあるが本作だけで本編のストーリーの面白さが伝わるレベルに到達しているかと言われると、それも「否」と言わざるを得ない。
描写が飛び飛びであるため物語の間の空白が空白のままなのだ。
アニメを既に観ている人であれば脳内で出来事を補完できるが、このタイトルから作品を知ろうと思うと良さは伝わりにくいと言えるだろう。

 

システム

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ガンダムシリーズが様々に登場する

クロスレイズでは宇宙世紀以外の作品群から様々な機体が登場する。
主役級の機体が登場するのはもちろんだが、脇役であったり敵が乗る量産機なども数多くの種類が参戦している。
戦闘アニメーションにしても原作のシーンを再現したものが数多く用意されており、こちらもファンならば嬉しい要素だろう。

ユニットには複数の武装が設定されており、また武装毎に射程距離が設定されている。
攻撃や反撃は射程内に入っている武装のみを使用する事が出来る。
逆に言えば射程外の武装しか無い場合には攻撃はもちろん、反撃が行えないため、一方的に叩く/叩かれる事があるのは当たり前の事だが注意が必要だ。

本作では複数ユニットに対してダメージを与えられる行動はいわゆる「マップ兵器」を除けば「戦艦連携」「遊撃連携」に限られている。
この連携攻撃は最大9ユニットまでをターゲットにする事が可能だが、ターゲット数を増やすと威力が下がってしまう性質があるため、強力ではあるがどのように活用するか考える必要がある。

戦闘アニメーションは原作アニメのワンシーンを再現しているが、そうであるが故に戦闘アニメーションが非常に長く冗長で、戦闘のテンポを著しく落としてしまっていた。
戦闘アニメーションはカットできるが、それは本作の醍醐味の部分が損なわれる選択でもある。
そのため、リリース当初は「観る」or「全カット」するかの二択しか用意されておらず配慮不足と言わざるを得ない状態だったのだが、アップデート(v1.50)にて戦闘アニメーションの早送りが追加されている。

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とにかく雑なバランス

登場機体や機体のディティール、モーションは原作再現にこだわっているが、それ以外の部分は総じて雑だ。

まず、チュートリアルがテキストのみで完結してしまうのは雑な説明と言わざるを得ない。
複雑なシステムは設計されていないとは言え、これでは初心者にとっては困惑してしまうように思える。
特にユニットやキャラクターの強化方法など、どこから何を強化できるのかがわかりにくいため、もう少し丁寧なチュートリアルを差し込むか、理解しやすいGUI設計にして欲しい所だ。

各ステージに登場する敵ユニットの配置(レベルデザイン)が雑な事も気になる。
シチュエーションが原作を再現するだけに終始しておりレベルデザインと呼べるような配置などは皆無でゲームとしては問題がある事も多い。
初期ユニットでは明らかに難しいステージもあれば、初期ユニットであるにも関わらず高難度化させても簡単にクリアできてしまうものもあるなど、およそ「(楽しめるための)デザインがされている」とは感じられない。
全てのシチュエーションでは難しいかも知れないが、工夫次第で勝利が得られる絶妙な歯応えのデザインを目指して欲しい所だ。

敵AIの行動パターンも雑だ。
射程外から一方的に攻撃してくるような事も無ければ、弱ったユニットを総攻撃してくるような事もない。
筆者がプレイした限りでは敵ユニットがしっかりと思考して行動しているようには思えなかったのが素直な感想だ。
このような不可解な挙動をされてしまうと、プレイヤー側も計算立ててユニットを配置する事ができず雑なプレイをせざるを得ない。

戦闘においてはダメージ計算もわかりにくい煩雑さがある。
ダメージは「武装自体の火力」「機体の攻撃力」「相手機体の防御力」が影響するようなのだが、どのような計算を行って実際のダメージ値になっているのかが直感的には非常にわかりにくい。
また、上図を参照して頂ければ理解できると思うが戦闘後の結果も画面上に表示されないため、実際に戦闘を行わなければダメージ値が把握できない。
そのため、「この機体は3回は攻撃を耐えられるな」と言ったような戦術が立てにくいのだ。だいたいのケースは「おおよそ3回は耐えられそうかな?」と言った曖昧な判断にならざるを得ず、かなり大雑把な采配しかできない。

本シリーズ全般に言える事かも知れないが、機体が没個性化している戦闘バランスは最も雑さを感じる所だろう。
本作ではワンオフ機でも量産機でも同じ土俵に立てるようにしているが、特別なシステムを何も用いずに同じ土俵に立たせてしまっているためワンオフ機でも量産機でも似たような性能の機体になってしまっている(この没個性が前述のレベルデザインの雑さにも繋がっているほか、没個性を考慮したレベルデザインも行われていない)。
アニメの劇中では非常に高い性能を有していたにも関わらず、ゲームでは量産機とどっこいどっこいの泥仕合をしているようでは違和感が強い。
本作にはレベルが用意されているため、レベルが上がれば原作のように敵機を蹂躙できるようにはなる訳だが、それも結局は同様の事をすれば量産機であっても行えてしまう芸当だ。
例えば、出撃コストを設定するなど性能に応じて出撃可能な枠を絞るようなシステムを組み込み、その上で性能差は明確に分けるなど、機体に役割を持たせて同じ土俵に立たせて欲しかったと言える。

また、雑なのは機体だけでなく武装に関しても同様だ。
牽制に使用されるようなビーム兵器と、大砲のような重火器の主砲との威力・消費エネルギー量の差が小さすぎるのだ。
例えば、威力3000で消費エネルギーは10の兵装と、威力3200で消費エネルギーは12の兵装となっており、本作のような設計(戦闘システムやマップ、レベルデザインなど)においてこの程度の差では使い分けるようなシチュエーションが生まれる事の方が稀だ。
威力3000で消費エネルギーが10の低火力高効率の兵装と、威力が6000で消費エネルギーが25の高火力低効率の兵装などを用意すると言った素人でも思い付くような単純明快な区別すら無いレベルでは武装の違いによってシミュレーションゲームの楽しさを生み出す事は難しい。

本作では(Gジェネシリーズ全般と言っても良いのかも知れないが)、「ビジュアル(表面)的な原作再現をすること」に終始しており、それを超えた「ゲームとしても楽しいもの」に昇華しているとは言い難い。

 

グラフィック

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まずまずのグラフィックディティー

クロスレイズにおけるグラフィック水準はそこそこと言った所だろう。
悪い訳では無いが、ディティール部分の美しさに欠けている。
機体の3Dモデルなどはまずまず良いのだが、背景のグラフィックはややチープな印象なのだ。
もちろん機体がそれなりに良く出来ていれば十分な及第点なのだが、もう少し上のレベルを狙っていけるようには感じる所だ。

システムの項でも少し述べているが、戦闘アニメーションでは原作のワンシーンを再現したものを使用しておりファンには嬉しい演出だ。
もちろん、ストーリーでも少しではあるが3Dモデルによるカットシーンが用意されている。

 

サウンド

クロスレイズにはサウンドエディションと言うバージョンが用意されており、サウンドエディションでは各作品を象徴するようなオープニング曲やエンディング曲が原曲で用意されている。
戦闘中に自分の好きなBGMを設定して流すことが出来る点も嬉しいポイントだろう。
ただし、オープニング曲やエンディング曲に関しては冒頭から流されるため、冒頭部分がサビから始まるような構成となっていない曲の場合には、戦闘アニメーション中にサビが流れない事になるためやや盛り上がり方に欠けてしまう印象を受けるかも知れない。

その他のBGMに関しては原作のBGMを再現したものを収録しているが、その品質自体は高くないため少々チープな印象を受けてしまうだろう。

 

総評

SDガンダム Gジェネレーション クロスレイズは原作再現に終始しただけの作品だ。

ストーリー、登場機体、戦闘アニメーション、BGMなど各要素のどこを切り取っても「原作再現」で止まっている。
原作アニメとゲームが、そして原作アニメ同士がクロス(交差)する事なくパラレル(平行)に動いてしまっているのだ。

 

外部記事

『SDガンダム ジージェネレーション クロスレイズ』は前作以上のボリューム!! カギを握る4人の開発者が語る本作の魅力とは!? - ファミ通.com

【レビュー】ポケットモンスター ソード/シールド

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剣と盾

ポケットモンスターソード/シールド(以下、ポケモン剣盾)は20年以上の歴史を持つポケットモンスターの本編シリーズが初めて据え置き相当のコンソールに登場した記念すべき作品だ。
映像のクオリティが格段に上がり、ワイルドエリアと言う広いフィールド、レイドバトルも話題を集めた。
また、話題を集めたのはポジティブな方面だけでなかったのも事実だろう。
据え置き相当の品質となった対価として全てのポケモンが登場できないという発表がE3のTree House Liveにて発表されたのだ。
品質を担保するためには、量が犠牲になる事は少なくない。
筆者としては品質を保証した決断に好感を持ったが、世間では必ずしもそうでは無かったようだった。
今回は発売前に嵐が吹き荒れたポケモン剣盾をレビューしてみたい。

なお、筆者はポケットモンスターソードのみプレイしている。
ストーリーやシステムなどに差はないハズだが、その点は留意願いたい。

 

ポケットモンスター ソード -Switch

ポケットモンスター ソード -Switch

  • 発売日:2019/11/15
  • メディア:Video Game
 
ポケットモンスター シールド -Switch

ポケットモンスター シールド -Switch

  • 発売日:2019/11/15
  • メディア:Video Game
 

 

ストーリー

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成長していくキャラクター達

ポケモン剣盾のストーリーは主人公の周囲のキャラクターの成長によって描かれる。
これはシリーズの傾向を受け継いだものと言えるだろう。

挫折したりしながらも真っ直ぐに成長していくホップ。
一見チャラチャラしているが旅をして学者としての知見を広めていくソニア。
他者依存の傾向があるが、自身の在り方を見つめなおしていくビート。
寂れた地元の人達のために戦う中で、自信を付けていくようになるマリィ。
各キャラクターはデザインを含めて非常に魅力があり、その成長していく姿は未来への希望を感じさせる物語になっている。

ストーリーの項で書くべき内容かは微妙だが、気になった点も示しておく。
特に気になるのは「選択肢のデフォルトが未選択状態になっていない」ことだろう。
選択肢を選ばせるようなセリフなどで誤ったものを選択しやすい。
この仕様のせいで筆者は技を思い出させようとして何度も名前を変更しようとしてしまった。
近年は選択肢の選択状態のデフォルトをAでもBでもない「未選択」にするのがユーザーフレンドリーであるため、主流となりつつあるだけに少々検討不足だったように感じる。
ただし、この選択のミスによって致命的な結果となる事は無いと言っても良く、大きなマイナスとまではならない。
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戦闘中に発生するセリフ

本作では戦闘中にもキャラクターのセリフが多数発生するのは本作の特徴だ。
以前の作品にも戦闘中にトレーナーのセリフが挟まるケースは存在したが、本作ではセリフがより充実している。
セリフの発生トリガーは「効果抜群を与えたとき」「急所に当てたとき」「最後の1匹になったとき」など様々だが、各トレーナーのキャラクター性を表現したセリフ内容によってキャラクターがより深く掘り下げる事ができているため面白い。

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クリア後に始まる短めの第二部

本作は大まかに二部構成で物語が構成されている。
第一部はお馴染みとも言えるが主人公を始めとした若い世代がチャンピオンを目指すものとなっており、第二部は伝説のポケモンを捕まえるための物語となっている。

第二部の物語自体はそこまで長いものでは無いが、伝説のポケモンを捕まえるためのストーリーをクリア後(チャンピオンになった後)に用意しているのは特徴的だ。

しかし、個人的にはこのような構成にしたために伝説のポケモンを捕まえるまでの道のりが長すぎるように感じた。
「伝説のポケモンを捕まえるための物語」ではなく、「伝説のポケモンと共に歩む物語」を用意して欲しかった所だ。
伝説のポケモンを捕まえてから始まる「伝説のポケモンとの物語」が用意されていれば伝説のポケモンであるザシアン・ザマゼンタという存在が掘り下げられたように思える。

 

システム

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奥深いバトルと親切になった育成と沼のようなこだわり要素

ポケモン剣盾では戦闘における大きな部分での変更はない。
基本の手持ちは6匹、そして1匹辺りに覚えられる技は4つと言う少ない手札となる。
手札が少ない中で、数多く存在するポケモンをどれだけ仮想敵としてカバーできるかと言う戦術を考える必要があるため、戦闘にはメタ要素も多くゴールの無い奥深いものとなっている点が本作が長続きするシリーズタイトルになっている所以の1つだろう。

過去作も同様であるが、ポケモンシリーズにおいてはチャンピオンになるまでは相手が何のタイプのポケモンを出してくるのかが予想しやすいため、バトルのチュートリアルの延長線上と言えるだろう。
本作のバトルの本質的な奥深さを知るには、クリア後要素である「バトルタワー」あるいは通信による他プレイヤーとの対戦が必須だ。

本作で変わったポイントを挙げるとすれば「育成のしやすさ」が真っ先に来るだろう。
敵から貰える経験値もレベル差によって補正がかかるのはもちろんだが、”けいけんちアメ”と言うものが新たに追加され、それを使用する事で任意のポケモンを簡単にレベルアップさせることが出来る。
それによって「○○タイプのポケモンを手持ちに入れたいが、育成に時間がかかってしまう…」という事はほとんど無くなったと言って良い。
レベルアップが手軽になったためストーリー上のジムリーダー戦で苦戦するような事はほとんど無いだろう。

また、「ハーブ」と言う要素によってポケモンの性格による能力補正を変更できるようになった。
これによりいわゆる「厳選」という作業の重要性は減ったのは素晴らしい反面、簡単に入手できるアイテムでは無いため、捕まえるだけで精一杯と言ったポケモンの場合に使うのが良いのかも知れない。

その他にも、手持ちからそのままボックスにアクセスできるなど、ポケモンの入れ替えもスムーズになっている。
ポケモンは古くからファストトラベルがあった作品だが、本作ではマップからファストトラベル可能になった。
移動にしても自転車にさえ乗っていれば、そのまま水上も走行できるようになるなど様々な点でも利便性が向上している。

初心者に対しての配慮がされているのも良い点だ。
特に最初のポケモン(いわゆる御三家)を手に入れてからの初戦のデザインは素晴らしいチュートリアルだ。
相手はポケモンを2匹持っているのだが、1戦目では手持ちポケモンが行える選択肢が少ないため簡単な戦い方のシーケンスを学ぶことができる。
1匹目の相手に勝つ事でポケモンがレベルアップするのだが、レベルアップするとタイプ一致の技を覚える。
2戦目では覚えたてのタイプ一致技を使いたくなるのは必然で、実際に使用すると効果抜群が発生する。
初心者であってもポケモンのバトルシーケンスと効果抜群など主軸のシステムが大まかに把握できるようになっている。

少々残念に感じるポイントとしては、近年のシリーズではポケモンが多様化した事により見た目から強みや弱みが認識しにくいという点だろう。
ポケモンのデザインがそのまま機能として成立するような域には到達しにくくなっており、最初期の頃と比較すると直感性が犠牲にされていると思わざるを得ない。
本作に限った欠点では無いが、デザインの工夫はもう一声欲しい所だ。

冒頭でも記載しているが、本作において話題になったポイントとして筆頭に上がるのは「全てのポケモンが登場しない」という点だろう。
確かに大好きな特定のポケモンが出ない事は悲しい事かも知れないが、品質と量は天秤にかけざるを得ない問題だ。
量を追い求める余りにグラフィックやアニメーション、レスポンスがチープになってしまうと、逆に印象が非常に悪くなるのは必然なのだ。
もしも簡単にポケモンを登場させられるのであれば、それをしない理由は無く、これが苦渋の決断だった事は明らかだが、量よりも質を優先した事は英断だったと言えるだろう。
なお、アップデートにより登場するポケモン種類が大幅に増える事が告知されている。
特定の大好きなポケモンがいる場合には今後のアップデートに期待したい所だろう。

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ポケモンが生きるワイルドエリア

ポケモン剣盾では従来にはない広いフィールドを歩き回れる「ワイルドエリア」が追加されている。
ワイルドエリアでは今までではあり得なかったような強力なポケモンがいきなり登場(シンボルエンカウント)する事もあり、ある種の生態系の様相を呈している。
また、ワイルドエリアは天候があり、天候によっても登場するポケモンが異なる。
このようにポケモンの強さや天候などでポケモンの生活感をより表現するように変化したのはポケモンと言う存在の厚みに繋がるため非常に良い要素だ。

このワイルドエリアでは様々なポケモンが登場するため、序盤から多様なポケモンを手持ちに加える事も可能になっている。
広いフィールドと言う見た目だけでなく、ゲームのバランスとしても挑戦的なデザインをしていると言えるだろう。

このワイルドエリアと言うフィールドへの要望を強いて挙げるのであれば、ポケモンの日常生活感をもっと感じさせて欲しかったという点だろう。
本作ではポケモンの生態系のようなものは感じ取れるが、食事であったり、昼寝であったりと言った生き生きとした様々な動きも見せてくれれば更に数段上の良さがあったように思える。
しかし、ポケモンと言う巨大なコンテンツにいきなりそこまでのものを要求するのは酷な話でもあるだろう。ここでは次回作に期待するべきものとしておきたい。

ワイルドエリアとは逆に、従来にあったような洞窟といったダンジョン形式のエリアは非常に簡素な構成になっている。
長い迷路のような構成にはなっておらず、成長の手間を軽減させている方向性と同様に冒険する上でストレスとなる要素を極力廃した格好だろう。
とは言え、ストレスが無さ過ぎるために記憶に残るエリアなどが無くなってしまっているのは少々寂しい所とも言えるだろう。
本作においてはワイルドエリアを除いたエリアが後世に語り継がれていくような事は少ないかも知れない。

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変わった前哨戦から始まるジムリーダー戦

ポケモンシリーズでお馴染みのジムリーダー戦ではユニークな前哨戦が用意されている。
前哨戦の内容はジム毎に異なっており、内容としてはパズルやピンボールライクなものなどで、難易度自体は低いものの一風変わった遊びになっている。

そしてジムリーダー戦では本作の新要素であるダイマックスを使用したバトルが展開される。
前述の通り、本作はレベリングなどの育成自体は容易いため、手持ちのパーティーがタイプ相性的に不利なメンツしかいなかったとしても、「有利なポケモンを新たにゲットして育成して…」といった作業は簡単に済ます事ができる。
そのため、本作のジムリーダー戦では苦戦するような事は過去作以上にほとんどないように思える。

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幅と便利さが向上したオンライン

ポケモン剣盾は従来から存在した通信機能の幅と利便性が増している。

まず、ポケモン交換といった通信によるマッチングが非同期にバックグラウンドで行われるようになり、プレイの進行を妨げないのは嬉しい改良ポイントだ。
これによって更に気軽に対戦や交換が行えるようになったと言って良いだろう。

そしてポケモン剣盾では新たにレイド形式のマックスレイドバトルが追加されている。
ポケモン初の協力中心のバトルだが、これは1人プレイ用にCPUが味方として手伝ってくれるものも用意されている。

しかし、このレイド戦は少々手が届ききっていないように見受けられる。

レイド戦では戦闘シーケンスが通常のバトルとはやや異なり、HPが下がるとダメージバリアを張り、バリアの耐久値を削らないとHPに大きなダメージが与えられなくなる。
だが、(自身のダイマックス中の攻撃を除き)全ての攻撃でバリアの耐久値を削る値が変わらないため、事前準備や戦闘中の攻撃による戦術性・戦略性が低い。
また、敵の放つ強力な攻撃にしても単純に自分のポケモンのHPで受け切るという選択肢が中心になってしまっている。
せっかく他プレイヤーとの協力するプレイであるにも関わらず、戦術性が低い単純な消耗戦にしかならないのは勿体ない。
もちろん、パーティー全体を回復する技を持っているポケモンやタンクのように攻撃を引き受ける技を持っているポケモンもいるにはいるが、その数は少なく出番が無いと言っても良い。
レイド戦を意識した攻撃・盾・回復と言ったロールを決定付ける技をもっと多く、そしてもっと多くのポケモンが覚えるようにお膳立てしても良かったのではないだろうか。
もしくはレイド戦に限り、使用可能な技の枠を5~6つに増やし、レイド用の技を設定しやすくするのも手段としては良かったように思える。

また、マックスレイドバトルをオフラインの1人プレイで行おうと思うと更なる問題が出て来る。
1人プレイやレイドの参戦人数が少ない場合には頭数を埋めるためにCPUが参戦する。ところが、このCPUがとにかく頼りなさ過ぎるのだ。
当たり前のようにコイキングなど進化前のポケモンを場に出し、レイドボスの攻撃を受け切れずに一撃死を繰り返す。
確かに友達よりも頼りになるCPUがいても1人でプレイする方が効率が良くなるため困った事にはなるが、これ程までに足を引っ張ってしまうレベルに調整するのはいかがなものかと思えてならない。

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ポケモンと触れ合うキャンプ

ポケモン剣盾ではポケモンと触れ合う新たな要素にポケモンキャンプが追加されている。
ポケモンとはねこじゃらしやボールで遊ぶことができ、そのリアクションはとにかく可愛らしい。

また、キャンプではカレーを作れる。
カレーにはワイルドエリアにて採取した木の実などの食材を入れる事ができ、味付けを決めることが出来る。
カレーは数多くの種類が用意されており、これを全て埋めるだけでもかなり大変な量が用意されている。
出来上がったカレーを観ていると、こちらもカレーを食べたくなってくるのは憎い演出だ。

 

鎧の孤島

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鎧の孤島

「鎧の孤島」はポケットモンスターシリーズ初となるDLCの第一弾として配信された。
ボリュームとしてはストーリーのクリアだけであれば5時間程度のものとなっている。
目玉としてはやはり本編では登場しなかった過去作のポケモン達が多数登場するという点だろう。

 

ストーリー
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素晴らしい新キャラクター達

鎧の孤島ではダンデが修行したと言う道場に入門する事になるという形でストーリーが展開する。
この鎧の孤島にて新たに登場するキャラクター達は非常に濃く、ストーリーを引っ張っている。

筆者はソード版であるためクララがライバル的なポジションで登場したのだが、彼女のキャラクター性は非常に魅力的だ。
クララは強くて可愛い自分を目指し、”どくタイプ”のジムリーダーとなるべく道場へと入門したものの、怠け癖があるようでなかなか成長しきれないでいたようだ。
しかし、主人公という自分よりも強力な存在の登場によって徐々に火が付いていく。
鎧の孤島のストーリーは短いものだが、このクララの変化をしっかりと描いており、無駄なく簡潔でありながらも印象的な構成になっている。

ストーリーでは道場での「修行」という名目で孤島をまんべんなく探索するようになっており、DLCチュートリアルとしても十分に機能しているといえるだろう。

なお、鎧の孤島の難易度は本編をクリアできるだけのポケモンがいればそう難しいと感じる事は無いハズだ。

 

システム

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新たなポケモン、新たな要素

鎧の孤島では本編には登場しなかった新たなポケモンが多数登場する。
完全に新規のポケモンはダクマとガラル地方のヤドンとヤドランとなっている。
なお、これらのDLCで追加されたポケモンは交換やポケモンHOMEなどから連れてくれば、DLC未購入のプレイヤーでもゲットが可能になっている。

鎧の孤島のフィールドはワイルドエリアのような形式になっている。
孤島が舞台になっているためフィールドは水辺(海)が非常に多くなっているのが印象的だ。
また、鎧の孤島のストーリーを進める事で手持ちで先頭になっているポケモンを連れて歩けるようになる。機能としてはポケットモンスターピカチュウやLet's Go ピカチュウ/イーブイを想像するのがわかりやすい。
本編のワイルドエリアではできないのは少々残念なものの、鎧の孤島フィールド内ではどのポケモンも自由に連れ歩ける。
小さなポケモンから大きなポケモンといったスケール感はもちろん、歩き方まで様々であるため面白い。

その他にも育成を手助けしてくれる要素も多く追加されていたり、ヘアスタイルや服も追加される。

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ディグダの捜索

フィールドに散らばったアローラ地方ディグダを探す探索要素も存在する。
このディグダは全部で150匹とかなり大量にいるが、見つけた数に応じてアローラ地方ポケモンを貰う事が可能でだ。
このディグダ探しは見つけようと思わないと通り過ぎてしまう絶妙な難易度になっており、フィールドを目を凝らして探す必要がある。

 

冠の雪原

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冠の雪原

「冠の雪原」はポケモン剣盾のDLC第二段として配信されたコンテンツだ。
追加された内容はストーリーこそ第一弾よりも薄いものの、エンドコンテンツあるいはそれを助けるような要素が多いのが特徴的なものとなっている。

 

ストーリー

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"ポケモン"のストーリー

冠の雪原では豊穣を司る伝説のポケモン「バドレックス」に関しての物語が展開される。
バドレックスはかつては豊穣の力によって信仰されたが、いつしか忘れ去られ信仰も無くなり、おとぎ話として語り継がれる程度となっていた。
長い年月と共にバドレックスは力を失いつつあり、人間の信仰がなくとも生きていきたいと主人公に相談を持ち掛ける。

バドレックスは人間を操る事で主人公と会話をする事になるため「人とポケモンがほとんど直接的にコミュニケーションを行う」というポケモンシリーズでも非常に珍しい設定となっている。
多くの過去シリーズや本作の本編、DLC鎧の孤島などでは「人間(ポケモントレーナー)の成長」が描かれる事が多かったが、冠の雪原ではポケモンを中心としたストーリー構成になっているのは印象的だ。

 

システム

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数多の伝説ポケモン

冠の雪原では本編に登場しなかった過去作のポケモンDLC第一弾から更に追加されているほか、最大の見どころとして「過去作の伝説ポケモン達が数多く登場する」というロマン溢れる要素が追加されている点だろう。
中にはリージョンフォームとなった目新しいファイヤー、サンダー、フリーザーが登場する事も見逃せない。

また、「ダイマックスアドベンチャー」という過去作の伝説ポケモンを捕まえる事ができるコンテンツが追加されている。
ダイマックスアドベンチャーは基本的にはレイド戦(マックスレイドバトル)形式で行われるのだが、特殊なルールも適用される。
レイド戦の連戦であるという点もユニークではあるが、中でも最もユニークなのはポケモンをレンタルして戦う点だろう。
普段は使わないようなポケモンもお試しできる要素になっているため、ポケモンの思いがけない良さを知る機会にも繋がっている。

 

グラフィック

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牧歌的で暖かみのある美しいフィールド

ポケモン剣盾はの鮮やかで美しく、それでいて暖かみのあるフィールドは魅力的だ。
牧歌的な田舎町や近代的な都市部、自然豊かなワイルドエリアは天候によっても表情が変化する美しさを有している。

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可愛らしいキャラクター達

キャラクターやポケモンモデリングも非常に丁寧に出来ている。
キャラクターのアニメーション(モーション)も丁寧で、アバターに関して言えば階段を歩くと専用のモーションが用意されているほか、操作キャラクターの移動方向を反転させると僅かだが専用に振り返りモーションがあり、高速回転させるとクルクル回った後に決めポーズをとる。
天候によっても待機モーションに変化があるなど芸が細かい。
ポケモンに関しては前述した”キャンプ”でみせる可愛らしいモーションなども素晴らしい。

本作でもアバターの着せ替え衣装が用意されているが、ゲーム内メーカーが設定されている点もこだわっているのが感じられる。
スポーツ系のウェアを提供するメーカーなど、メーカー毎の特徴が設定されており世界観に厚みを持たせている。

 

サウンド

ポケモン剣盾はBGMも良く出来ている。
イギリス感のあるバグパイプを使用したBGMも特徴的であるし、バトルBGMはサッカーなどで使用されるようなスポーティーな雰囲気がポップだ。
特にライバル戦やジムリーダー戦のバトルBGMは雰囲気を盛り上げてくれること間違いなしだろう。
特にライバル戦のBGMは物語終盤でアレンジが変更されたものが用意されており、キャラクターの成長を描く役割としても良く出来ている。
また、ジムリーダー戦などでは最後のポケモンになるとBGMに掛け声が追加される演出がシームレスに差し込まれバトルのクライマックス感を演出している。

 

総評

ポケットモンスターソード/シールドは歴史あるシリーズを更なるステップへと押し上げた偉大な一作だ。

丁寧な作り込みは初心者でもプレイしやすく、奥深いバトルによって長く牽引するようになっている。
暖かみのあるフィールドに可愛らしいキャラクターモデリング、こだわりを感じるアニメーションも印象的だ。
ポケモンとの触れ合いも更に充実しているほか、ゲーム内衣料品メーカーも個性を出しており「ポケモン」という世界観に厚みを生み出している。

本作はポケモンシリーズの新たなスタンダードだ。

 

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