【レビュー】ゼノブレイド2

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オレは君と行きたいんだ。楽園に。君と二人で。

今回のレビューは非常に長文となる。その点だけは注意して読んで欲しい。

筆者はゼノシリーズが大好きだ。
元々、敬虔なスクウェア教徒であった筆者はゼノギアスも好きな作品であった。
また、ゼノブレイドでは当時(2010年頃)のJRPGに辟易していた筆者を心の底から驚かせた。JRPGと言うジャンルの未来に対して希望が生まれたような瞬間だったのだ。
それから5年後(N3DSへのゼノブレイドの移植という驚きもあったのだが)、新作となる「ゼノブレイドクロス」も登場した。

そしてゼノブレイドクロスから”わずか”2年後の2017年。
Nintendo Switchプレゼンテーションにおいて「ゼノブレイド2」が2017年内に発売される事が発表されたのだ。その後もE3やGamescomなどでもゼノブレイド2の説明やゲームプレイが公開されていった。
当時の筆者はというと、自分自身から込み上げてくる期待感…ハードルを何とか下げたかった。自身の中のハードルを上げ過ぎたせいで、それがガッカリ感に繋がってしまうのではないかと言う不安があったのだ。
不安になる要素はいくつかあった。
真っ先に挙げるのはリリース間隔だ。ゼノブレイドクロスから2年間しか経ていない。そしてその2年間のモノリスソフトと言えば、ゼルダの伝説 Breath of the Wildやスプラトゥーンと言った任天堂フランチャイズタイトルの一部を受託開発しているのは知られていたし、プロジェクトXゾーンの開発も行っていた。
そんな状況下においてモノリスソフトというメーカーがゼノブレイドシリーズのような巨大なゲームを開発する余裕があると思えるだろうか。普通に考えれば無理な話である。
筆者はそんな状況は脳内では理解できつつも、ハードルを下げるという事は感情が許してくれなった。

そして2017/12/01…ゼノブレイド2は発売してしまったのである。

 

Xenoblade2 (ゼノブレイド2) - Switch

Xenoblade2 (ゼノブレイド2) - Switch

  • 発売日: 2017/12/01
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

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ジュブナイル&ボーイミーツガール

ゼノブレイド2のストーリーコンセプトは”ジュブナイル&ボーイミーツガール”だ。
舞台は雲海(現実世界のものとは性質が異なる)だけが広がる世界アルストで、動植物達は巨神獣(アルス)といわれる巨大な生物の上で生活している世界観である。
しかし、近年では巨神獣の数が減り人々が安心して暮らせる土地がなくなりつつあるという。アルストは徐々に、そして確実に衰退しつつある世界なのだ。
主人公であるレックスは雲海の中から物資を引き上げるサルベージャーと呼ばれる仕事に従事する少年だ。そんなある日、とある仕事により特別なブレイド「天の聖杯」と呼ばれている”ホムラ”という少女と出会い、そして彼女が望む”楽園”を目指す冒険を始める。

ゼノブレイド2においてはレックスは最初から最後まで一貫して”楽園”を目指し続ける。
常に皆の先頭を走り、時に挫折しながらも、それでも前に進んでいく主人公だ。
主人公が世界の状況や真実を知る事により最初に抱いていた夢が後回しにされるケースは少なくない。
しかし、レックスはどんな状況に置かれても決して惑わずに夢に向かって走り続ける。その姿はボーイミーツガール(運命的な出会い)と言う設定もあいまって昔見ていたアニメなどを思い出さずにはいられない。
また、過去のゼノシリーズにもあったが本作でもプラトンの思想やそれに影響を受けたグノーシス主義がフレーバーとして散りばめられているほか、本作では「永劫回帰」などのニーチェの思想が強めに引用されているものと思われる。
主人公であるレックスに関しても「超人」あるいはニーチェから影響を受けたアドラーの「共同体感覚」をベースとした主人公像となっているように捉えられる点は設定として興味深い。

ゼノブレイド2はストーリードリブン(物語主導)なゲームプレイとなるのだが、そのボリュームは相当なものであるため、ストーリー含めてじっくりとプレイしたい人にオススメだ。
特にメインストーリーの進行で発生するカットシーンは非常にクオリティが高い。
キャラクターの表情や演技が細部まで作り込まれている事はもちろん、カットシーン中に喋っていないキャラクターもしっかりとリアクションを行っており演出として非常にリッチだ。
他にもカメラワーク、音楽の使い方…映像演出として取り上げられるポイントのどれもが素晴らしく、濃密で高品質な3Dアニメ映画でも観ているようだ。 
シナリオ自体も時に熱くさせられ、時に切なくなるジュブナイルものに仕上がっている。
また、本編では直接語られていない要素やサブストーリーでわかる世界設定なども多く、上述の通りプラトンニーチェといった思想が引用されているためメタ的な視点による解釈も可能であるため、濃い設定が好きな人は考察を含めて更に楽しめるだろう。

そんな本作にもストーリー面で欠点がないわけではない。
それはカットシーンによる映像演出において表現不足と言わざるを得ない箇所がある点だ。特に重要なカットシーン演出では非常に高い品質であるのだが、中盤頃の一部のカットシーンではやや表現が甘く、映像による説得力が落ちているのは非常に勿体ない。

また一長一短な要素として、本作は日本アニメらしい表現(特に序盤~中盤)が使用されている事もあるため、アニメ的表現が好きか否かで受け止め方も異なってくるだろう。
ただし、根本的にグラフィックスタイルがスタイライズドなアニメ調であるため、「アニメ的表現がある」ことを「一短」と言い切るのも少々お門違いだろう。
そういう意味ではキャラクターデザインの段階で好きになれそうか判断するのが良いと言える。

なお、本作は前作ゼノブレイドおよびゼノブレイドクロスをプレイせずとも楽しむ事が出来るようなストーリーとなっているが、可能であれば過去作(特に初代であるゼノブレイド。出来ればゼノギアスゼノサーガも。)をプレイする事で更に面白いものとなる。
ここの記載は少しだけネタバレを含むものとなるが、「なぜホムラやメツの剣は片刃なのか」「最後のトリニティプロセッサーはどこへ行ったのか」「なぜ扉(ゲート)と言われる存在は機能停止していたのか」「なぜ扉(ゲート)は消えたのか」など、本作だけでも理由を考察できるものもあるが、シリーズを知っていればより考察しがいのあるものも多く用意されている。
歴代ゼノシリーズファンにとっても嬉しい要素が満載の重要な作品なのだ。

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ドライバーとブレイドの絆

ゼノブレイド2を”ジュブナイル&ボーイミーツガール”という表現をしたが、ストーリーは「ドライバーとブレイドの絆」が非常に大切に描かれている点も決して見逃してはならないポイントだ。

ブレイド」とはコアクリスタルという物質に生命体が触れる(同調する)事で誕生する亜種生命体と呼ばれる存在だ。
コアクリスタルは誰でも同調できると言う訳ではなく、同調するための適性があり端的に書いてしまえば選ばれた者しか同調は行えない。
そしてブレイドと同調する適性のあった者は「ドライバー」と呼ばれる。
ブレイドは「ドライバーの身体能力の向上」「武器を生み出す」と言った特性の他に「ドライバーの状態・感情を大なり小なり感じ取れる」「ドライバーが死ぬとコアクリスタルに戻る」「戻ったコアクリスタルと同調しても以前の記憶はない」といった設定が存在する。
これらの設定を文章で書いたところで伝わりにくいかも知れないが、ドライバーとブレイドの関係とは「一心同体」の運命共同体であり、かけがえのない家族であり、友人であり、恋人なのだ。
彼らはその絆ゆえにお互いを大切に想い、同様にその絆ゆえに深淵の闇へと堕ちていく者達もいる。
レックスを始めとしたパーティーも一歩間違えれば闇へと堕ちてしまったのではないかと思えてならない。

この辺りの表現はいわゆる「家族もの」などにすっかり弱くなってしまった筆者には非常に心に刺さるものが多かったように思う。
「もしも自分がブレイドだったら」「もしも自分がドライバーだったら」と考えずにはいられない非常に考えさせられる設定だ。

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ブレイドエストとキズナトーク

ブレイドには著名なイラストレーターが描き下ろしたデザインを基に作られた「レアブレイド」と呼ばれるものが存在する。
そのレアブレイドのほとんど全てにそれぞれに対応した専用のクエストが存在しており、それがブレイドエストと呼ばれるものだ。
ブレイドエストでは専用のカットシーンが用意され、レアブレイドのキャラクター性を掘り下げたり、キャラクター性を活かした内容のストーリーを観る事ができるクエストとなっている。
なお、クエストで観たカットシーンに関しては後から見返す事も可能になっている。

キズナトークはキャラクター同士の会話が繰り広げられる。
その内容は多岐にわたり真面目なものや笑えるものなど様々だ。
また、キャラクター性やキャラクター間の関係性、世界設定について補完するものとしても機能している。
ゼノブレイドシリーズをプレイしている方にはお馴染みの要素だろう。
過去作と大きく変化したポイントは全てフルボイスとなったと言う点だ。
このキズナトークは非常に多く用意されており、その中身に関しても主要キャラクターのものを始め、レアブレイド専用のものも用意されている。
キズナトークに関してはブレイドエストのカットシーンとは異なり、後からいつでも見返す事ができない。ストーリーテリング上、仕方がないとは言え少々残念にも思える。
またマイナスとまではいかないが、ボイスを付けるようにしたのであれば是非とも会話のオート送り機能も実装して欲しかった所だ。

ストーリー本編のボリュームも凄まじいのだが、数多くいるレアブレイドをフィーチャーしたカットシーン付きの専用クエストやパーティーメンバーやレアブレイドによるフルボイスのキズナトークなどそのボリューム感は常軌を逸しているレベルであると言えるだろう。

もう1つレアブレイドという存在を語る上で忘れてはならないポイントがある。
レアブレイド達は多種多様なイラストレーターによって描かれているために見た目や雰囲気がまるで違うため、必ずしも様式美的な統一された表現ではない。
しかし、このバラバラである事こそがシリーズにおいての本質的とも言える部分を捉えているポイントなのだ。
「Xeno」とは「異種」を表す言葉である。
過去作のゼノシリーズにおいては「異種族」であったり「異星人」であったりと「自身とは異なる存在との交流」を描いてきた事が多い。
様々なイラストレーターを起用した、表現が統一されていない様々なブレイド達の存在は正に「Xeno」を体現した象徴なのだ。

 

キャラクター

ゼノブレイド2のキャラクターについても記載させて欲しい。
なお、一部ゲームシステムにも突っ込んだ内容を記載している点はご容赦願いたい。

 

レックス

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レックス

主人公であるレックスは非常にまっすぐで熱血だ。
レックスは常に前を向き、誰よりも先頭を走り続けパーティーの皆を引っ張って行く姿はまだ子供とは言え非常に頼もしい。

レックスの主人公像は近年の傾向も鑑みて設定されているようだ。
つまりは近年の主人公像に対してのCounterattack(アンチテーゼ)のような側面もあるのかも知れないが、近年では確かに見なくなってしまったクラシックな主人公でもあるのではないだろうか。
また、前述のニーチェアドラーといった思想を大きく感じさせるものともなっている点は考察や解釈を行う上では見逃せない。

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ピンチでも女の子の前で余裕ぶって見せる表情は作り込みを感じさせる

レックスは下野紘さんが声を担当している。
下野さんの演じるレックスは非常に素晴らしい。
特に感情のこもった力強く叫ぶセリフには感情が大きく揺さぶられるものが宿っている。
他にもニアとのふざけ合ってる感じの仲の良さが伝わってくる演技なども印象的だ。

 

ホムラ

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ホムラ

ホムラは本作のヒロインの1人だ。
ホムラは”天の聖杯”と呼ばれる非常に特殊なブレイドである。

ホムラは基本的におとなしく、誰に対しても優しく少々頼りない印象はあるが芯の部分は強く非常にしっかりしている印象だ。
彼女は母性を体現したような存在であり、他者に対して常に優しく接する。
筆者の受け取り方は…という前置きは入れておくが、ホムラはレックスの事を「年下の男の子」として接しているように感じた。
主人公レックスを「恋愛対象として意識しすぎていない感」がむしろ筆者には好感が持てたポイントだ。

彼女には後述するもう1つの人格”ヒカリ”が存在する。
ゼノシリーズにおいて”母性”や”複数の人格”というキーワードとなるとゼノギアスにおける”エレハイムとミャン”(複数の人格であれば他にも”臆病者とイドとフェイ”)を思い出す人も多いかも知れない。
だが安心して欲しい。本作におけるホムラとヒカリは非常に仲が良いのだ。
この辺りに関してもフロイト的な側面の強かった過去のゼノシリーズというよりも、アドラー的な側面が強いと感じられるポイントと見ても良いかも知れない。

ホムラの戦闘時の能力的には火力特化型で、その瞬間火力はヒカリを上回る。
ヒカリからホムラへとスイッチした際に「ここは加減が必要です」などと言う割に彼女自身は加減を知らないのである。
キズナが育てばブレイドコンボでカンストダメージを叩き出すなど恐ろしい女の子になるのだが、逆に火力が上がりすぎてヘイトを奪ってしまう事も多いため注意した方が良いだろう。

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ホムラは優しくも芯の強いお姉ちゃんだ

ホムラは下地紫野さんが声を担当している。
ファミ通のインタビューやサウンドトラック付属のブックレットによると、ゼノブレイド2においては当初はカットシーンのセリフの時間を計るために起用されており、そのまま製品においてもホムラ・ヒカリを演じる事となったようだ。

ちなみにグッドスマイルカンパニーよりフィギュアが発売されている。
(筆者は既に購入済みだ)

ゼノブレイド2 ホムラ 1/7スケール ABS&PVC製 塗装済み完成品フィギュア

ゼノブレイド2 ホムラ 1/7スケール ABS&PVC製 塗装済み完成品フィギュア

  • 発売日: 2018/12/22
  • メディア: おもちゃ&ホビー
 

 

ヒカリ

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ヒカリ

ヒカリは本作におけるもう一人のヒロインだ。前述のとおりホムラの別人格である。

筆者は任天堂公式のゼノブレイド2 Directにてヒカリを見たときに「きっとホムラとは正反対のキャラクターなのだろうな」と予想していた。
つまり「優しいが少々頼りないホムラ」の反対「厳しくバリバリと仕事をこなす事ができるキャリアウーマン的な存在」がヒカリになるのだと思っていたのだ(予想していたのはゼノブレイド2内のベンケイのような性格が最も近い)。
だが、実際にプレイしてみると…なんと可愛らしいキャラクターであることか。
端的な表現をしてしまえば”ツンデレ”に相当する性格をしており、キリッっとカッコよく登場したかと思えば、すぐにポンコツな一面や少々ガサツな一面が判明したりと非常に可愛らしい事がよくわかる。

能力的にはアーツリキャスト関連の能力が揃っており、終盤頃までの心強い存在になってくれる事だろう。
しかし、各国の発展度が向上して上質なポーチアイテムが登場し始めると、ポーチアイテムだけでアーツのリキャストに困らなくなってしまうため、ケースによっては純粋に光属性のブレイドとして起用する側面もあるだろう。

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ヒカリはツンデレでややポンコツな所があり可愛らしい

ヒカリはホムラ同様に下地紫野さんが声を担当しており、その演じ分けは非常に丁寧だ。
ホムラが人当たりが優しい喋り方であるのに対して、ヒカリはかなり自信家な喋り方である事が演技からも非常に良く表現されている。

ちなみにグッドスマイルカンパニーよりフィギュアが発売されている。
(筆者はこちらも購入済みだ)

ゼノブレイド2 ヒカリ 1/7スケール ABS&PVC製 塗装済み完成品フィギュア

ゼノブレイド2 ヒカリ 1/7スケール ABS&PVC製 塗装済み完成品フィギュア

  • 発売日: 2019/03/20
  • メディア: おもちゃ&ホビー
 

 

ニア

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ニア

ニアは本作における更にもう一人のヒロインと言っても良いだろう。
彼女の存在なくしてゼノブレイド2は語る事はできない。

ニアはパーティーメンバー内において基本的にはツッコミをする役回りであり、少々生意気で口は悪いのだが、言葉のチョイスやコロコロ変わる表情、良く動く可愛らしいケモノ耳など非常に可愛らしい面も多い。

ニアも他のキャラクター同様にレックス達に隠している事があるのだが、それを知る時には彼女の事が心から愛しい存在になっているだろう。

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ニアは生意気な所もあるが根は素直で良い子だ

ニアは大和田仁美さんが声を担当している。
大和田仁美さんの演じるニアは実に生き生きとしている。
コミカルなシーンでみせる切れ味鋭いツッコミ。
シリアスなシーンの落ち着いたトーン。
どれも印象深いのだが、それはやはり大和田さんの演技あってこそであったと思う。
ファミ通のインタビューやサウンドトラック付属のブックレットによるとホムラを演じる下地さん同様にカットシーンの時間を計るために起用されており、そのまま製品においてもニアを演じる事となったようだ。

ちなみに少々ネタバレを含むデザインだがニアもグッドスマイルカンパニーよりフィギュアが発売される。
(当然筆者は購入済みだ)

 

トラ / ハナ

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トラとハナ

トラはゼノブレイドシリーズではお馴染みのノポン族の少年だ。
トラと言う名前のノポンはゼノブレイドクロスにおいても登場しているのだが同名の全くの別人である(ノポン族のキャラクターは作品毎に同名の別人が登場する事が多い)。
彼は2000年代中期頃のオタク文化的な趣向があるものの、基本的にはノポン族らしくマイペースでワガママだ。しかし、その見た目や声の影響からか憎めないムードメーカーと言うのが最も適切ではないだろうか。

トラの声は野中藍さんが担当している。
ノポン族特有の憎めないキャラクターになっているのは、野中さんの声質のおかげである事も影響しているのではないだろうか。
筆者もゼノブレイド公式Twitterにてトラの声優が野中さんだと公表された際にはピッタリだと思ったものだ。

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ハナ

人口ブレイドであるハナは、トラ(とその父と祖父)がドライバーに憧れた結果に誕生した機械仕掛けのブレイドだ。
仲間達に対しては非常に優しく接するのだが、トラの事を「ご主人」とは呼ぶものの基本的に扱いはぞんざいである。
また、そんな扱いに対してツッコミを入れるトラとのやり取りは微笑ましい。

ハナの声は久野美咲さんが担当している。
物語後半でレックスに対して発した優しく叱咤するセリフやエンディングのやりとりには思わず涙が出てしまった。
久野さんと言うと舌足らずなロリ系を演じる事が多いかと思うが、あの舌足らずな感じがあるからこそトラの事をぞんざいに扱っても悪い子ではないと感じるのではないかと思う。

 

メレフ / カグツチ

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メレフとカグツチ

メレフはスペルビア帝国の特別執権官と言う肩書を持つと同時に帝国最強のドライバーだ。

筆者は当初、メレフは中盤に立ちはだかるハードルとしての存在なのではないかと思っていたため、想像よりも早く仲間なった印象だ。
メンバーの中では最も常識的な人物だ。

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カグツチ

カグツチはメレフのブレイドであり、メレフ同様に非常に常識的な人物である。…料理の知識は皆無のようだが。
カグツチはこの物語において多くのブレイドがどのような事を考えて生きているのかを示してくれる(代弁してくれる)存在でもある。

 

ジーク / サイカ

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ジークとサイカ

ジークは基本的にコミカルなキャラクターだが、シリアスなシーンで見せるギャップはズルいほどにカッコいい。
ふざけているように見えて、本当は強くて頼りになる兄ちゃん的な存在だ。
そんなのカッコよくない訳がない。

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イカ

イカジークのブレイドであり、基本的にはジークに対してツコッミを入れる役回りが多い。
とは言え、サイカジークに対してかなりの好意を持っているのがわかる。
そうであるが故に彼女も一歩間違えればイーラのような存在になってしまったのではないかと筆者はつい想像してしまう(これは他のキャラクターにも同様に言える事だ)。

筆者がジークとサイカの二人の関係性で最もグッとくるのは一見ジークがふざけておりサイカがしっかりしているように見えるが、本質的にはジークの方がどっしりと構えて頼りになる存在である点だ。

 

セイリュウ 
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セイリュウ

セイリュウの立場も非常に懐かしいものを感じた。
筆者が小学生の頃に見ていたアニメなどでは、セイリュウのようなアドバイスや諭す年長者タイプのキャラクターがいた気がするのだ(作品など具体的に出てこなくて恐縮だが)。

セイリュウ千葉繁さんが声を担当している。
千葉繁さんは本作品の演者の音響監督も務めた

 

システム

本項ではゼノブレイド2のシステムに関して記載していこう。

 

バトル

ゼノブレイド2のバトルシステムは筆者がプレイしたゲームの中でも間違いなくトップクラスの完成度のシステムであると断言して良い。
脳内麻薬が溢れ出るような感覚を覚えるレベルの快感は本作のとても大きなポジティブ要素である。

詳細は後述するとして、ゼノブレイド2のバトルの欠点について最初に書いておこう。
それは”難解(万人向けではない)”という点だ。
これは野球と言うスポーツが世界で流行しにくい現象と似ていると筆者は思っている。
野球は得点できるまでのシーケンスがサッカーなどと比べて明らかに難解だ。
「なぜ1塁に向かうのか」「なぜゴロを処理してアウトにできるのか」など楽しむのに必要不可欠となるルール自体を理解するのに一定の教養・知性あるいは知識を要求される。これは理解できるから凄い/偉いといった類いの話ではなく、「遊びの楽しさを理解できる領域(奥深さ)に到達しにくい」という事なのだ。

ではなぜ難解に感じるのかであるが、単純な要素の多さ以外にもチュートリアルにいささか問題があったように思う。
具体的には「戦力が整っていないのに戦術・戦略を教えすぎ」なのだ。
筆者も同様だったのだが、ブレイドコンボやドライバーコンボのチュートリアルが登場したタイミングではパーティーメンバーの戦力が全く整っていなかったため、それらを狙って発動させる事が難しい。
チュートリアルで説明された内容が通常バトルで簡単に再現できない状態では「バトルシステムが難しい」と感じてしまっても仕方ないように思う。
一応、敵の難易度調整として「序盤はアーツや必殺技」「中盤以降は必殺技やブレイドコンボ」で倒す事が想定された体力設定になっているようには感じるが、チュートリアルの仕組み、あるいはタイミングはもう少し検討した方が良かったのではないだろうか。

なお、チュートリアルに関してはゼノブレイド2の公式から一覧が公開されている。
使いこなせていないと感じた場合には再確認してみると良いだろう。
・チュートリアル1(バトル関連)

・チュートリアル2(装備やキャラクター強化など)

・チュートリアル3(探索など)

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美しくデザインされたバトル

ゼノブレイド2のバトルを端的に表現すれば「ぷよぷよ式」だ。
ぷよぷよ”は相手を倒すために連鎖を仕込む。そしてその連鎖が多ければ多いほど強力だ。ゼノブレイド2のバトルシステムに関してもコレと共通項が多い。
"ぷよぷよ"の連鎖させるための事前準備(積み上げ)がゼノブレイド2において「ブレイドコンボ」と呼ばれる属性玉を作り上げる工程と同様と言える。
また、積み上げた連鎖を発火させる方法はゼノブレイド2においては「チェインアタック」と言う要素が相当するのだ。
なお、ブレイドコンボやチェインアタックの詳細は後述する。

では、”ぷよぷよ”のような「積み上げていく事へのリスク」は存在するのかという点だが、そこに関してもしっかりと存在している。
リスクの1つ目は発火の役割を担うチェインアタックがパーティゲージを全消費してしまう事だ。
パーティゲージはHPが0になったキャラクターを復帰させる際にも使用するのだが、このゲージをMAXまで溜めた状態から全て消費する事で発動させる必要がある。つまり、チェインアタックで仕留め切れない状況にでもなれば途端に大ピンチになるのだ。
リスクの2つ目は敵へのダメージ量だ。
強力なユニークモンスターなどは体力が減る事で強力な攻撃を放つようになったりするのだが、連鎖の仕込みを行うためには威力の高いブレイドコンボを決めていかなければならない。
つまり、連鎖を仕込めば仕込むほどに敵が強力な攻撃を発動してくるリスクがあるのだ。
いかに迅速に仕込み、敵の強力な一撃を受けずに発火させるかも重要な要素となっている。

一般的にJRPGと呼ばれるゲームで多い「レベルを上げて(装備を整えて)殴る」構図はシンプルかつ確実性の高い楽しさを生み出す一方で、バトルが予定調和の単純作業と化し飽きが生まれやすい。
本作のバトルの奥深さの所以はこの”ぷよぷよ”のようなパズルゲームとの類似性がある点も考えられる。

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バトルデザインは美しく、隙を生じぬ四段構えだ

本作のバトルシステムの要素の関係性を簡潔な図にすると上図のようになる。
オートアタックはアーツを。
同様にアーツは必殺技を。
必殺技はブレイドコンボを。
ブレイドコンボはチェインアタックを。
…と全ての要素が1つのラインで美しく繋がっている。
これについても説明していこう。

過去作のゼノブレイドシリーズのバトルシステムにおいてはオートアタックとアーツによって戦術を組み立てるものとなっていた。
本作、ゼノブレイド2においてはこの部分においても非常に質の高い改良が行われているのだ。

オートアタックとはいわゆる通常攻撃であり、戦闘中に何もしていない時に発生する威力が低めの攻撃の事だ。
対してアーツは技のようなもので、発動させる事でオートアタックよりも大きなダメージやバフ・デバフ、回復を行うものとなっている。
アーツは連続で使用する事はできず、リキャストと呼称される再チャージ完了まで再発動はできない。

ゼノブレイドゼノブレイドクロスにおけるアーツのリキャストは時間経過により発動可能となるものが基本となっていた。
この構造は捉え方を変えるとオートアタックとアーツがそれぞれ独立あるいは競合した機能となっている事を意味している。

しかし、本作ではオートアタックとアーツの関係性の変更が行われ、非常にエレガントなバトルデザインへと昇華している。
まず、本作においてのアーツが時間経過ではなく「オートアタックを当てる事でアーツを使用できる」ように変更されている。
これにより独立・競合した機能となっていたオートアタックとアーツの関係性が直列的な共生関係・依存関係を持ったシステムになったのは大きいポイントだろう。
更に、「アーツを使用する事で必殺技が使用できる」ようになっている二段構え。
更に更に、「必殺技を繋げる事で強力なコンボとなるブレイドコンボ」というシステムによる三段構え…。
更に更に更に、「ブレイドコンボを積み上げた所で前述した”ぷよぷよ式”の連鎖発火を行うチェインアタック」へと昇華する隙を生じぬ四段構えだ。

この「多重構造の依存関係」で構築されたシステムは、言い換えれば「戦えば戦うほどに自身が強くなっていく構造」であるため、あらゆるプレイヤーの行動が無駄になりにくい。
また、前述しているが敵は体力が低下する事で攻撃の激しさが増す。
これは「戦うほどにプレイヤーが強くなると同時に、敵の攻撃も激しくなる」という"激戦"の構造になっているのだが、それはつまり「戦うほどにリスクとリターンが共に増大していく」ことで面白さのキモとなる駆け引きを生み出しているという事なのだ。

その他の紹介していない回復ポットやドライバーコンボやブレイドスイッチ、キャンセルなどのシステムも全て独立・乖離・競合することなく非常に綺麗にバトルシステムと言うテーブルの上に並べられている。
要素が多いため一見すると理解しがたいゴチャゴチャしたものに見えるかも知れないが、これほどのエレガントなバトルデザインとなっている事には驚くほかない。

 

必殺技
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必殺技を発動させると「ボタンチャレンジ」が発生する

前述のとおり、必殺技はアーツを発動させる事によって溜めたゲージを消費する事で発動する。必殺技は最大で4レベルまでチャージする事が可能だ。チャージしたレベルに応じて必殺技も変化する。

必殺技を発動させると「ボタンチャレンジ」と呼ばれるQTEライクなボタン操作を要求される。
ゼノブレイドシリーズ…特にゼノブレイド2においては地味ではあるが欠かせない要素の1つとなっている。

ではなぜそう感じたのかについて説明しよう。
この必殺技の発動中はドライバーはブレイドに武器を渡している。そのため、攻撃が行えない状態だ。
そんな中で本作におけるQTEライクなボタンチャレンジと言う要素がなかった時の事を想像してみて欲しい。
ボタンチャレンジがないと必殺技発動中はユーザーは手持ち無沙汰となりやるべき事が何もなくなってしまうのだ。つまり、戦闘中にも関わらずただただ映像を観るのみとなり、必殺技の時間が終わるのを待つしかないのだ。
かつてPS時代などのファイナルファンタジーでは召喚獣カットシーンが余りにも長く、ただ観るだけの戦闘となりプレイのテンポを著しく落としてしまっていた時期があった。
時間換算からすればゼノブレイド2においてはそこまでのテンポの悪さにならないにしろ、必殺技の発動中にボタンチャレンジ(QTE)がなければゲームのテンポが削がれていた事は疑いようのない事実だろう。

また、本作のボタンチャレンジは成功する事でメリットを得る「加点方式」のシステムである事も上手に活用できていると感じられるポイントだ。
使用方法で最も批判が多いと思われる「QTEの失敗が即ゲームオーバー」が代表的なように失敗する事でデメリットが発生する「減点方式」はハッキリ言って余り良い使用例ではないだろう。

必殺技にて押す事になるボタンもBボタン固定となっているのも非常に良い選択であると感じる。
戦闘中のような集中しているタイミングでQTEの指定ボタンが可変(押すボタンが毎回違う)となるようなデザインはよろしくないと思うのだ。
ユーザーは、戦闘中であれば戦闘に、カットシーンであればカットシーンに集中したいハズだ(ゼノブレイドシリーズにはカットシーン中のQTEはないが)。
そこに押すボタンが毎回違うような過度なQTEを導入してしまうと、戦闘やカットシーンではなくQTEに注意が向いてしまう。これでは本末転倒だ。

QTEと言えば近年では一般的に”悪しき遺産”として語られる事が多いように思うが、それは使い方の問題だと筆者は考えている。
ゼノブレイド2におけるQTEの使用方法は参考になる所が多いのではないだろうか。

 

ブレイドコンボ
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ブレイドコンボ

ブレイドコンボはブレイドの必殺技を属性によって繋げていき、3回繋げられるとブレイドコンボのフィニッシュとなる。
フィニッシュ時にはブレイドのカットインがカッコよく入り、またそれによって達成感を感じさせてくれる。しかも、チェインアタックで大活躍してくれる属性玉のおまけ付きだ。
カットイン中は味方が無敵となるため、緊急防御としても使用するケースが出てくるだろう。また、前述同様にボタンチャレンジもあるため、カットインの必殺技シーンとは言え観てるだけにならないものテンポが崩れない。

ブレイドコンボは一番最初に発動させた必殺技の属性によって繋がる属性が異なるため、戦力の整っていない序盤~中盤までは安定して出せるブレイドコンボのトリガー属性を覚えておくと良いだろう。

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ブレイドコンボの仕組みは単純だが、GUIからはシステムを理解しにくい

ブレイドコンボを3回繋げてフィニッシュすると敵に対してデバフ効果を与える事ができる。
例えば上図にあるような「ブレイド封鎖封印」や「キズナダウン封印」、他にも「悪臭封印」「ブロー封印」などなど。
厄介な特殊攻撃を使用する相手にはブレイドコンボによって抑え込むと良いだろう。

しかし、ここには問題点があるように感じる。
なぜならばGUIから次に何をすればブレイドコンボが繋がるのかがわかりにくいからだ。
攻略記事ではないためブレイドコンボの決め方はここでは説明しないが、GUIではアニメーション(最低限、矢印表記や点滅)などで次に何をすればブレイドコンボが成立するのかわかるように表記するべきではないだろうか。
※黄金の国イーラ編では、システム自体に変更があるがアニメーションによってわかりやすく再構築されている。

システムを理解してしまえば、このGUIも機能として十分に満足いくようにデザインされている事はわかる。
しかし、逆の視点として「システムを理解するためのGUI」として見た場合は少々混乱を招くようなデザインになっているように感じるのだ。

ゼノブレイド2に限った話ではないが、情報量の多いシステムにおいては画面がゴチャゴチャしやすく、またそれを解消しようとシンプルにすると直感性が薄れるというダブルバインドが発生しやすい。
一度理解してしまえば不便に感じる事はなくプレイフィールに大きな影響を及ぼすものではないとは言え、もう少し工夫が欲しかった所だ。

 

チェインアタック

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チェインアタック

チェインアタックとは端的に表現すれば「どうすれば属性玉を上手に割れるか」を考えてパーティー構成を検討するパズルのような側面を持ったシステムだ。

ブレイドコンボで仕込んだ連鎖を発火させるチェインアタックでは、ブレイドコンボによって積み上げた属性玉を割っていく事になる。
属性玉を割る事に成功すれば追加で攻撃するチャンスが発生するため、チェインアタックで大ダメージを狙うためには必須だ。
この属性玉は通常3回攻撃をヒットさせると割れるのだが、弱点属性(炎の属性玉なら水属性)で攻撃させると2回分ヒット相当のダメージとなり簡単に割る事が可能となる。
また属性玉が複数存在した場合、通常ではランダムにヒットするためどの属性玉に当たるかわからない。しかし、属性玉の弱点属性で攻撃した場合には必ず弱点の属性玉にヒットする。
こうした仕組みを知っておくと大量の属性玉があっても効率的にチェインアタックで連鎖を行えるだろう。

バトルにおいてはこのチェインアタックが最も重要だ。
特に高レベルな格上の相手と対峙する場合には必須とも言える。
高レベルの相手の場合には体力の低下に応じて非常に強力な攻撃を放ってくるケースが多くなる。そうなるとこちらの回復ペースが崩され戦力がジリ貧になりやすくなるのだ。そのため、敵の体力が大きく下がりきる前に多くの属性玉を仕込み、そしてチェインアタックにより発火させ、強力な攻撃が放たれる前に敵を始末するのだ。
つまり、本作のチェインアタックは「それまでの立ち回りの成果を評価する要素」になっているのだ。
チェインアタック前の立ち回りで巧みに属性玉を仕込み、チェインアタックを成功させれば自分よりも格上の相手であっても勝つ事が十分に可能になっている。
画像のように表示上のカンストまでダメージを与える事だってできる。

立ち回り上のブレイドコンボで仕込んだものが絶大な威力になって表れるため非常に爽快でハイな気分にさせてくれる最高の攻撃方法となるのだが、戦力の整っていない序盤のうちは属性玉を割るだけでも苦労するため発動したは良いが削りきれずに逆に返り討ちにあう事も多い。
戦力が整ってきた段階で積極的に使用する事をオススメする。

前述しているが、パーティゲージを全消費してしまうリスク、連鎖の仕込みによって敵が強力な攻撃を放つようになるリスクがあるため、リスクとリターン(味方と敵の状況)を考えて使用しよう。

 

ドライバーコンボ

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敵の物理的な状態を変化させるドライバーコンボ

ドライバーコンボはブレイドの能力(属性)ではなく、ドライバー自身の技によって繋げるコンボだ。
ゼノブレイドシリーズの過去作をプレイしているのであれば「崩し⇒転倒」などと表現すればピンと来るだろう。
本作では「ブレイク(崩し)⇒ダウン(転倒)⇒ライジング(打ち上げ)⇒スマッシュ(叩きつけ)」の順番に行う事が出来るようになっている。
ドライバーコンボはブレイドコンボとは異なり、最終であるスマッシュまで無理に繋げる必要はない。戦況に応じて使用するのが良いだろう。
特にドライバーコンボはブレイクがトリガーとなるため、ブレイクを使えるメンバーを複数名用意したり、ブレイク抵抗を下げる装備をしたりすると安定しやすい。
また、ブレイクが通用する敵であればメンバー構成次第でブレイクとダウンを繰り返し発動させ、敵に何もさせないと言う戦術も可能である。
しかし注意点として、ブレイクが無効となる敵やブレイク抵抗が高い敵も多いため万能と言う訳ではない。
ドライバーコンボは基本的にプレイヤー1人だけでは狙って発動させるのは無理がある事が多い。
しかし、味方AIも賢いため状況に応じてドライバーコンボなどなど決めてくれるため仲間を信じて・息を合わせて戦う事が多くなる。
これによってプレイヤーはより仲間との一体感を得る事ができるのだ。

なお、ドライバーコンボとは少々異なるが「ノックバック」「ブロー」と言ったリアクション攻撃も存在する。
敵を高所から落とす事にも使用できるが、これらの攻撃はブレイドコンボと比較すると、よりアドリブ性の高い瞬発力を求められる使い方もできるのが特徴だ。
例えば敵が強力な攻撃の表示・予備動作をした際がわかりやすい。
「ブレイク」や「ダウン」、「ノックバック」と言った攻撃を行うことで敵の攻撃をキャンセルさせる事ができるのだ。
必ず成功するとは限らないが「ヤバい!!」と感じた際に防御行動として行う場合も多いだろう。

 

フュージョンコンボ

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ブレイドコンボxドライバーコンボがフュージョンコンボだ

フュージョンコンボは前述したブレイドコンボとドライバーコンボの両方を発生させた際に発動するものとなる。
発生した・させた際の効果としては「威力アップ」や「ブレイドコンボの時間延長」などがある。
一見、難しいのだがブレイドコンボやドライバーコンボの仕組みがわかってくれば、問題なく発動できる。

筆者がゼノブレイド2 Directを観た際、フュージョンコンボを決めた際に差し込まれる専用のカットインがゲームプレイのテンポの妨げにならないかと少々心配であった。
しかし、実際にプレイしてみるとこのカットインが戦闘のメリハリとなり心地良い達成感があり非常に爽快であった。

 

ロール

ゼノブレイド2のブレイドにはロール(役割)が存在する(ブレイドに関して後述)。
ロールは攻撃、回復、防御の3パターンだ。
攻撃ロールのブレイドは「敵にダメージを与える」ことが主目的となるが、余りにも大きなダメージを与えすぎるとヘイトを奪ってしまい敵から狙われる危険がある。
回復ロールのブレイドの場合には「味方のHPの回復」が主目的となる。パーティーの耐久性に関わる回復役は敵から狙われるような事がないようにしなくてはいけない。
防御ロールのブレイドは「敵の攻撃を全て請け負う」ことが主目的だ。他のメンバーに攻撃がいかないように立ち回る必要があり、逆に言えば防御ロールが耐えきれないようでは全滅は避けられないと言っても過言ではない。パーティーの主柱と言える存在だ。
これら3つのロールは全てが重要な役割であり、どれか1つでも倒されたり欠けたりすれば戦闘において非常に苦しい状況に立たされるだろう。
なお、ドライバーはブレイドのロールの種類によって能力補正を受けたり、戦闘の役割(CPUの挙動)を変更する事が可能だ。
また、同じロールのブレイドであってもブレイド毎に属性や特殊スキルが異なるため、自分好みの戦法や戦術・戦略を考える工程も非常に楽しい。

このような攻撃・回復・防御といった「ロール」と言う概念がある本作では、当たり前の事ではあるが「最強の万能ブレイド」と言った概念が存在しないのは大きなポイントだ。
ここはあくまで筆者の趣味趣向ではあるが、筆者は「最強の装備」や「全パラメーター最大値」といった要素がキャラクターの個性を潰しているように感じてしまい好みではない。
そのため、"最強のブレイド"のような「絶対の存在」がいない本作は、「キャラクター(ブレイド)の長所を活かす」や「ピーキーな能力をよりピーキーに」など自分なりの様々なビルドを考えたり試したりする事ができるため筆者は非常に楽しむ事ができた。
もちろんキャラクターの個性によらず「ひたすらに超火力を目指す」と言ったビルドを検討する事も可能だ。

 

ブレイド

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コアクリスタルから同調して誕生するブレイド

ゼノブレイド2ではブレイドと言う存在とコアクリスタルと同調する事によって誕生し、仲間にする事ができる。言ってみれば「ガチャ」のようなものなのだが。
コアクリスタルは宝箱であったり、敵がドロップしたり…あるいはイベントで入手できるものもある。
本作ではこのガチャのようなシステムによるランダム性によってプレイヤー毎に、あるいはプレイ毎に異なるナラティブを生み出す事にも貢献している。

ブレイドにはコモンと呼ばれるものと、ストーリーの項で前述しているが著名なイラストレーターによって書き下ろされたデザインを3Dモデル化したレアと呼ばれるものが存在する。
コモンブレイドは見た目は少々地味ではあるのだが、属性や能力値、キズナリング(スキルと思って良い)などはランダムで設定されるので、場合によっては大化けするコモンも出てくる。
レアブレイドモデリングは非常に丁寧であり、各イラストレーターの特徴がそのまま3Dモデルになっている。

このコアクリスタルとの同調は1回につき1つしか行えないため、多くのコアクリスタルと同調しようと思うと時間がかかってしまう。
端的に言えばテンポが良くないのだが、こればっかりはどうしようもないポイントのように感じる。
1回につき1つしか行えないポイントを改善点だと思ってしまう気持ちは理解できるのだが、本作のテーマは「ドライバーとブレイドの絆」であり「運命的な出会い(一期一会)」なのだ。
それをソーシャルゲームライクな10連ガチャのようにしてしまうと、「生命(ブレイド)を誕生させている」と言う感覚からはかなり乖離してしまい、「運命的な出会い」がゲームプレイのストーリーテリングとして機能しなくなってしまう。
「コアクリスタルを多く消費する」「全てのレアブレイドを誕生させる」のはあくまでもコアユーザーのやり込み要素であり、通常プレイにおいては必須ではない、あるいは推奨されていない・想定されている訳ではないプレイであるように思える。

 

少々脱線してしまうのだが、ここからは筆者のお気に入りのレアブレイドの一部ではあるが紹介させて欲しい。

 

KOS-MOS Re: / T-elos Re:
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KOS-MOS Re: / T-elos Re:

これは最早言わずもがなだろう。
ゼノサーガシリーズのKOS-MOST-elosだ。
キャラデザはKOS-MOS Re:を田中久仁彦さん、T-elos Re:をCHOCOさんが担当している。このチョイスだけでもファンにはたまらないだろう。
声は(当然かも知れないが)鈴木麻里子さんが担当している。

性能は非常に高く、また扱いやすい。
KOS-MOSはリキャストアップによるアーツ発動効率の上昇に加え、必殺技レベル2では範囲攻撃しつつパーティー全体回復の効力もあるため万能だ。
T-elosは火力に特化しており、敵を倒したり味方が倒されたりすると火力がどんどん上がっていく。ヘイト管理は大変だが非常に強力だ。

単純に考えればファンサービスではあるのだが、本作で明かされる事実から考察すると決してファンサービスと言うだけではないのではないかと感じてしまう所もある。

なお、両者を仲間にした状態でとあるクエストを行う事で両者のちょっとした掛け合いを観る事ができる。

このゼノブレイド2仕様のKOS-MOS Re:に関してもフィギュアが発売されている。
(筆者は当然購入済みだ)

ゼノブレイド2 KOS-MOS Re: 1/7スケール ABS&PVC製 塗装済み完成品フィギュア
 

 

カサネ

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カサネ

カサネは非常に前向きで明るい女の子ブレイドだ。
キャラデザは”しらび”さんが担当している。
声は水瀬いのりさんが担当している。

詳細はカサネのブレイドエストでわかるが、彼女は簡単に書けば「コナン体質」だ。
彼女がいる事で周囲に災いが発生するのだが、彼女がそれを解決していこうとする。
そのどこまでもポジティブな性格は魅力的だ。

能力的には防御ロールのお手本のようなヘイトを強力に奪うものや正面特効などがある。
また、クリティカル発生時に与ダメージの一定量がHP回復になる非常に有用な特性もあるのだが、武器のハンマーはクリティカル率が低く恩恵が若干薄い点は注意が必要だ。

 

ヴァサラ

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ヴァサラ

ヴァサラは和風な雰囲気を持つ、弱きを助け強きを挫く信念を持ったブレイドだ。
キャラデザは鈴木康士さんが担当している。
声はKENNさんが担当している。

能力としては少々扱いにくく、ヒト型(亜人含む)の敵への即死効果や戦闘中に敵を倒す事で与ダメージがアップするなどはあるものの、どれも汎用性は余り高くない。
状況に応じて、あるいはメンバーのブレイドの属性やアーツを考慮して選出する事になるだろう。

ヴァサラが何よりもカッコいいポイントはそのセリフだ。
自分が刀を使用する事とかけた「我が道を切り開く!!」や防御(ヘイトを奪う)ロールである事とかけた「全ての悪意は我が頂く!!」といったセリフが聴いていて実に頼もしくカッコいい。

 

ヤエギリ

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ヤエギリ

ヤエギリは戦う事しか頭にない戦闘狂だ。
キャラデザは岩本稔さんが担当している。
声は竹達彩奈さんが担当している。

ヤエギリの能力は戦闘狂だけあり非常に高く、また扱いやすいものがそろっている。
リキャストアップによりアーツの回転率を高め、会心アップも斧との相性が良い。
また、対格上・対ボス/ユニークでダメージが上がるなど強敵キラーだが、火力の出過ぎでヘイト管理が難しくなる危険はあるので注意したい。

彼女もセリフがカッコいい。
ボスやネームド相手時にヤエギリへとブレイドスイッチを行うと「楽しい!!楽しいぞぉ!!!」と言ったり、ブレイドコンボ時には「これを耐えたら誉めてあげる!」と自信満々なセリフを言う。
その能力も相まって頼もしさは随一だ。

シュルク / フィオルン

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シュルクとフィオルン

ご存知の方も多いだろうがシュルクとフィオルンは前作の主人公とヒロインだ。
キャラデザは田中久仁彦さんが担当している。
シュルクの声は浅沼晋太郎さん、フィオルンは中尾衣里さんが担当している。

KOS-MOS Re:とT-elos Re:はブレイドとして参戦しているが、シュルクとフィオルンは本人としての登場となる。

シュルクの戦闘能力はチーム全体へのバフが主体となっており非常に強力だ。
また、代名詞とも言える「未来視」も専用にシステムに組み込まれているため必見だ。
必殺技のレベル1はチャレンジバトルでお世話になる事が多いだろう。

フィオルンは基本的に回復タイプなのだが、原作同様の脳筋気質でアタッカーとしても結構な性能を持っている。
しかし、強豪ブレイドひしめく風属性であるためパーティーのバランスを考えて入れる事になるだろう。

考え過ぎの可能性は否めないが、シュルクのスキル「未来視」ではゼノブレイドゼノブレイド2の世界の違いについても感じさせる。
ゼノブレイドの場合、シュルクが未来視で観た未来は確定された未来だった。
これは例えば、未来視で見た敵の攻撃は防ぐなり、避けるなりするしかないのが基本であったのだ。つまり、必ず来る攻撃に対して対処する形だ。
しかし、ゼノブレイド2の世界で見るシュルクの未来視はケースによっては発生することすらない不確定な未来となる。
こちらは、ノックバックやブレイクによって比較的簡単に攻撃の発生そのものを防ぐ事ができるのだ。つまり、そもそもそんな未来が起こさない事もできるのだ。
このような要素からも前作ゼノブレイドの世界が「可能性の閉じた(収束した)世界」であると改めて感じる事もできるのではないだろうか。

 

エルマ

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エルマ

ゼノブレイドクロスの実質的な主人公であるエルマさんも参戦している。
キャラデザは田中久仁彦さんが担当している。
声は桑島法子さんが担当している。

このエルマに関してもシュルク達同様に本人としての登場となる。
キャラが濃いメンバーの中にあって、エルマのような非常に頼りになる大人のお姉さんタイプの存在は貴重だ。

エルマの能力において最も特筆すべきなのは「オーバークロックギア」だ。
オーバークロックギアはゼノブレイドクロスにおいて最もお世話になったバトルのシステムなのだが、エルマが戦闘に参加していれば発動可能となる。
オーバークロックギアを発動すると本家ライクなGUIが表示され、本家と同様に攻撃のヒット数に応じて総合的な攻撃力(威力や回転率など)がグングン上昇していく。
更にここで最も嬉しいのは原作同様にBGMが「Wir fliegen」に切り替わる点だ。
処刑用BGMとも言えるこのBGMがゼノブレイド2でも聴けるのは最高に楽しい。
しかし、時間によるリキャストでないため本家ほどアーツを高速に放ち続ける事はできず、またアーツの役割もゼノブレイド2とゼノブレイドクロスでは異なるため、特有の爽快感までは若干再現できていないのは惜しい所だ。

また、エルマとはゼノブレイド2世界で戦闘を行う事になるのだが、対エルマ戦やエルマを連れてユニークと戦ったりするとゼノブレイドクロスのユニーク(オーバード)戦BGMである「Uncontrollable」が流れる点も忘れてはならない。

 

マップ

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フィールドデザインとマッチしないマップ

本作においてマップは最も残念な仕様だ。

例えば上図はグーラのマップの右半身だ。
グーラには右半身から左半身へと繋がる道が存在しているのだが、このマップを見ただけでは右半身のどこが左半身へと繋がっているのか読み解けない。
実際のプレイでもこのマップと同様にセパレートされたフィールドなのであれば話は違うがゼノブレイド2においては1フィールドは全てシームレスだ。
こうなると自分がいるポイントが右半身で、行きたいポイントが左半身であった場合に(左半身マップに自分の位置は表示されないため)位置関係が適切に参照しにくく、土地勘がない状態では迷子になる事は避けられない。

また、ゼノブレイドシリーズは総じて縦横だけでなく高低差や上下に重なったフィールドが特徴となっている。しかし、本作のマップの仕様ではそれらが繋がりをもって理解しにくい。
一般的な3Dゲームであれば同様のマップ構成であっても気にならないのではと感じるのだが、ゼノブレイド2ほど高低差や上下に重なった入り組んだ地形の密度が濃い場合には航空写真ベースのような見下ろし型のマップではどこの道がどこの道の下をくぐっているのかなど詳細な座標関係がわからないため痒い所に手が届かないのだ。

アップデートによってマップの利便性は向上したものの、マップそのものの機能性自体が向上した訳ではないため、土地勘を得るまでは少々大変だ。
マップは本作にマッチした表現方法を設計してもらいたい限りだ。

しかしながら、本作はオープンワールドと謳ったゲームではないとは言え、この規模のフィールドでありながらもファストトラベルが5秒程度という圧倒的な速度を誇っている点は素晴らしい事だろう。
とは言え、フィールドのテクスチャーの描画が読み込み切っていない状態で開始されるため、描画が全て完了するのは10秒程度だろうか。
これは映像面よりも操作の待ち時間が発生しないようにしたトレードオフと思われる。

なお、DLC「黄金の国イーラ」においてはマップの仕様が変更されており、マップ間の繋がりが把握しやすいように改善されている。
しかし、上下の重なりまでは把握できないままだ。

 

アドバンスドニューゲーム

アドバンストニューゲームは無料のアップデートにより追加されたモードで、いわゆる”2週目”だ。

アドバンスドニューゲームで遊ぶためにはラスボス戦をクリアした状態のデータが必要となる。
アドバンスドニューゲームでは仲間にならなかったブレイドが仲間になるほか、とあるブレイドのレベル4必殺技が解禁される。アイテムも一部のイベントアイテムを除けば全て持ち越し可能だ。

その他にも宿屋にてレベルダウンを行えるようになるなど面白い要素もある。
ただ、筆者としてはレベルダウンは十分に嬉しいのだが、キズナリングのキズナギフト(スキル)が十分に解放されてしまっていると、レベルダウンをしても火力が出てしまうため敵の強さはやはり少々物足りない。
そのように感じる筆者のようなプレイヤーには「難易度調整機能」も存在している。
単純に高難度である"極"を選択する事も可能であるし、難易度を”カスタム”にすれば自分好みの戦闘バランスにする事も可能であったりと痒い所に手が届いている。

なお、これからアドバンスドニューゲームを始める方で新たに仲間になるブレイドを早々に出現させたい場合にはアドバンスドニューゲームを始める前にコアクリスタル(特にエピックやレア)を十分な数を揃えておくと良いだろう。

 

チャレンジバトル

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チャレンジバトルは濃密でやり応え抜群だ

チャレンジバトルはDLCの追加要素として配信された新モードだ。
遊ぶためにはストーリーをある程度は進めておく必要がある。

本作でもっとエクストリームなバトルをご所望の筆者のようなプレイヤーには待望の追加要素の1つだ。
実際にプレイしてみると、その難易度バランスは絶妙だ。
決してゴリ押しでは勝てないようになっており、きちんと味方と敵のマネージメントや特徴を把握し、対策を講じなくてはならないようになっている。
高難易度では戦闘のバランスをパーティーゲージ減少技や即死技に頼りがちに感じなくもないが、敵が放つ即死級の危険な技をブレイドコンボフィニッシュやレベル4必殺技、チェインアタック、リアクション攻撃などで凌いでいくアドリブ性は非常にやりがいを感じる。
敵の体力もかなり多く設定されており、簡単には死なないようになっているのも非常に嬉しい限りだ。
戦闘前の事前準備のビルド構成、戦闘中の立ち回りが共に大切になっており、本作の戦闘における楽しさを余すことなく体験できるものとなっている。

そして何よりもリワードとしてゼノブレイドシュルクとフィオルン、そしてゼノブレイドクロスのエルマがブレイド的な役割で仲間になってくれるのは最高のご褒美だろう。
筆者が何より驚いたのがシュルクやフィオルン、エルマ的なブレイドなのではなく、ゼノブレイドシュルクとフィオルン、ゼノブレイドクロスのエルマとして登場している点だ。
ただのファンサービスかも知れないが、考察してみても面白い要素だ。

 

黄金の国イーラ

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黄金の国イーラ

黄金の国イーラはゼノブレイド2のDLCまたは単独で動作するパッケージとしても購入可能だ。
ボリュームはDLCとしては相当なもので、システム面の変更もあるためほとんど新作と言っても過言ではない程の内容となっている。

 

ゼノブレイド2 黄金の国イーラ - Switch

ゼノブレイド2 黄金の国イーラ - Switch

  • 発売日: 2018/09/21
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

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大ボリュームだが、それでも足りていない

ストーリーは本編の500年前をラウラとシンを主人公に置いて描いており、本編では断片的であった部分を補完する役割を持っている。

登場するキャラクター達は非常に魅力的だ。
元気で芯の強いラウラ、優しく見守るシン、おっとりとして天然でお化けが怖いカスミなどなど。
メインシナリオやサブクエストで見せる意外な一面や設定もある。
本編だけでは知りえなかった内容は嬉しい限りだろう。
また、(システムとも言えるのだが)黄金の国イーラにおける最終戦における豪快な演出を用いた戦闘システムは必見だ。

しかし、ストーリー面では少々勿体ないと感じさせる。
ストーリーのボリュームは濃密であるのは間違いないのだが、描こうとしている内容から考えた場合、キャラクター間の親睦が深まっていく過程などの物語の展開が駆け足に感じる部分が多い。

また、ストーリーはゼノブレイド2の世界観をある程度は知っている前提で話が進んでいくため、世界観に関する説明が全くない。
そのため、本作の世界観を全く知らない状態でパッケージ版を購入してプレイした際にはストーリー面において良くわからないまま進んでしまう恐れがある。
これはゼノブレイド2の初心者は困惑する事だろう。黄金の国イーラと言う作品をDLCとしてのみ販売するのであれば「設定を知っているユーザー向け」であるため説明を省略するのは頷けるが、単独起動可能なパッケージ版として考えると非常に不親切な物語構成だ。
黄金の国イーラからプレイしたいと言うユーザーは最低限「ゼノブレイド2 Direct」を視聴してからプレイする事を推奨する。

これらの欠点はどれもDLCと言う立ち位置でこの作品が製作されている事に起因しているように思える。
もしも可能であるならば「ゼノブレイド3」くらいの立ち位置でガッツリと製作する事で「駆け足感」や「世界観の説明」を解消できたのではないだろか。

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サブクエストも優秀だ

黄金の国イーラではサブクエストも優秀だ。

本編をプレイしていれば「あ!」と思える人物が何人も登場する点が面白く、また本編の500年前である黄金の国イーラ編の世界情勢を知る術としても機能しており非常に充実している。
これはメインシナリオを担当した1人でもある竹田さんがサブクエストに関しても関わっているためと思われる。

 

システム

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新作と言っても過言ではないシステム

黄金の国イーラではバトルシステムが本編をベースとしつつも一新されている。
詳細には書ききれないため省略するが、バトル面においては「スイッチアーツ」と「タレントアーツ」が追加されている。

黄金の国イーラでは本編と異なり、スイッチするのがブレイドだけではなく、戦闘する人物をドライバーかブレイドかに切り替える事ができる。
その切り替え時に発動する攻撃がスイッチアーツとなる。
スイッチアーツにはドライバーコンボ系のブレイクやダウンと言った効果が付与されているため、これを使用して敵の状態を切り崩す事が可能だ。
また、被ダメージにはリザーブが存在しており、リザーブされたダメージは赤く表示されている。この赤い領域が表示された状態でドライバーとブレイドをスイッチさせる事で、その分のダメージを回復できる。
これによってキャラクターのダメージコントロールを行うようになっており、本編よりもダメージに対してのマネージメントが更に重要になっている。
また、仲間が入り乱れて戦うため共闘感も強くなっている素晴らしいシステムであるといえるだろう。

タレントアーツは初代ゼノブレイドから久しぶりの復活となる。
これは各キャラクター固有のアーツでそれぞれ特徴が異なる。
HPを消費して全てのアーツをリキャスト完了させたり、全てのアーツのリキャストを消費して敵の行動を止めたりなどキャラクター毎の個性を表現できる非常にユニークな要素だ。

黄金の国イーラでは本編とは異なりパーティーメンバーが実質的に固定となっている。
そのため、シナリオにおける難易度調整や本編で至らなかったチュートリアルが洗練されており、より適切なタイミング・方法で表現できている。
その他に本編におけるブレイドコンボやチェインアタックまでの過程が簡略化されておりパーティーが固定化されている事もあいまって「どうやって連鎖を仕込むか」「どうやって仕込んだ連鎖を発火させるか」を考える必要性が減ったため、戦術性や戦略性は低下したもののこちらも初心者には親切だ。
これらの観点から(本編とはシステムに差異はあるものの)ゲームシステムを理解するには本編よりも黄金の国イーラをプレイする方が良いのではないかと思われる。

また、これらの変更された要素は世界観準拠であるため、ストーリーテリングとしての役割も果たしている事は特筆するべき点だ。
黄金の国イーラで行われるドライバーとブレイドが入り乱れて戦うと言う戦法は500年後を描いている本編では廃れた戦術とされており、ドライバーとブレイドの戦い方が確立されていない時代のものなのだ。
そして、本編と比較しても到達できるダメージ量が明らかに抑えられている(敵の体力設定はダメージ量が低い事を想定したものになっているため安心して良い)。
つまり、戦い方も500年前を再現しているし、数値的なダメージ量を抑える事で不完全な戦い方である事も表現しているのだ。
こういった表現がストーリーテリングとしても機能しておりファンならばニヤリとできるポイントだ。

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キズナグラムのようなヒトノワ

また、過去作に登場しているキズナグラムのようなヒトノワというシステムも採用されている。
サブクエストなどをクリアしていく事で増えていくヒトノワはシナリオを更に補完する役割もあるため、是非ともMAXまで到達してみて貰いたい。

 

グラフィック

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美しく壮大な世界

本作のフィールドデザインは過去作同様に神が宿ったように美しい。
フィールドの広さは過去作ほどではなく、名前しか登場しない村などが存在する事は世界観の奥行き表現には繋がっているものの、同時に見てみたかったと少々残念に感じる部分でもある。
とは言え、その映像の表現力のリッチさは過去作と比較しても格段に向上しているのがわかる。
また、本作は「生きた生物の上に広がる大地」が舞台であるため、遠景に映る大地が生命としてリアルタイムに動いている点も迫力がある。

グラフィックの表現面に関しては前作ゼノブレイドクロスと比較した場合、ライティング・シャドーイング・シェーディング関連が大きく強化されている事がはっきりとわかるだろう。
また、キャラクターの激しい動きにはブラーを使用して、より躍動感が出るように演出されている。

欲を言えば近年増えているフォトモードのような機能が欲しかったと言えるし、それが無理だとしても画面のGUIを全てOFFに出来る機能は欲しかった所だ。

また、本作では可変解像度が採用されている。
リソースの少ないNintendo Switchでは珍しくはないものだが、ゼノブレイド2においては可変解像度がかなり極端に採用されており、密集した敵と戦う場合などは明らかに解像度が落ちているのがわかる。
グラフィックレベルは高水準なだけに解像度が落ちすぎるケースがあるのは少々勿体なさを感じる。

DLC「黄金の国イーラ」では、追加フィールドであるイーラに関して改良が加えられたグラフィックエンジンを採用している事が公表されている。

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オフィシャルアートワークス

ゼノブレイド2ではオフィシャルアートワークスが発売されている。
様々なイラストレーターによるレアブレイドのデザイン画およびコメントやフィールドのアート、後述する戦闘後のキャラ同士の掛け合いなどが収録されており、ファンは必ず手に入れておきたい一冊となっている。

なお、上図は筆者が購入したものを撮影したものだ。

 

アニメーション

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こだわりを感じるアニメーション

キャラクターのアニメーションに関してもこだわりが感じられる。
多くのキャラクターには背面に揺れ物(長髪や布など)があり、ゲームプレイ中に長い時間見続ける事になる背中部分が寂しくならないような配慮もされている。

パーティーメンバーやレアブレイドなどのキャラクターは待機、歩行、走行、立ち泳ぎ、泳ぎ、ジャンプといったモーションに専用のものが用意されている。
一見地味にも思える要素なのだが、これが用意されているのと用意されていないのではプレイフィールに大きな差が生まれる。
何気ない動作1つであっても各キャラクターの個性がより感じる事ができるのは非常に嬉しいポイントであり、そのキャラクターがゲームの中の世界で生きていると感じさせてくれる演出で、本作の品質の高さも同時に感じさせてくれるだろう。
なお、これらのアニメーションに関しては、担当したイラストレーターの意向を開発側が(ある程度)汲み取ったものとなっているようだ。

戦闘中のアニメーションも非常に良く出来ており、キャラクターによって攻撃モーションが異なるのはもちろんだが、攻撃時にはヒットストップも設定されているなどアクションゲームのような爽快さも感じさせてくれる。

 

サウンド

ゼノブレイド2の音楽はゲーム史上に残るべき最高峰の傑作だ。
DLC「黄金の国イーラ」では専用にBGMが追加されており、こちらも傑作の名曲揃いとなっている。
フィールド曲、イベント曲、バトル曲は多くが生音で収録されており迫力や音響、抑揚、繊細さが素晴らしい。
全ての曲が記憶に残る印象的な強いメロディを持ち、ゲームシーンを鮮やかに彩っている。

幻想的な「Xenoblade II - Where It All Beg」「Elysium, in the Blue Sky」は2曲で1曲とも言える曲だ

神秘的でどこか悲しみのある「古代船」

ノリノリの戦闘曲「Exploration」

テンションが上がらざるを得ないイントロから始まる「Incoming!」

暖かみのある牧歌的な雰囲気を持つ「グーラ領 - 森林」

非常に爽やかでコーラス部分が最高にクールな「グーラ領」

美しいピアノの旋律のメインテーマ「在りし日のふたり」

メロディの起伏をしっかりと作りつつも幻想的で美しい「インヴィディア烈王国」

感動的なメロディと歌詞の「Drifting Soul」

負ける気がしない気持ちにさせる本作を象徴する傑作「Counterattack」

最高にノリノリでカッコいいフィールド曲「スペルビア帝国 ~赤土を駆け抜けて~」

色々な意味でヤバい「最強サクラの歌」

Counterattackと並ぶ、象徴的な敵曲「罪深き懇望の果てに」

悲しくも落ち着く「Shadow of the Lowlands」

神秘的な魅力を持った「エルピス霊洞」

圧迫感のある最終盤の戦闘曲「Battle in the Skies Above」

孤独と悲しみから希望へと繋がる穏やかなで力強い「君との未来」

ホムラ/ヒカリ視点で表現された「One Last You」

ゲーム史上でも屈指の完成度を誇るジャジーな戦闘曲の傑作「戦闘!! / イーラ」

ラウラ視点で表現された「A Moment of Eternity」

ここではとても書ききれないのだがサウンドトラックに収録されている全ての楽曲が記憶に残る傑作だと言って良いだろう。
ゼノブレイド2においてルクスリア王国で流れるBGM「Shadow of the Lowlands」 を歌ったANUNAは"Annual Game Music Awards 2017–Artists of the Year"を受賞している。

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2000個と言う限定生産のUSB版

サウンドトラックはCD版の他に数量限定(2000個)の生産のUSB版が存在する(画像は筆者が購入したもの)。
付属するブックレット(限定版CDにも付属)には曲に関する説明などが1曲1曲書かれており読み応え抜群となっているため、気になる人はチェックしておこう。

なお、黄金の国イーラ編の追加楽曲はダウンロード専売となっており、moraなどの配信サイトにて購入可能だ。

 

ボイス

ゼノブレイドシリーズはボイス関連の物量もとにかく多い。
ゼノブレイド2では特にキャラクター同士の掛け合いが強化されており、仲間との一体感・協力感がより強くなっているポイントも筆者としては評価が高い。

戦闘中の行動や掛け合い、特定の行動に対してのリアクションなど、バトルをより良いものへと感じさせてくれる。
例えば戦闘中に回復ポッドを取れば「良いじゃん!」⇒「だよね!」と掛け合いをしてくれる。
戦闘システム自体には直接の影響はない要素であるし些細な事だと思われるかも知れないが、NPC側からの自発的な行動・掛け合いは「仲間と一緒に戦っている」と言う感情が強くなり、とても居心地が良い。

また、この掛け合いはレアブレイド同士でも発生する。
レアブレイドの掛け合いはブレイドスイッチや戦闘終了時などに特定の組み合わせで専用のボイスや掛け合いが発生するものとなっている。
「特定の組み合わせ」と言ってもそれ自体がかなり豊富に用意されており、ドライバーとレアブレイドやレアブレイド同士などの関係性を「ストーリー」の項で記載したブレイドエストやキズナトークとはまた違った角度で補完して解像度を上げる事ができる嬉しい要素だ。
決して必須の仕様という訳でもないこのような要素を用意しているからこそリッチに感じられる部分であるし、それをここまでの物量で提供しているのは筆者としては嬉しいサプライズだった。
なお、レアブレイドの声優に関しては、イラストレーターの希望を可能な限り反映しているようだ。

日本では全く関係のない事なのだが、海外においてはローカライズ(特に海外の声優の演技やリップシンク)に賛否が強いようだ。
ローカライズされるだけマシ」という意見もあるだろう。
しかし、それは0 or 1の極論だ。
ローカライズに失敗してしまうと、それだけで本来存在した面白さや感動が奪われかねない(現に日本向けローカライズでもストーリーやストーリーテリングが意味不明となった作品も数多い)。それはユーザーにとっても開発側にとっても不幸な事になる。
ローカライズやカルチャライズは非常にサジ加減が難しいのは承知しているが、NOAおよびNOEには是非とも丁寧なローカライズをお願いしたいところだ。

 

総評

世の中には「出会えて良かった」「これをプレイしないまま死ななくて良かった」と思える作品がある。
ゼノブレイド2は筆者にとって正にそのような傑作と呼べる作品の1つだ。

クラシックで熱い展開の王道なストーリー。
シーンを盛り上げるビデオゲーム史上でも最高峰の音楽。
戦略性とアドリブ性を両立させたうえで共闘感も感じさせるバトル。
壮大で神懸ったフィールドデザイン。
新作と言っても過言ではないDLC黄金の国イーラ。
GUIやマップなど欠点も存在している事は確かだが、これらはあくまで見た目の問題であるため慣れてしまえばプレイに影響は及ぼす事はない要素だ。本作の輝きに比べれば非常に些細な問題と言えるだろう。

ただし、黄金の国イーラに関してはDLCとしては非常に高品質だと言えるものの、スタンドアローンなパッケージとして考えた場合にはシステム面は初心者に親切であるにも関わらず、世界観の説明がなく初心者殺しであるなど、「黄金の国イーラからゼノブレイド2に入るユーザー」の事を受け入れているようで受け入れていない仕様だ。
この中途半端さは気になる所だ。

 

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【レビュー】ゼノブレイドクロス

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神々しきミラの大地

筆者のゼノブレイドとの衝撃的な出会いから3年経った2013年…その時は遂にやってきた。
待望のゼノシリーズ…ゼノブレイドシリーズの新作が発表されたのだ。
発表当初はお馴染みとも言える「X」の文字が画面に映し出されるPVであり、それがゼノシリーズであること、そして人とロボットを操作できる事くらいしかわからない。
とは言え、筆者は小さい頃にアニメ「ゾイド」を観た影響から広大で未開拓なフィールドをロボットに乗って走ったりしつつ、人を操作したインタラクションもしたいと言う願望があった。そのため、「人とロボットをシームレスに乗り降りが可能なオープンワールド型のゲーム」は小さい頃から熱望していた要素であり、ワクワクした気持ちが抑えられなかった。
今回は2015年に発売し、筆者の小さい頃からの夢に一歩近づいたゼノブレイドクロスについてレビューしていこう。

 

XenobladeX (ゼノブレイドクロス) - Wii U

XenobladeX (ゼノブレイドクロス) - Wii U

  • 発売日: 2015/04/29
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

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終盤になるまで薄味なストーリー

ゼノブレイドクロスのストーリーはSFが最初から前面に押し出されている。
地球は謎の宇宙生命体の戦闘に巻き込まれ崩壊し、新たに居住可能な新天地を求め大型宇宙船で辛うじて脱出に成功した「白鯨」と言う宇宙船に乗る人類の生き残りが主人公達となる。そこからなんやかんやあり謎の未開惑星ミラに白鯨が墜落してしまう。
ストーリーの冒頭は過去作のゼノシリーズの設定を彷彿とさせるような始まりをするなどシリーズファンには興味深いポイントだ。
また、ゼノブレイドクロスのストーリーは全体的に暗い話が多く、サブクエストなどで展開されるクエストでは選択肢によってはNPCが死亡するケースも少なくないのは特徴的だ。
なお、サブクエストでは有名な映画などをモチーフにしたものも存在する。

ゼノシリーズと言えば濃密な設定・演出のストーリーに期待している人も多い事だろう。
しかし、本作ではストーリーに期待をしていると少し肩透かしを喰らう事になる。
前半はチュートリアルが長く、中盤頃までは比較的アッサリとした内容が続く。終盤になり本作のストーリーの全体像がハッキリと見えてくるとストーリーが大きく転がっていく。また、演出面でも良くなっていき、哲学的な問題も提示されるのだが、逆に言えば終盤に到達するまで味気ないストーリーとストーリーテリングになっているのは勿体ない。
これらは主人公がアバターとなっているが故に発生している問題もいくつかあるように思われる。

本作のストーリー面で特筆するべきポイントがあるとすれば「ストーリーを密度濃く描いた作品」と言うよりも「オープンワールド、主人公がアバターである事を意識したナラティブな要素を強調した作品」となっている点だ。
選択肢によってNPCが死亡すると上述しているが、そのような選択肢が潜んでいるサブクエストが豊富に用意されているばかりか、因果応報的に以前の別のサブクエストでの選択が影響して結果が変化するような場合もあるのだ。
つまり、選択肢を選んだ結果が即座には反映されないためにやり直しもしにくくなっており、結果的にプレイヤー毎に異なる体験がゼノブレイドクロス世界に反映される形となっている。
ストーリーが全体的に薄味な印象となってしまっている本作ではあるが、プレイヤーによって結果が異なるナラティビティーがシリーズの中でも強い作品となる事には成功していると言えるだろう。

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ゲーム中では未使用の設定なども記載された資料集

ストーリーでは最終的に回収されていない設定・伏線が多いのは意見が分かれる点だろう。エンディングにしてもオープンエンドに近い形式であるが、解釈の幅が余りにも広い。
考察のしがいはあるものの、考察しようにも余りにも点(ユーザーが知る事が出来る事実)が少なく、線を繋ぎようがない。そのため、どこまで行っても憶測どころか妄想の域を出ない考察になってしまう。
設定資料集を参照してもやはり謎が多く、世界観の全容が掴めない。その上、設定資料集記載の情報が本編では没になっている設定なのか、本編で提示されていないだけで有効な設定なのかも判断できないのも考察を難しくしていると言えよう。

また、ストーリーテリング面として惑星ミラの各所にブレイド(地球軍)の友軍(NPC)がミラの各所に点在しているのも少々残念だ。
人類の存亡の危機であるシチュエーションから考えれば、これほど広域にわたってNPCが既に各所に展開していると「未開の惑星ミラ」と言う印象は薄れてしまう。
せっかくのフロンティアと言うシチュエーションであるのにも関わらず、それを殺してしまうような相反した演出がされているのは勿体ない。

ここからはあくまでも推測だが、本作には元々はアバターでは無い明確な主人公がいたのでは無いかと思うのだ。
初報のPVに登場する金髪の青年あるいは設定資料集に登場する主人公と記載される人物などが当初の構想であり、リリースされたゼノブレイドクロスは何らかの軌道修正により現在のアバターおよびオンライン対応と言う形になったのでは無いかと思える。
そのため、ストーリーやストーリーテリングにおける作り込みが甘くなっているのでは無いだろうか。

 

システム

ここではシステム全般を記載していく。

 

バトル

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バトルはオートアタックとアーツが基本だ

ゼノブレイドクロスの戦闘は前作ゼノブレイドと同様にオートアタックとアーツが基本となる。
オートアタックは戦闘中にプレイヤーが何もしていない時に自動で発生する攻撃の事で威力が弱めの攻撃だ。
アーツは必殺技のようなもので威力が高かったり、味方にバフ、敵にデバフを与えたりと多様な技が存在している。アーツは連続で使用する事はできず、再発動までは”リキャスト”と呼ばれるチャージ時間の経過が必要になる。

本作の新たな要素としては「ダブルリキャスト」が登場している。
発動可能(リキャスト完了)となったアーツを放置する事で更にチャージが行われ、二重チャージが完了した状態がダブルリキャストとなる。
ダブルリキャストしたアーツは威力や効果時間が飛躍的に向上する。

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クラスによって能力に補正が発生する

ゼノブレイドクロスでは「クラス」と言われる概念が存在し、そのキャラクターのクラスによって武器やアーツ、能力補正が異なる。
技となるアーツは武器に依存しており、クラスをマスターする事で別のクラスであってもマスターしたクラスの武器が選択可能となる。

しかし、プレイヤーの分身でもあるアバター以外のキャラクターはクラスの変更や装備可能な武器種別を変更できないため注意が必要となる。

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バトルは膨大な要素が入り乱れる

本作のバトルには膨大とも言える要素が関係する。

まずは装備だ。
装備はインナー(人)用のものと、ドール(大型ロボット)用のものの二種類が存在する。
これらも非常に種類が多く、また敵がドロップする装備に付与されるスキルはランダムで設定されるため良いスキルを考えながら装備を決める必要もある。良い装備を求めてマラソンをするのが本作のエンドコンテンツと言えるだろう。
装備はものによってデザインが異なり、「どのゲーム内企業が製造したか」によってそのデザインの方向性が異なっている点は世界観に厚みを持たせるユニークな設定だ。
このゲーム内企業はゲーム開始時点では地球の企業のみだが、ゲームが進展する事で異星人が運営する企業も登場するようになり賑やかになっていく。
例えば、日本の侍を彷彿とさせるようなデザインが中心の「六連星」やキュートとセクシーを混ぜ合わせた「偽りなき真心堂」などがあり、プレイヤーは性能や見た目の好みで選んでいたらいつの間にか特定のゲーム内企業に偏っていたなんて事もよくある事だ。
なお、クリア後あるいはDLC購入時にはファッション装備と言われる外見にだけ反映される装備枠が解禁される。そのため、「装備は強力にしたいが、見た目は別が良い」なんて時に使用できる。自分好みのオシャレ装備をすると良いだろう。
更に装備にはデバイスと言われるものを装着でき、これによってスキルを更に追加できるためキャラクターを大きく強化できる。
バイスはモンスターからドロップした素材で製作できるが、大量に必要になる事が多く需要に追い付かない事が大半だろう。
これらを組み合わせてキャラクターのビルドを考えるのはキャラクタービルド好きな筆者のような人にはオススメできる。

次は天候だ。
本作では豪雨や雷雨はもちろん、熱波やオーロラなどとにかく天候の種類が多い。
これらの天気には基本的に全てバフやデバフの効果がある(そもそもバフ・デバフの種類も多い)。更に天候によってはスリップダメージが発生するものも存在するため美しい景観に惑わされないように注意が必要だ。もちろん、非常に有益な天候も存在しているため、そのような天気となった際には天の恵みに感謝しよう。

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総合的にはプラスだが、勿体ない箇所も多い

本作のバトルは総合的に見れば間違いなく面白いのだが、勿体ないと感じる要素も多く目につく。

1つ目はオートアタックの意味だ。
本作では前作ゼノブレイドのようなタレントアーツが廃止された影響によりオートアタックの戦術的価値が全く無くなってしまっている点はプレイにおいて支障は無いものの活かしきれていない勿体ない要素になっている。
極一部の武器にはオートアタックで良い効果を発生させるケースもあるが別ビルドで代用も可能であるうえ、根本的にそのような武器の存在は非常に稀なケースだ。
また、キャラクター固有のアーツが無いために個性が薄くなっている点も気になるだろう。
(次作ゼノブレイド2ではオートアタックの関係性が大きく見直されている。)

2点目は共闘感だ。
本作の全体的なバランスは前作ゼノブレイド(および次作ゼノブレイド2)とは異なり「最強装備を作れば最強」と言う思想に近い。
また前作(および次作)と比較すると、キャラクター毎の攻撃役や防御役のようなロール(役割)的な概念が薄くなっている。
そのため、戦闘においての完成形が存在してしまっており、それが「各個人で最強になること」である。
そこに更に各仲間のロール(役割)の薄さからくる戦闘におけるキャラクター間の依存度の低下が合わさり、前作(および次作)のような共闘感も薄くなってしまっているのは残念だ。
別の表現をすれば、前作および次作では「メンバー全員が自分の役割に沿って連携して助け合いながら戦っている」と感じるが、本作では「各メンバーが敵を全力で殴ればいいじゃん」的なマッチョな思想になっているのだ。
そのため、仲間同士で戦っているにも関わらず共闘感どころか1人で戦っているように感じるような事も多かった。
同様にロールの概念が薄い事と、前述の通りアバター以外のキャラクターはクラスが変更不可である事が影響し、キャラクターによっては性能に格差が発生してしまうのもバランスの検討不足と言えるポイントとなってしまっている。

3点目は非常にわかりやすいポイントだがGUIが煩雑であるのは気になる所だ。
前述の通り本作はとにかく様々な要素がバトルシステムに関係している。
パーティーや敵の体力だけでなく、天候の状態や自分と敵の位置関係など多様だ。
更に装備変更やアーツ変更時に使用する事になるシステム系のGUIにおいても要素が多い。
それらを画面上にズラッと表示しているために単純にわかりにくいと言えるだろうし、多い要素を1画面に収めようとしているがために1つ1つの情報が小さく表示されており視認性が悪い。
正直、筆者はそこまで気にならないのだが、筆者よりも視力の悪いユーザーからすれば機能性を損なう問題であるように強く感じる。
要素が多ければGUIが複雑化しやすく、かと言ってGUIを簡略化しすぎると機能認識として問題が発生するケースもあると言うダブルバインドが発生しやすいポイントではあるのだが、本作のGUIの表示方法は余りにも愚直であり、もう少し工夫が欲しかった所だ。

 

ソウルボイス

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”声があること”に意味を見出したシステム

本作のバトルにおけるユニークな要素としてソウルボイスが存在する。
ソウルボイスは各キャラクターが発動できるもので、特定の条件がそろった場合に発生する。
上図の場合にはヒメリが射撃アーツの発動を要求している。
このサインが出ている最中に実際に射撃アーツを発動する事で味方にバフが発生したりと状況を有利にする事ができるのだ。
ソウルボイスはクラスと同様にアバターは比較的自由な設定が可能なのだが、その他の仲間キャラクターはデフォルトで設定されているソウルボイスを変更する事はできないが、その物量は大変な量だ。

前述の通り、共闘感の薄い本作のバトルバランスおよびデザインであるのだが、この要素に関しては仲間同士の共闘感において非常に良いエッセンスとなっている。
ゼノブレイドシリーズは戦闘中であってもかなり喋る事が特徴となっている。
過去作でも喋る事は共闘感と言う意味合いの他にも、機能面としてアーツや状況の把握に役に立つ側面があった。
本作は更にその要素を強化し「喋ること」にシステム的に明確な価値を持たせているのだ。
ただボイスがあるだけ、もしくはボイスが多いだけでは無いデザインになっているのだ。
ボイスを明確なシステムとして組み込んでいるのはゼノブレイドシリーズ自身の長所を更に活かした要素となっている素晴らしいシステムだ。

 

オーバークロックギア

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高速の戦闘に変貌するオーバークロックギア

ゼノブレイドクロスにおいて戦闘を最も楽しくさせるのがこのオーバークロックギアだ。

オーバークロックギアを発動させるにはTP(テンションポイント)を消費する必要があるのだが、これを消費するにはお釣りが来るくらいの恩恵がある。

まずはバフ面だ。
オーバークロックギアを発動させてからアーツをヒットさせるとヒット数に応じて与ダメージ、リキャスト速度、攻撃耐性に大きな補正が発生する(ヒット数を稼ぐには方法があるがここでは割愛)。

次に特徴的なのはトリプルリキャストだ。
前述ではダブルリキャストを紹介したが、オーバークロックギア発動中はダブルリキャスト状態から更にチャージが可能となる。
これがトリプルリキャストだ。
トリプルリキャストは本来ならばチャージに時間がかかりそうだが、オーバークロックギア発動中であるためリキャスト速度も飛躍的に上昇している。
ここに更に与ダメージ倍率アップの効果も合わさるため通常では有り得ないレベルのダメージを、しかも連続で叩き込めるようになるのは非常に爽快だ。

そしてテンションを最も高めてくれるのはBGMだ。
オーバークロックギアを発動するとBGMが専用の「Wir fliegen」に切り替わる。
ノリノリでカッコいいBGMで高速に強力なアーツを放ち続けるのは脳汁が湧き出る感覚だ。

バトルではこのオーバークロックギアを使いこなす事で格段に有利に、そして面白くなるため、装備やデバイス、アーツなどはオーバークロックギアを発動する事を前提とした構成にするのが基本となるだろう。

このオーバークロックギアはドールでも可能であるが、インナー時とは性質が異なる。
ドールのオーバークロックギアは機体の種類によって性質に違うため、その点にだけ注意した方が良いだろう。

欠点をあげるとするならば、このオーバークロックギアはまとも使用しようと思うとある程度のビルドを作り上げておく事が必須でありハードルが少し高いことである。
もちろん、「最高の性能を引き出すための高いハードルのビルド構築」であればエンドコンテンツとして正しい要素だ。
しかし、「まともに使える」ようになるレベルに引き上げるのすらそこそこの努力をしてビルドを組み立てる必要があるのは非常に勿体ない。
オーバークロックギアの楽しさの一端だけでも最初のうちから体験できるようにはして、「もっと強力になるようなビルドを完成させたい」というモチベーションに繋げるべきである。
楽しむためにハードルを超えなければならないため本作の戦闘の醍醐味部分に気が付かないユーザーすら存在する懸念があるのである。
最初のプレイではオーバークロックギアがどれほど有用で楽しいシステムなのかもわからないハズであり、その楽しさを体験できる機会はしっかりとお膳立てしておくべきだっただろう。

 

ドール 

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ロボットであるドールに乗り込んでのバトル

ゼノブレイドクロスの大きな魅力の1つであるロボットであるドールについて記載しよう。

本作ではインナーと呼ばれる人状態とドールと呼ばれるロボット搭乗状態をシームレスに変更できる。この切り替えは例え戦闘中であっても可能だ。 
また、ドールでの戦闘中には確率で機体内部からの視点に切り替わる。
この状態には全ての技(アーツ)のチャージ状態(リキャスト)が無くなり発動可能状態へと切り替わるため演出だけでなく機能面でも嬉しい要素となっている。

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ドールは変形や飛行が可能だ

プレイヤーが搭乗できるドールは人型形態から車両形態に変形が可能だ。
人型形態は戦闘用の形態であり、車両形態は移動用の形態だと思って貰うと良いだろう。そして、ドールでは条件を満たす事で飛行も可能となる。
これらを駆使して広大なミラの大地を余すところなく探索するのは非常に重要な存在だ。
特に人型とビークル形態をシームレスに変形できるのはクールで、走りながら変形する場合と、立ち止まって変形する場合とで変形モーションが異なる点もカッコいい。

問題点を挙げるとするならば飛行可能となるとジャンプが行えなくなり、BGMも専用のものに切り替わる点だ。
ちょっとした段差でも飛行状態に移行してしまうのは微妙に不便に感じるし、フィールド曲を聴きたい時にも飛行状態は不便だ。

なお、ドールの「フォーミュラ」はプラモデルが発売されている。

コトブキヤ ゼノブレイドクロス フォーミュラ 1/48スケール プラモデル
 

 

オンライン

ゼノブレイドクロスではオンラインでの薄い繋がりが存在する。
最も手軽な要素としてはフィールド上で課題となるモンスターの討伐やアイテムの入手を行うものだ。
また、最も協力性の高いものでは他のプレイヤーと協力して攻略する専用クエストやレイドボスのようなモードも存在している。

しかし、どれもオマケと言ったレベルでありガッツリと楽しめるものとは言えず、ハッキリ言って無くて良かったのではないかとすら思える。
また、リワードでは好きな素材と交換できるポイントを入手でき、これ自体はありがたいのだが、入手できるポイントはそう多くないためニーズには追い付かない事が大半だ。

 

グラフィック

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神懸ったフィールドデザイン

ゼノブレイドクロスのフィールドは神のようなセンスだ。
神秘的で雄大なランドマークに、フィールドごとに全く異なる特色。
どこを見渡しても美しいミラの大地は史上に残る傑作と言って良いだろう。

また、フレームレートなども基本的に安定しており、リソースの少ないWiiUであってもこれだけのフィールドの映像出力が安定しているのは驚異的だ。

グラフィック面ではモブキャラクターの造形が余り良くないのは少しだけ気になるポイントかも知れない。
また、アニメーションではキャラクターの歩行、泳ぎ、待機モーションなどが全てのキャラクターで共通したもの(性別でのみ差異のある汎用モーション)になっており、各キャラクターの個性を感じられないのは残念に感じるポイントだ。

画面上のテキストが全体的に小さい事も明らかな欠点だろう。
本作の要素の多さが災いし画面上の情報量が多く、テキストやアイコンが小さくなっている。
人によっては読みにくいと感じる事もあるだろう。

 

サウンド

ゼノブレイドクロスのBGMは澤野弘之氏が手掛けている。
正直なところ澤野氏のBGMは曲としての完成度は素晴らしいものの、曲自体の主張が激しすぎる所があり、ゲームと言う媒体ではやや悪目立ちしているように感じる面もある。
しかし、澤野氏特有のその壮大なBGMは間違いなく他作品では使用する事はできないものだろう。
本作のBGMは「ゼノブレイドクロスに合っている楽曲」と言うよりも「ゼノブレイドクロスでしか使えない楽曲」なのだ。

非常にカッコいい澤野節抜群の「no9=MONOX (0rCH-SUITE"X")」

神秘的な「NEMOUSU秘OUS」

カッコいいSF感が漂う「Black tar」

圧倒的な強敵「Uncontrollable」

処刑用BGM「Wir fliegen」

壮大なフィールド曲「N周L辺A」

未開のミラを探索するような「z5m20i12r04a28」

静と動のメリハリのある荒野の曲「亡KEI却KOKU心」

神秘的であり幻想的な「46-:ri9」

終わりを呼ぶ者の曲でもある「z15f20i12e09l14d」

楽曲自体はどれも素晴らしいものの、サントラは昼用曲と夜用曲が前後半の1曲扱いで収録されているなど痒い所に手が届かない。この仕様はゲーム音楽ファンとしても不満の残る構成だろう。
また、ゲーム内においてもドールの飛行中に流れる「Don't worry」は曲自体は良いものの使い方がイマイチと言わざるを得ない。
ドールが特定のクエストをクリアして飛行可能となった場合にジャンプ操作が飛行操作へと変更されてしまうため、ちょっとした段差を超えたいだけであるにも関わらず飛行中BGMに遷移するようになってしまう。
BGMの切り替え時には毎回曲の先頭から流れる点も少々ばつが悪い。
ジャンプ操作を2回実行する事で飛行状態に遷移するようにするか、BGMが常に先頭から再生される事の無いようにするべきだったように思える。

その他のサウンド関連では相変わらずボイスの量は多い。
戦闘中には前述しているソウルボイスがあり、戦闘終了後には特定の仲間の組み合わせで専用の掛け合いが発生する。

 

総評

ゼノブレイドクロスは総合的には間違いなくプラスだが、粗と言える部分も多い作品だ。

薄味な期間が長いストーリーおよびストーリーテリング、共闘感が薄くむしろ孤独感すらある戦闘、そして個性が無いキャラクターアニメーションは目立つため特に勿体ない部分だ。
しかし、それでも他の追随を許さない圧倒的なフィールドデザインや澤野節が光る壮大なBGM、そしてオーバークロックギアを使用した脳汁溢れる高速の戦闘は間違いなく体験しておくべき内容だ。

 

外部記事

社長が訊く『XenobladeX(ゼノブレイドクロス)』|Wii U|Nintendo

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【CEDEC 2015】シームレスマップが実現したゲーム史上最大級のオープンワールド/モノリスソフト『ゼノブレイドクロス』の開発秘話 | GameBusiness.jp

オープンワールドRPG『XenobladeX』多彩なキャラクターアニメーションにMVNを活用 - CG World

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Monolith Soft Director Would "Love" Xenoblade Chronicles X On Switch, Money Stands In The Way - Nintendo Life

テレビゲーム制作者の声「XenobladeX」 - Joshin

【レビュー】スターオーシャン ブルースフィア

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星のように輝くGBソフトの傑作

スターオーシャン ブルースフィア(以下、ブルースフィア)はゲームボーイ(以下、GB)にて発売されたスターオーシャン セカンドストーリーの続編に当たる作品だ。

ブルースフィアは、セカンドストーリーを主軸としたアニメ(2001年1月放送)とほぼ同時期に発売された。
筆者はアニメからスターオーシャンシリーズを知ったため、そのタイミングで発売されることを知った本作に非常に強い興味を持ち購入に至った。
そして実際にプレイしてみれば…およそGBとは思えないほどの高い完成度の作品であったのだ。

なお、本作のレビューのスクリーンショットゲームキューブゲームボーイプレーヤーを使用して撮影を行っている。

 

スターオーシャン ブルースフィア

スターオーシャン ブルースフィア

  • 発売日: 2001/06/28
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

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謎の惑星に墜落した仲間を救出に来たのだが…。

ブルースフィアのストーリーはSFが主軸となり、時系列としてはセカンドストーリーの後の話である。

当時の仲間(オペラとエルネスト)が宇宙船にて航行中に謎の惑星エディフィスに墜落。
その救難信号を受けたプリシス達が彼らを助けに行くのだが、なんとプリシス達も謎の惑星に墜落してしまう…。

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高度な技術の古代文明跡地に住む原生の人々

プリシス達は謎の未開惑星エディフィスの調査と先に墜落した仲間の救出を行っていくわけだが、徐々に明かされるエディフィスの実態はSF色が満載だ。
エディフィスに住んでいる人達も存在するのだが、彼らは”ギフト”と呼ばれる高度な謎の技術を使用した古代文明跡地に住んでいる。
なぜ高度な技術を保有したかつての文明は滅んだのか、なぜプリシス達は墜落したのか…それはストーリーを知ることによって明かされていく。

ゲームボーイであるにも関わらず、ストーリーにおけるテキストなどは比較的しっかり作られている。
また、イベントではキャラクターに応じてテキストの内容がしっかりと変化するため、その違いを楽しむ事もできるのはキャラクターが好きな人にとっても魅力がある。

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オープニング画面放置でキャラクター説明をしてもらえる

ブルースフィアではオープニング画面にて何も操作せずに放置する事で、前作未プレイでもなんとなく過去の事がわかるようにキャラクターの説明も用意されている。
また、前作セカンドストーリーとブルースフィアの間にどのような事があったのかも記載されているため非常に丁寧だ。

なお、ゲーム内のフィールド上では特定のキャラクターの組み合わせなどで発生するプライベートアクションも搭載されている。
容量的な制約からセカンドストーリーほどの物量は無いものの、キャラクターの関係性やパーソナリティがわかるイベントとなっているため必見だ。

 

システム

ブルースフィアの特徴的なシステムについて記載しよう。

 

バトル

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濃密なバトルアクション

ブルースフィアの戦闘はシンボルエンカウントにより行われ、敵に触れると戦闘用の画面へとシフトする。
戦闘はサイドビューのアクション形式で行われる。
戦闘では敵との間合いによりキャラクターが発動するアクションが異なり、また攻撃のヒットしたタイミングで攻撃ボタンを押せばコンボになっていく。コンボ数に応じて技が最大で3段階(レベル3)まで変化する。
コンボは無限にできるという訳では無く、キャラクターの隠しパラメーターとして「気力」というものがあり攻撃や技を使い続けると気力が減っていき、最後にはスタミナ切れを起こしてしまう。

攻撃の間合い、コンボによる攻撃範囲・タイミングなどを考慮して攻撃を組み立てる本格的なアクションとなっている。

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スキル習得は近年のパークに近い

キャラクターには経験値で上昇するような一般的なレベルの概念が無く、スキルの習得・強化によって能力を向上させていく事になる。
スキルの中には戦闘にて特殊な効果が設定されているものも存在する。
ただしスキルは全てを覚えられる訳では無いため、どの分野を伸ばすのかはロールなども考慮して慎重にキャラクタービルドをしよう。

最も注意したいのはキャラクターが覚える必殺技・呪文だ。
キャラクターの必殺技・呪文は特定のスキルを覚えている事が条件になっている事があるため、スキル習得を誤ると覚えられられない必殺技・呪文が発生してしまう。
また、必殺技・呪文は戦闘中に特定の行動(攻撃や呪文)を行う事で閃く。
特に必殺技は前述のコンボの「〇レベルの中距離通常攻撃」など指定が細かいため閃かせるには少しばかりのコツが必要だ。

クリエイト

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クリエイトはミニゲーム的で質・量ともに充実している

前述の戦闘の項にて説明したのだが、スキルの習得ではクリエイトと総称される要素をキャラクターが習得することがある。

例えば「調理」や「鍛冶屋」「錬金」…他にも「調合」や「複製」など全部で15種類(キャラクターが覚えるもの以外も含めると17種類)だ。
クリエイトはミニゲーム形式であり、全てでルールが異なり、入手可能なリワードも当然異なる。
また、プレイしてから結果がわかるまで(リワードの獲得まで)も短時間であるため、つい繰り返しプレイして楽しんでしまう事も多いだろう。
これらのミニゲームだけでも満足できてしまうほどのボリュームだ。

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クリエイトを駆使すれば序盤から強力な武器が作れるのは魅力的だ

ここではこれからプレイすると言う人向けに少しだけアドバイスとなる。

クリエイトの「鍛冶屋」では所有している武器と鉱物を使用して新たな武器を作るものとなっているのだが、序盤では非常に重宝する重要なクリエイトだ。
上図はラルフ遺跡1Fにあるフィールドアクションのジャンプで入れる比較的簡単かつ遺跡の入り口からも近いエリアだ。
重要なのは画像に写っている敵シンボル。この敵からは鉱物「ミスリル」がドロップするケースがある。
ミスリルは序盤では破格の鉱物であるため、これを使用して武器をクリエイトする事で中盤頃まで利用可能な有益な武器を製作可能だ。
しかも、画像中央のハシゴを昇り降りする事でリスポーンするため効率良くミスリルを狙えるのもオイシイ。
ただし、クリエイト「鍛冶屋」のミニゲームで安定して高得点が狙えるように練習は事前にしておく事はオススメする。

 

グラフィック

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ゲームボーイの中ではグラフィックは高水準だ

本作がゲームボーイであると言う事を考えれば、比較的高水準なグラフィックだ。
アニメーションなども細かく、強いこだわりが感じられる。

 

サウンド

BGMはブルースフィアのエディフィスと言う惑星の世界設定からか退廃的な曲調も多い。こういった怖い・物悲しいと言ったような曲調はゲームボーイで出力可能な電子音とも相性が良いように感じる。

しかしながら、それとは逆に戦闘BGMはゲームボーイが奏でられる範囲では限界があり少々物足りなさは感じるかも知れない。

 

総評

スターオーシャン ブルースフィアゲームボーイ作品とは思えないほどの品質と物量を詰め込んだ傑作だ。

しっかりとしたSFストーリー、キャラクター毎に変化するテキスト、濃密なバトルシステム、飽きる事のないミニゲーム的な多種多様のクリエイトなどなど…どこを見ても特筆に値する。
もしも、これを見ているアナタが本作をプレイしていないのであれば「ゲームボーイかよ…」などと侮らずに是非とも体験してみて欲しい一作だ。 

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ストーリーの設定や開発時の話も掲載されている攻略本

なお、「ファミ通」発行の本作の攻略本では開発者インタビューが掲載されており、開発の経緯や裏話、ストーリーの設定についても解説されている。
気になった方はこちらもチェックしてはいかがだろうか。

【レビュー】オクトパストラベラー

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ルネサンスJRPG

オクトパストラベラーはNintendo Switch プレゼンテーション 2017(※動画はNintendo UK)にて初めて公開された独特のビジュアルを採用したJRPGだ。
筆者はリアルタイムでNintendo Switch プレゼンテーションを視聴していたのだが、その中でも特に興味を持った作品の中の1つであった事は間違いない。
”HD-2D”と表現した2Dと3Dポリゴンを組み合わせたその映像は懐かしさと新しさを両立した私が求めていた作品のように感じたのだ。
そこから開発チームの基盤が同様であるためかブレイブリーシリーズのように体験版からユーザーフィードバックを行ったりと精力的にユーザーとのコミュニケーションを行っていたことも印象深い。
今回は2018年を象徴するタイトルと言っても過言ではないオクトパストラベラーをレビューする。

 

オクトパストラベラー - Switch

オクトパストラベラー - Switch

  • 発売日: 2018/07/13
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

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1話完結の短編集のようなストーリー

本作のストーリーは生まれも育ちも全く異なる8人の人物達によって展開されていく。
ストーリーは各キャラクター毎の章形式となっており、例えば主人公であるオフィーリアやプリムロゼでそれぞれ1章が存在する訳だ。
各章のストーリーは1話完結の短編集を読んでいるような内容で、導入⇒聴き込み⇒ダンジョン⇒ボス⇒完結と言った流れで構成されている。
良くも悪くもではあるが、各章は30分~1時間もあればアッサリと終ってしまうため、読みやすくはありつつも、少し物足りなさも感じるかも知れない。

内容は8人のキャラクター毎に特色が全く異なるのは魅力的だ。
ワクワクするような冒険が待っているように感じられる物語の導入となっているものもあれば、非常に重たい話になっているものもある。
1作でバラエティーに富んだ物語を体験できるのは良いポイントだと言えるだろう。

しかし、各章のストーリーはゲーム的な都合によって全て1つの街で完結するようになっているため、内容によっては展開が少々強引で説得力と言う意味で違和感が生じているケースがある点は少々気になるポイントだ。

また、この主軸とも言える「8人の仲間」という部分が活かし切れていないのは少し残念とも思えるポイントだ。
本作が想定しているであろうゲームデザインは「8人揃えてストーリー全体を進行させる」ことなのだが、極端に言えば最初に選んだ主人公以外の7人は仲間にしなくても進行可能だ。
そのような都合からか、ストーリーは全て1人だけのストーリーとして展開してしまい、例え全員を仲間にしてもストーリーは各個人の物語として展開していってしまう。
その結果として、仲間がいるかどうかなどお構いなしに起承転結の起が8回、承が8回…といった具合に、物語の同じ部分を味だけを変えて提供する形になってしまっているのは勿体ない。
仲間がいる事で物語自体に変化が起きるような構造になっていればより嬉しかったし、特定のキャラクターのストーリーの進行中に他の仲間キャラクターが口出し1つしてこないのも寂しいものがある。

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痒い所に手が届ききらないパーティーチャット

仲間同士の接点が無い事を補うようにパーティーチャットが存在しているのだが、こちらも痒い所には手が届かない。
パーティーチャットでは各章のストーリーの途中や特定のメンバーで会話が繰り広げられるのだが、こちらは会話の内容によっては後付け感が強いものもちらほらある。
中には「このキャラクターはこの行為を容認するんだろうか?」と疑問に思える事もあり違和感を覚えるケースも存在する。

仲間が全く関係してこないストーリー、後付け感の強いパーティーチャット、これらを見せられるだけでは到底「仲間達が1つの共同体として旅をしている」と言う雰囲気が味わいにくいのは設定上から言って残念と言わざるを得ないポイントだ。
そのため、本作に出自も年齢もバラバラのメンバーが一緒に協力・共闘するような旅の物語を期待すると肩透かしを喰らうハメになるだろう。

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矛盾したストーリーテリング

これらのストーリーテリングは矛盾を内包している。
それは、前述した想定されているであろうデザインだ。
想定されている難易度(ゲームプレイ)としては全員を仲間にすることを推奨しているが、ストーリーは他キャラクターが全く関わらない各個人のものしか描かれない。
例えば、仲間が増えていくのではなく「一方その頃…」のような形で別のキャラクターにフォーカスしてストーリーを進行させるようにしているのであれば、本作のような各個人だけで完結するようなストーリー構成には頷ける。
もしくは仲間にすることを特に推奨していないデザインとなっていても悪くはないだろう。
しかし、本作は一方でパーティーチャットを用意しているのである。
ストーリー上には仲間の関係性は全く描かない一方で、パーティーチャットはパーティー間の関係性を表現しようとしている。
後付け感があるパーティーチャットを採用するくらいであればストーリー上でもキッチリと仲間同士の関係性を描くべきだったと思うのだ。

本作は各個人のストーリーにしたかったのか、仲間のストーリーにしたかったのかが不明瞭なままになってしまっている。
もう少し悪い言い方をしてしまうと「どちらにも良い顔をしようとして中途半端になってしまった」のだ。
これは8人という人数が物語を密接に絡ませて描くには少し多すぎた部分もあるのかも知れない。
同じ事を繰り返し書いて恐縮だが、本作に仲間達との旅の物語を期待するのは間違いだ。

 

黒呪帝ガルデラ

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物語は1つの方向に収束する

ここでは少々ネタバレ的な内容になってしまう。ご了承願いたい。

各キャラクターのストーリーは世界設定が前提に立っている所があり、その上に主人公達以外も含む各キャラクターのストーリーが乗っかっている。
その世界設定と表現したものの中心に存在しているのが黒呪帝ガルデラだ。
既プレイの方には少々大雑把な表現でやきもきするかも知れないが、ストーリーを進めていると8人の主人公達に共通するような存在が出てくる。
それがこの黒呪帝ガルデラなのだ。立ち位置的にはクリア後の裏ボスだと言うのがわかりやすいだろう。

しかし、この存在によって本編のストーリーに影を落としているのは少々勿体ない。
ガルデラを中心として世界設定と言う土台(歴史・説得力)を強固に作ろうとした事は好感は持てるものの、各章のストーリーでは逆にその世界設定の辻褄を合わせるため(あるいはそこに目を向けさせるため)に、展開が強引であったり、逆に引っ張りが弱く感じるところもあるなど、上手に使いこなせていない部分が多少なりともある(言い方を変えれば4コママンガの4コマ目だけを先に8パターン作っている)ように感じる。
やはりここでも8人と言う人数は多すぎたのでは無いかと思わざるを得ない。

 

システム

この項ではシステムに関して記載していこう。

バトル

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BreakとBoostの駆け引きは単純だが面白い

本作のバトルシステムはJRPGに多い「ターンベース」のバトルが採用されている。

本作のバトルのユニークなポイントは何といっても「BreakとBoost」だろう。
敵には弱点が設定されており、弱点属性を指定回数分当てるとBreak状態となる。
Break状態となった敵への与ダメージは上昇し、また次のターンが終了するまで行動不能となる。Breakは敵にのみ設定されており、味方キャラクターには無い。
Boostはブーストポイント(BP)を消費して強力な攻撃を叩き込むものだ。
通常攻撃にBPを使用すると攻撃回数が増え、技に使用すると威力や成功率、持続ターン数が上昇する。
これらを駆使してバトルを有利に進める事となる。

文章ではイマイチわからないかも知れないが、このシステムのバトルはJRPGに少しでも触れた事のある人であればすぐにでも理解できるだろう。
理解しやすく、なおかつ強力な攻撃・魔法を放つだけと言ったボタン連打するだけのバトルにならないのは評価できるポイントだ。
また、レベル上げを余り行っていないキャラクターであってもダメージソースにはならずともBreakの役には立つ事は多いため腐りきる事は無いシステムとなっているのも良いポイントだ。

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BreakやBoostのバランスはいびつだ。

しかし、バトルシステムにおいても至らない点は多い。

1点目に挙げるのは「Boostの使用用途」だ。
Boostは前述の通り、威力や攻撃回数を増加させるのだが、これの用途がシステムとイマイチ噛み合っていないように感じる。
Boostの本来の使い方は「Breakさせるために使用するか、Break状態の敵に大ダメージを与えるために使用するか」と言う「駆け引き」だったのでは無いかと思うのだが、実際には後者で使用される事が大半であり、Boostを使用する上での駆け引きが全くと言って良いほどに無い。
これは物理攻撃はBoostによる回数の増加が可能だが、属性攻撃はBoostによる回数増加は無い(威力が上がるだけになっている)ことが大きな要因だ。
こうなってしまうと属性攻撃メインのキャラクターはBreakしてから大ダメージを与えるためにBPを溜めるという選択肢しかない。
更に、「千本槍」や「どしゃぶり矢」と言ったBPを使用しないで容易に連続攻撃ができる手段が存在してしまう点もこのバランスを大きく崩してしまっている。
BPの消費による攻撃は一律で攻撃回数(Hit数)が変動するようにし、BP消費無しに連続攻撃をする手段は廃止するべきだったように思う。

2点目は「敵の硬さ」だ。
本作の敵は全てBreak前提の難易度となっており、例えワンランク下の敵であっても倒すのに時間がかかるのは難点だ。筆者は多くのJRPGにおいて「(単調な)バトルが面倒になる」ことによって通常戦闘を逃げるようになる事が多いのだが、このように格下相手であっても時間がかかるのはそれに拍車をかけてしまう。
ここには、BPの初期値をレベル差に応じて可変にする事でも少しは緩和できたのでは無いだろうか。

3点目は「敵の弱点」だ。
前述の通り本作では敵に弱点が設定されており、その弱点属性で攻撃する事でBreak状態になる。しかし、初見の敵の場合には弱点属性は伏せられているのだ。
これによってバトルにおいて「敵の弱点を調べる」と言う冗長な作業が発生してしまうのはマイナスだ。
「敵の弱点がわからない事が面白さ(緊張感)に繋がっている」と言う意見もあるかと思う。その意見は非常に理解できるのだが、それが通用するのは「本当に初見の敵」だけなのだ。
既知の敵であればGUI上で弱点が開示されているし、一度全滅してからの再戦であってもGUI上で表示されていないだけで開示されているのと同義である。
そのため、初見の時とそれ以降で敵に対しての緊張感が一気に無くなってしまうのだ。
であるならば、最初から弱点属性を開示している前提でゲームバランスを考えて構成した方が多くの戦闘でバランスを保つ事ができたはずだ。

 

フィールドコマンド

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住人とインタラクションが行えるフィールドコマンド

フィールドコマンドは本作が持つ個性的な要素の1つだ。
各キャラクターには住人に対して固有のインタラクションを行う事ができる。
例えば商人トレサであれば住人が所持しているアイテムを購入する事が出来るし、神官オフィーリアであれば住人を導いて一時的に仲間とすることが出来るなどだ。
フィールドコマンドは世界観としての冒険には説得力は欠けるものの、ゲームプレイとしての冒険を強力にサポートしてくれる。
単純に強力な武器・防具を序盤で購入・盗むのは良い気分であるし、リワードはイマイチかも知れないがオルベリクで全ての住人に決闘を仕掛ける事ができるものユニークだ。
また、本当に数多くの村人に設定を用意しており、その人物がどのような人物なのかを表現している。のどかな村の老婆が実は昔は悪逆非道の限りをつくした極悪人だった…なんて事もあるのだ。
これらもやはりストーリー同様に世界設定を重視し「そこに存在している」ことを感じさせてくれる演出だ。
これらの膨大なテキスト量を揃える事が大変だったであろう事は想像に難くない。

とは言え、後半になると形骸化してくるコマンドが出てくるのは少し寂しい所だ。
後半になれば資金が潤沢になりテリオンが「盗む」と言う意味はほとんど無くなるし、レベルも高くなっているならばサイラスが「探る」のもアーフェンが「聞き出す」のも違いが無くなってしまう。
何度も言うようだが、8人と言うのは多すぎだったのではないだろうか。

 

グラフィック

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『HD-2D』と表現したスタイルは息を吞む美しさがある

本作において最も注目するべきは”HD-2D”と表現したそのビジュアル面であると思う。
過度とも思える光源処理は2Dドットの世界を神秘的に魅せ、フィールドでは遠方がぼやけた被写界深度表現が行われ世界に厚みを持たせている。
2Dドット調の絵の中に揺らめくリアルな水は非常に親和性があり、全く違和感無く表現されている。
是非とも幻想的で神秘的なフィールドをその眼で体験して欲しい所だ。

このような2Dドット調のグラフィックスタイルは既に一度確立された様式であるため、多くの人々に特定の共通した印象を与える事に非常に適している。
例えば、オリジナル作品と派生作品・二次創作作品の関係性を考えていただければわかりやすいだろう。
前者は世に出た際には世界観やキャラクターなど誰も知らないため、それを知ってもらうための時間が必要になる。
しかし、後者は原作を知っていれば世界観もキャラクターも説明が不要になるのだ。
本作においても同様にどのようなゲームを目指しているのかが説明しなくても2Dドットベースのグラフィックスタイルだけで伝わるのでは無いかと思う。

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ボス戦のドットグラフィックも美しい

ボス戦で現れるドットも非常に美しく描かれている。
特に人型のボスでは通常シーンでは自キャラと同程度のサイズであるが、戦闘になると何倍も大きく表現される。
このような表現は言わば心象の描写だ。実際の大きさ(身長)は関係なく、キャラクター(主人公)が相手に対して感じている威圧感や恐怖感から何倍にも大きく見えている…それを絵によって表現しているのだ。これはドット絵だからこそできる表現では無いだろうか。

 

サウンド

本作のサウンドも非常に素晴らしい。
BGMは全体的にメロディが強く、耳に残る覚えやすいフレーズだ。

メリハリがあり壮大な「OCTOPATH TRAVELER -メインテーマ-」

可愛らしく郷愁的な「商人トレサのテーマ」

雄大な「剣士オルベリクのテーマ」

孤独な旅を思わせる「踊子プリムロゼのテーマ」

日本や中国的な雰囲気を思わせる「クリフランド地方」

神聖で安らぎを覚える「聖火の都フレイムグレース」

戦い緊張感が伝わる「緊迫」

通常戦闘とは思えない疾走感がカッコいい「バトル1」

暗いながらも本人の強い意志が感じられる「決意」

追い立てられるようなイントロから始まる「ボスバトル1」

優しい曲調で泣けそうな「優しさに包まれて」

激しいイントロとあえて穏やかなメロディが強大な敵を感じさせる「ボスバトル2」

本作の中でも非常に暗い「奪われた街、失った光」

感情のこもった戦闘の雰囲気を感じさせる「旅路の果てに立ちはだかる者」

その演出と共にFF6のラスボスを彷彿とさせる最も迫力のある「魔女と呼ばれる者」「魔神の血を継ぐ者」

本編聴き馴染みのある曲がメドレー&アレンジされる「エンディングテーマ」

その他、2Dドットながらキャラクターにはボイスが実装されている。
親和性自体は悪くなく、特に戦闘中のボイスは迫力がありとても良く感じるほどだ。
強いて上げればやはり戦闘中に少しだけでも仲間同士の掛け合いがあれば嬉しい所だ。
例えば、Break発生時に「よくやった!」「ナイス!」などを攻撃者以外のメンバーが喋ってくれるだけでパーティーの雰囲気やキャラクター性が伝わるのだ。何気ない要素ではあるのだが、これによって感じる雰囲気は何倍も違う事だろう。

また、洞窟内のボイスにはリバーブがかかっていたり、ボス戦突入時の戦闘BGMのシームレスな導入などの表現も地味ながらこだわっているのが伝わるだろう。

 

総評

オクトパストラベラーはHD-2Dと言う独特のグラフィックスタイルとロマンシング サ・ガなどクラシックJRPGの潮流、そして最新のゲームデザインを取り入れた野心的なJRPGルネサンス的作品だ。

本作においてはストーリーやバトルにおいて明らかな粗があるのも事実だが、本作を評価する上では些細な問題だろう。
映像表現は幻想的で美しく、また音楽はどれも印象的で心に残る名曲ばかりである

これまでもJRPGを近代的に昇華させた作品、革新性を持たせた作品、精神性を受け継いだ作品などなどあるが、本作はJRPGルネサンスと評するに相応しい作品に仕上がっている。
JRPGファンであるならば本作はプレイしておくべき作品だろう。

 

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【レビュー】ゼルダの伝説 Breath of the Wild

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野生の息吹が目覚める

ゼルダの伝説 Breath of the Wild(以下、ゼルダBotW)は任天堂が開発した最初のオープンワールド(公式にはオープンエアだが便宜上記事内ではオープンワールドと呼称する)型のゲームだ(任天堂IPという意味ではゼノブレイドクロスが最初だが)。

ゼルダの伝説オープンワールド化はファンの間では特に要望の多かった要素だったのでは無いだろうか。しかし、オープンワールドと言う概念をシリーズ作品に取り入れて成功するか(楽しいものとなるか)は全くの別問題だ。
また、「アタリマエを見直す」と表現された設計アプローチも果たしてどう機能するのか全く予想ができなかった。
この2つの未知のポイントが発売前のゼルダBotWにおいて大きな期待であり、同時に大きな不安でもあった事は確かだ。

 

ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド - Switch

ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド - Switch

  • 発売日: 2017/03/03
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

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本作は非暴力ポストアポカリプスだ

本作のストーリーは簡単な書き方をしてしまえば「ポストアポカリプスもの」だ。
ゲームにおいてはオーソドックスなものの1つなのだが、活用の仕方が一般的なものとは少々異なる。
一般にポストアポカリプスが採用されるケースと言うのは「プレイヤーが暴力(犯罪)を行使する事を肯定しやすい環境」であるためだ(有名なタイトルで言えばFalloutThe Last of Usなど)。
しかし、本作においては魔物を斬り倒すという暴力(?)は存在するものの、人命を奪うなどの犯罪とは全くの無縁だ。
筆者はポストアポカリプスの設定は好きだが、犯罪性を肯定するために導入されるのは(見飽きたと言う意味も含めて)余り好きでは無い。
ゼルダBotWのようなポストアポカリプスの設定がもう少し増えて欲しい所である。

本作はポストアポカリプス的な世界となったハイラルを舞台とするが、ストーリー自体ががっつり存在するというものではなく、100年前の大きな戦いの影響によって荒廃したフィールド探索する事で過去の出来事を推測・考察するような”環境ストーリーテリング”が主だと言って良いだろう。
フィールドを探索する事でいくつも発見できる瓦礫は100年前の街の名残りであり、いたるところにある大破した機械兵器(ガーディアン)は戦争の名残りである。
その痕跡を基にして昔はどのような文化や営みがあったのか、そしてどのような戦いがあったのかを想像させるようにデザインされているのは世界観を自然に伝える手法として成立している。

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ストーリーは失われた記憶を取り戻す形で表現される

本作のストーリーらしい部分のストーリーテリングは「失った過去の記憶を取り戻す」という形式で表現されている。
リンクは長い眠りの中で過去の記憶を忘却し、思い出の地などに訪れる事で記憶を取り戻す。この記憶を取り戻すか否かもユーザーに委ねられており、もしもストーリーに興味のない人がいれば無視して遊んでも問題ないように設計されているのが特徴だ。

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登場回数が少ないのは悲しいがキャラクターは魅力的だ

ストーリーの内容はメインシナリオとしてはガノンを倒す事が最終目標であり、また100年前に何があったのかを知る事がシナリオとなっている。
ゼルダシリーズと言えば本編では大きく扱われないものの、過去作との繋がりや時系列を見つけ出すのもシリーズファンとしては恒例だろう。本作においても考察しがいのある作品だ。

また、筆者がプレイしている所感としてはプレイヤーに対しての動機付けが素晴らしい…いや、嬉しいと感じさせられた。
それはストーリーに絡むミファーやダルケル、ウルボザ、リーバル、ルージュ、インパ、パーヤ、シド…そしてゼルダ。これらの人物がリンク(プレイヤー)に対して絶対の信頼を置いてくれているためだ。
リンクを信じて、全てを託してくれるのだ。
彼らとの出会いによって「ガノンを倒そう」と言う意思はプレイ開始時点よりも遥かに強くなる事だろう。
特に上記の重要人物1人辺りの登場回数(あるいはカットシーン)で言えば片手で数えられる回数であるが、その中でも「その人物がどういう性格なのか」「その人物とリンクの関係性」が無駄なく・わかりやすく表現されているため、逆に「これだけの登場でも、これほど記憶に残るのか」と驚くばかりだ。

しかし、前述の通りではあるが全体的にみると本作のストーリー自体に関しては過去のゼルダシリーズ(特に3Dゼルダ)からすれば少々薄味になっている事は否めない。
また、全てのカットシーンがいつでも見返せるようになっていない事も少々物足りなく感じるポイントだ。

 

キャラクター

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キャラクター達は本作でも変わらず魅力的だ

キャラクターの魅力に関してもう少しだけ記載させて欲しい。

本作のゼルダは非常に共感しやすい女の子として描かれているのでは無いだろうか。
自分の非力さと周囲からのプレッシャーから心が少し折れかけているようだ。
しかし、仲良くなった相手に見せる活発な一面は彼女の本質的な部分なのだろう。

ゴロン族の英傑ダルケルは歴代のゴロン族通り頼れるアニキ的な人物だ。
ヴァ・ルーダニアのイベント最後にダルケルとユン坊のシーンがあるのだが、筆者はこのシーンで胸が熱くなった。

ゾーラ族の英傑ミファーも歴代ゾーラ族と同様に少し切ない物語となっている。リンクに対しての想いや里のゾーラ達、父への想いなどとても切ない。
家族ものに弱くなった事もあり筆者には致命傷だ。

シドはミファーの弟であり、その性格は非常に明るく熱血だ。プレイヤーを調子に乗せてくれるようなキャラクターで大好きなキャラクターだ。

ゲルド族の英傑ウルボザは支えてくれる姉御肌の女性だ。ゲルドと言えばガノンドロフと同族であり、そこに対しても思うところはあるようだ。

100年後のゲルド族をまとめ上げている族長ルージュは周囲の助けもあるが幼いながらもゲルド族をまとめ上げている。しかし、表に見せる事の無い彼女の本当の姿は年相応の可愛らしい女の子なのだ。

リト族のリーバルはリンクを一方的にライバル視しており、セリフなどは鼻につくのだが、それはリンクの実力を認めている裏返しでもある。ヴァ・メドーのイベント最後では少年マンガのライバルが仲間になった時の展開のようなこそばゆい嬉しい感情になる。

他にもリンクに片思いしているシーカー族のパーヤ、長期的なイベントやDLCでも活躍し演奏している曲が印象的なカッシーワなど記憶に残るキャラクターはたくさんだ。

 

システム

本項ではゲームプレイにおけるシステム全般について記載しよう。

 

バトル

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バトルアクションはオープンワールド型のゲームとしては多彩だ

バトルにおいては単純に剣や槍と言った武器を振るだけでなく、お馴染みの横っ飛びやバック宙返り、中遠距離からの弓矢、新アクションとしてはジャストガード(パリィ)と言った非常に多彩なアクションが行える。
ここまでのバトルアクションが行えるオープンワールド型のゲームはそう多くないだろう。
任天堂らしくボタン割り当てなどの操作性は抜群でストレスフリーだ。
アクションゲームにおいては例え操作に慣れたとしても、1つのボタンに複数の機能が割り当てられると、ふとした瞬間に誤操作をしてしまう経験のある人もいるだろう(例えば、アイテム取得と攻撃ボタンが共用の場合、アイテムを取ろうとして攻撃してしまうなど)。
本作においてはそのようなボタンの割り当てを行っていないため、誤操作により思った事と違うアクションをする事は稀だ。
しかし、ハード的な特性上としてJoy-Conのマイナスボタンが押しにくいのは少々難点だ。特にゼルダBotWはマイナスボタンも使う頻度は高いためハード側の配置はもう少し検討して欲しかった所だ。
プロコントローラーであれば問題ないのだが、こちらは別売であるためフェアとは言えないだろう。

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戦闘においては地形や天候も活用できる

様々な武器や環境を利用して戦いを有利に進められるのは楽しく。
特に序盤は操作も覚えきれておらず、自分も数値的に弱いため、敵が強く感じられ「ヤバい!!」と思うケースが多いだろう。
そんな中で機転を利かせた敵の攻略方法が出来た時の達成感は他のゲームではなかなか体験できないものがほとんどだ。
簡単に使える爆弾を利用するのはもちろん、火を使って燃やしたり、上昇気流を発生させて工夫するなんてのも良い。宝箱を敵の頭上に落とすのもアリだ。風だって使える。崖や落石と言った地形利用も良いだろう。時には落雷に頼るなんて事も可能だ。
単純な操作の上手さだけでなく、環境や物理法則(化学含む)でアドリブ性をもって敵と対処できるのはゼルダBotWの凄みだ。
着火させてフィールドを燃やし敵に影響を与えるゲーム、物理法則(物理エンジン)を利用して敵を排除するゲーム自体は個々に存在はしていたが、それらが全て行える事は珍しいだろう。また、プレイヤーが思ったようにそれらが使える品質である事は驚愕だ。
本作においては「こういう事もできるのでは…」と思い付いたことは大半が行える。それほど本作はオープンなのだ。
利用できるもの全てを利用して敵を倒す。卑怯と言われようとも勝てば官軍なのだ。

 

探索

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広大なフィールドは美しい数式によって楽しさを生み出す

大自然の広大なハイラルCEDEC2017において説明がなされた通り、非常に理論的に地形が構築され、またオブジェクトが配置されている。

時にはランドマークをユーザーに見せ、時には隠して別のオブジェクトに注意を向けさせて寄り道を誘う。また、遮られた地形の先に何があるのか興味を惹かせる。
これによってユーザーはまるで自分の意志によってハイラル世界の気になった場所を探索している気持ちにさせてくれるのだが、実際には開発側が意図している設計通りにユーザーが動かされているのだ。これはゲームの設計思想、そしてそれが機能していると言う点において100点とも言えるものだ。
これを言葉にするのは容易いが、これほどの広大なフィールドでそれを行うのは骨が折れる事であるとも容易に想像できるだろう。

「隠す / (徐々に)現れる」と言った配置方法自体は他のゲームにおいても全く無かった訳ではない。しかし、ゼルダBotW以前においてはおよそ感覚・印象・勘の世界の話であり、明文化して数式のような形で表現された事は少なかったのでは無いだろうか。
そしてその数式が正しい事はプレイした人であれば理解できるだろう。

 

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祠の謎解きのバリエーションの豊富さは歴代最高だ

祠は1つ辺りに何かしらのコンセプトを持って制作されているため、過去作の謎解きと比べると圧倒的にバリエーション豊かだ。
歴代の3Dゼルダシリーズでこれ程のバリエーションが出せなかったのは1ダンジョン辺りの構成が巨大であり、またその巨大なダンジョン全体で整合性のとれたデザインにする必要があったためだ(例えば「エリアAの仕掛けでエリアBの状態が変化する」など)。
本作では1祠1コンセプトにまとめ上げているため「他の祠とネタが被らなければ良い」くらいの制限で作れるのがこのバリエーションに繋がっているのでは無いだろうか。もちろん開発者の努力は言うまでもない。

また、1つクリアするのにかかる時間もそう長くないため、気軽に挑戦できる点も嬉しい。
歴代のダンジョンでは初見なら短くても1時間程度はかかる事がほとんどだ。そうなると気軽にはプレイできない(一長一短ではあるが)。
Nintendo Switchと言うハードの特性を考えればパッと挑戦できてサクッとクリアできる構成は親和性が高い。

 

四神獣

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四神獣のギミックは男心を鷲掴みだ

本作で最もやりごたえのあるダンジョン形式のステージと言えば四神獣だ。

これら四神獣の謎解きは非常にダイナミックなものとなっている。
まず、四神獣の前哨戦として各部族の筆頭やリーダーと協力して神獣を弱らせる所から始まる。
神獣からの攻撃をかわしつつ、仲間と協力して攻撃を当てていく。
これが非常に楽しかった。
前哨戦が終わると神獣内部に入っての謎解きパートとなる。
神獣内部はシーカーストーンのマップから実際に神獣を動かす事で発動するギミックが実装されている。
マップ操作でリアルタイムに駆動する神獣を色々な場所から見ているだけで男心が鷲掴みにされる感覚だ。
例えばヴァ・ルーダニアの背中に乗った状態からヴァ・ルーダニアを操作すると姿勢が変更される。これがリアルタイムに動いているのを観ているだけでも感動ものだ(ぼーっとしているとマグマダイブしてしまうが)。
そして謎解きが終わるとボス戦へと遷移する。
ボス戦は少々簡単でボタン配置などの操作系を覚えてしまえば特別苦労する事はないだろう。

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神獣内のボス戦よりも前哨戦の方が盛り上がる

全体的には神獣攻略は非常に楽しめるのだが不満点が無い訳ではない。
まず、神獣と戦う前哨戦だ。
筆者としてはこの前哨戦が一番熱い展開の戦闘に感じた。
そのため、神獣攻略の構成を「侵入・謎解き⇒内部ボス戦⇒神獣戦」の順序にした方が盛り上がったように感じるのだ。
筆者が盛り上がると感じた理由は複数ある。
1つは単純にスケール感だ。
圧倒的に巨大な神獣を相手にして戦っているのは非常に楽しい。
ゼルダBotWにおいては通常これ程のスケール感で戦う事が無いため、特別な雰囲気が段違いだ。
2つ目はシチュエーションだ。
神獣戦では仲間と共に戦う。シドやルージュ、ユン坊、テバなどと一緒に戦うのだが、一人で戦っているよりも仲間のリアクションがある戦闘の方がプレイしていて励みになるし、モチベーションが高くなる。
特にシドの「上がれぇー!!」という叫び声は一緒に戦っている雰囲気が感じられ非常に頼もしく、また楽しかった。
これらの要素が前哨戦で終わってしまうのは少々もったいない。

次に上げる不満点としては神獣内部で戦う事になるボス戦だ。
前述しているが、このボス戦がなんとも難易度が低めだ。
これは「どこから攻略するのも自由」としたための難易度なのだろうが、少々あっけなく倒せてしまうため英傑がやられてしまった説得力に欠ける。
ここには進行度合いに応じて攻撃パターンが増えるなどの要素があると歯ごたえがあったように感じる。

また、ギミックはダイナミックで凝っているとは言えボリュームとしては余り無いため、歴代3Dゼルダのような長大なダンジョンも欲しい所だ。

 

ウルフリンクamiibo

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ウルフリンク

ウルフリンクamiiboをかざすとゼルダBotWの世界にウルフリンクが召喚される。
このウルフリンクは「ゼルダの伝説トワイライトプリンセスHD(WiiU)」と連動しておくといくらか強い状態で召喚できる。

このウルフリンクは本作のamiiboとの連動機能において最も豪華な内容であると思うが、使い勝手は少々悪い。
ウルフリンク自体の性能は悪くは無いのだが、召喚するためには毎回amiiboをかざす必要があり何度も召喚しようと言う気持ちにはなれない。
欲を言えば「ウルフリンクを召喚」ではなく「ウルフリンクに変身」したかった気持ちの方が強い。
広大なフィールドをウルフリンクに変身した状態で駆け回るのは正に野生の息吹を感じる事だろう。
例えそれが叶わぬ夢であったとしても、せめてウルフリンクamiiboでは「ウルフリンクを召喚するアイテム」が入手できる形であって欲しかった。
それがあるだけでも召喚のやりやすさは数段上がった事だろう。

 

剣の試練

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剣の試練

剣の試練はDLCの第一弾として登場したやり込み用の要素と言えるだろう。

試練に挑戦するとリンクは全ての装備がはがされる。
武器も防具も無いスタート直後のような状態だ。
そこから徐々に困難になっていく試練を突破する事となる。
難易度はやや高く、マスターモードでプレイしているならばより難易度は上がるだろう。
通常モードでプレイをしているのであれば時間をかけて慎重に攻略していけば問題は無いハズだ。

とは言え、この要素はやり込みの”おまけ”的な側面が強いため、剣の試練自体もリワードもゲームプレイの幅が広がるようなものとはなっていないのは少々残念だ。

 

英傑たちの詩

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英雄たちの詩

有料DLCとして登場した「英傑たちの詩」についても触れておこう。
DLCの追加要素は3段階に分かれてる。

まずDLCにて最初に挑む事になる新たな祠では「一撃の剣」と言われる特殊な剣を使用するパートから開始される。
この剣を装備すると「敵を一撃で倒し、また自分も一撃でやられる」というシステムになるのだが、正直このシステムは余り上手であるとは言えない。
戦いが大味となるし、また(今作は最も死にやすい3Dゼルダではあるが)死にゲーとして設計されている訳ではないためプレイフィールも中途半端だ。

次に各地の神獣近辺に足を運び祠をクリアしていく。
こちらは祠を出現させる工程においてもちょっとした謎解きのような要素が存在し、祠の内部でも謎解きがある。
その地域の祠を全て攻略すると神獣で登場したボスと再び戦う事になる。
装備は決められたものを使用する事になり、戦う前には「警告(以前と同じだと思うな…と言った内容)」までされるのだが、既に戦った相手であるため余り苦戦する事もないだろう。
なお、これをクリアするとボス戦を何度もやり直す事ができるようになる。

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新しく追加される神獣の内部

最後に待ち構えているのは神獣だ。
四神獣同様にダンジョン全体を駆動させるダイナミックな謎解きが楽しめる。
英雄たちの詩においてはコレが最も楽しい要素では無いだろうか。
とは言うものの謎解きのボリュームとしては四神獣の1体分と同程度であるため少々物足りない。
謎解きが終わればボス戦となるののだが、こちらもまた本編の神獣同様に大して強くは無い。そこまで苦戦する事も無いだろう。

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マスターバイク零式

英雄たちの詩をクリアするとリワードとしてマスターバイク零式が手に入る。
性能は申し分なく、いつでも簡単に呼び出しできるためハイラルを駆け巡るのにはピッタリだ。
しかし、このリワードも少々中途半端と言わざるを得ない。理由は単純で馬と役割が大きく被っているためだ。
せっかくDLCのリワードであるのだから新しい拡張要素であって欲しかった訳だ。
開発初期に存在したと言うスカイウォードソードのような上空からダイブする要素などちょうど良いと思うのだが(完全な新要素では調整が必要となり開発工数が大きく異なってしまうが)。

このDLCゼルダBotWをやりこみたいユーザー向けの内容が中心ではあるのだが、本当にやりこんだユーザーからすれば物足りない感は否めない内容・ボリュームだ。
本編の内容が素晴らしかったために期待値が高くなりすぎた事も影響しているだろうが、やはり新エリアなどは欲しかったところだ。

 

グラフィック

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フィールドのグラフィックスタイルはフォトリアル寄りだ

ゼルダBotWのフィールドはディテールこそスタイライズド(デフォルメ、記号化)されているが、そこで使用されている映像技術のほとんどがフォトリアルに感じられる。
草木の揺れ、光の散乱や反射、フォグによる遠近表現はフォトリアル指向な表現ではないだろうか。オブジェクトはスタイライズドが強いが、映像演出はリアルと言う聴いただけではチグハグだが、全く違和感がない…どころか「野生の息吹」を感じさせる生きた世界が広がっている。
また、テクスチャーの使い方には任天堂の完全子会社であり本作においても部分受託制作を行っているモノリスソフトの影響を少なからず感じる。

フォトリアルとスタイライズドの表現手法はそれぞれ長所と短所が異なると考えている。
フォトリアルでは、精細なグラフィックとなり説得力を持たせる事ができるが、逆にその情報量が多さが表現や地形のわかりにくさに繋がったり、精細であるが故に表現方法にウソがつけなくなってしまう場合が多い。
例えば、フォトリアルな人間がマリオ並みのジャンプをしていたら違和感になるだろう。それを実現する場合、説得力ある設定や表現・エフェクトが不可欠だ。
他にも「見えない壁」の類もフォトリアルな表現では違和感が強くなるだろう。
一方スタイライズドな表現では、無駄な情報を省略して表現する手法であるため表現や地形などを視覚的にわかりやすく見せる事が可能だ。また、フォトリアルよりはウソをついても違和感を感じにくいため柔軟な表現方法が実現可能だ。しかし、その情報量の少なさは重厚感には欠け、やりすぎれば”子供向け”と言う第一印象へとなってしまう(子供向けが悪いと言う事ではないが)。
ゼルダBotWにおいてはフォトリアル過ぎず、またスタイライズド過ぎてもいないと言うバランスが非常に良いと筆者は感じた。

余談だが、リリース当初は雨や雷雨といったエフェクトの激しい天候の際にはフレームレートが落ちる事も多かった。
しかし、後のアップデートによって最適化されフレームレートが落ちる事はほとんど無くなっている。

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二重虹まで確認できた時には余りの作り込みに驚いた

ゼルダBotWにおいては天候に関してもこだわりがある。
雨の前触れ、雨が上がった後に残る湿気による光のぼやけ…特に驚愕したのは上図にある「二重虹」を見つけた時だ。
二重虹は2つの虹が現れる現象で、片方の色のグラデーションが逆転しているのが特徴だ。本作ではその現象まで再現されているのだ。
これを発見した筆者はその余りの作り込み驚愕した。

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水の表現もまた美しい

静止画では少々わかりにくいかも知れないが、ゼルダBotWは水の表現も美しい。
池や湖の水を見て「飲めそう…絶対うまい…」と感じたのは筆者だけでは無いだろう。

 

サウンド

本作のBGMは近年のオープンワールド型のゲームで一般的となりつつあるプレイヤーの操作や環境に応じて変化する「インタラクティブミュージック」と表現されるものが採用されており、世界観の邪魔にならないように作られている。
この手法は古くはゼルダシリーズであれば「ゼルダの伝説 時のオカリナ」の時代から既に採用されているものだ。
とは言え、それを余りにも前面に出した結果として自然さは生み出されるものの、かつてのような名曲で無くなったのは残念な限りだ。
技術的にはCEDEC2017採用情報などで公表されている様々なものが使用されているのはわかるのだが、何度も聞くため記憶には残るのだが1つの音楽として考えた場合はメロディラインが非常に弱く良い曲とは言えないものが多い。
とは言うものの名曲が全く無くなった訳ではない。

最も最初に聞く神秘的で”もののけ姫”を彷彿とさせる「メインテーマ」

神秘性と不気味さ(なんとなくクロノトリガー感のある)「祠」

追い立てられるような圧迫感のあるトラウマ曲「ガーディアン戦」

カッシーワがいるとエポナの歌のオマージュと気が付く牧歌的な「馬宿」

作中でも屈指の印象に残る曲であろう「カッシーワのテーマ」

時のオカリナ版のアレンジとなっている「ゾーラの里」

あのシーンが脳裏に甦る「リンクの記憶「英傑 ミファー」」

カッシーワの奏でる感動的な構成の「英雄たちのバラッド」

砂漠の決戦が見事に表現された「神獣 ヴァ・ナボリス戦」

どこか東洋的な神秘性の伝わる「聖なる泉の使い」

懐かしい旋律が威圧感によって最終決戦を表現する「ハイラル城」

ゲーム本編では使用されていないようだがNintendo Switch Presentation 2017にて登場したPVにて流れた「Nintendo Switch Presentation 2017 Trailer BGM」も素晴らしい。

 

ボイス

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本作はシリーズで初めてボイスが付いた

ゼルダBotWではシリーズにおいて初めてキャラクターに明確なボイスによるセリフが付いた作品だ。

セリフで喋るのはカットシーンのみではあるがゼルダシリーズとしてはこれも大きな挑戦と言えるだろう。
しかし、違和感やデメリットにこそなっていはいないものの、ボイスありのセリフとなった事が明確なメリットとなっていたかは疑問だ。
過去作のゼルダシリーズのストーリー上にボイスが付与されただけに近く、余り活かし切れていないように感じる。
せっかくボイスが付いたのであれば、ボイスが付いた事に意味のあるストーリーテリングやゲームシステムまで設計して欲しかった所だ。

 

総評

ゼルダの伝説シリーズはゲーム史において何度もスタンダードを築いた偉大なタイトルだ。そして本作もまたスタンダードとなる1作かも知れない。
物理と科学が融合した洗練されたシステム、美しい大自然のグラフィック、計算された広大なフィールド構成…全てが見事に融合して化学反応を起こしている。
また、バグの少なさも特筆すべき点と言って良いだろう。
任天堂と言うメーカーがビデオゲームに対してどれほど真摯に向き合っているか、妥協を許していないかが伝わってくる傑作だ。

しかし、BGMのメロディの弱さや意味があったのか不明なボイスなどのサウンド面には若干の疑問が残る。ここは今後の作品に期待したいポイントだろう。

また、残念ながらDLCに関してはニーズとの乖離が激しく、素晴らしいとはお世辞にも言い難い。
ボリュームとしてもオマケ程度でありガッツリ遊びが増えるものでは無い。

 

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【レビュー】絢爛舞踏祭

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その答えは、YESである

筆者が絢爛舞踏祭と言う作品を知ったのはアニメがきっかけだ。
絢爛舞踏祭はゲームに先駆けて「絢爛舞踏祭 ザ・マーズ・デイブレイク(2004年)」と言うアニメが放送されていた。そのアニメのキャラクターや潜水艦、ラウンドバックラー(以降、RB)と言われる機体、なによりシチュエーションに興味を惹かれゲームを買おうと決心したのだった。
しかし、ゲームが発売されたのはアニメから約1年後の2005年7月7日。筆者はその間やきもきしながら待っていた事を覚えている。

※本作のスクリーンショットには本来は右上にプレイヤー名が表示されているのだが、画像編集して塗りつぶしを行っている点にご容赦願いたい。

 

絢爛舞踏祭

絢爛舞踏祭

  • 発売日: 2005/07/07
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

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ストーリーテリングと呼べるものは皆無だが、その設定は細かい

本作の大まかなストーリーを説明すると「太陽系の100年の平和を実現させる」ことが主題となっている。
主人公であるプレイヤーは海洋惑星となった火星を地球の従属体制から独立を目論む集団の一員だ。活動は「夜明けの船」と呼ばれる未来的な大型潜水艦を中心に政治的活動を含め行われる。

メタ的な視点も物語に導入されているのも特徴で、例えば本作においてプレイヤーはプレイヤーキャラクター(アバター)というインタフェースを介して絢爛舞踏祭の世界に介入し、ある種「世界が平和になるように手引きする」といったような設定となっている。
その他にも様々なメタ的視点が散りばめられており、プレイヤー(アバター)とは何なのか、介入しているゲーム世界とは何なのか、その上でなぜ世界を救うのかという観点を考慮した世界観が構築されている。
これはプレイヤーがゲーム内世界および住人と相互にインタラクトしている事に対しての説得力を強めるような演出でもありながら、一種のビデオゲームの”お約束”を自己批評した末のデザインでもある点は興味深い設計だ。

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動的なドラマを生み出す構造

キャラクターや政治体制、物流、そしてメタ的視点を考慮した上での世界観など設定は非常に細かいのだが、本作においてはストーリーテリングと呼べるような演出などはほとんどない。
物語にしろ会話にしろ説明的なものは一切ないため、NPC達と会話をしていく中でプレイヤーが能動的に点を繋ぎ合わせていくような形式だ。
それにより徐々に世界設定や世界情勢、キャラクターの生い立ちなどを知っていくのが主体である。

絢爛舞踏祭では根本的にはプレイヤーの行うインタラクションや選択自体をストーリーテリングとして扱い、プレイヤー毎あるいはプレイ毎に異なる展開と体験を重視する作りとなっている。
例えば、戦闘によって母艦である夜明けの船が被弾すると、その損傷レベルによっては上図のように艦内に浸水が発生する場合もある(火災となるケースもある)。
これが更に悪化すると隔壁が強制的に閉鎖され、場合によっては浸水エリア内に自分やNPCが取り残されるケースもある(取り残される=死亡確定では無い)。
その際には隔壁外のキャラクターに対して遺言を残す者もいれば、ただただ絶望するようなキャラクターもいる。必死に浸水を食い止めようとするキャラクターもいるのだ(もちろん、その行動をするのは自分になるかも知れない)。
その時に繰り広げられる動的なドラマはプレイヤーにとって正に一生の思い出となるだろう。

とは言え、このような逆境と言えるシチュエーションでも来ない限りは全体的には地味な進行となりがちである点は否めない。
また、ストーリーには時間制限がありゲーム内時間において3年以内に100年の平和を達成しなくてはならない点も賛否あるだろう。
筆者としても「もっと長く、ゆったりとした気持ちで潜水艦内の生活シムを体験したい」と言う想いもあれば、「時間制限が無くてはドラマにならない」と言う想いもある。

 

余談

余談であるが、前述のとおり本作はアニメが先行して放映されている。
しかし、ゲームとアニメでは設定など異なる点は多いため名前など以外は基本的に別作品と捉えるのが良いだろう。
本作はガンパレード・マーチ(以降、ガンパレ)や刀剣乱舞で知られる芝村裕吏氏の作品だ。
そしてガンパレの続編とも言えるのがこの絢爛舞踏祭である。
ストーリーにおいてもガンパレに縁のあるキャラクターが登場するのはファンであれば嬉しいポイントと言っても良いかも知れない。また、その他の芝村氏の関連作品からも登場しているキャラクターも存在している。
芝村氏の作品は設定・裏設定などが非常に多く、また未だに解明されていない設定なども多い。本作においてもそれは同様であるのだが、その辺りは深く知っていなくてもプレイに支障をきたす事は無い。
その辺りはあくまでも世界観をより楽しむものとして捉えると良いだろう。

 

システム

前述のとおり、本作は「ガンパレ」の続編とも言えるタイトルであり、それはシステム面においても同様の事が言える。
当時の水準から考えればオーパーツとも言えるほどにこだわり抜いたNPCのAI設計や世界観構築とそれに対するインタラクションは絢爛舞踏祭と言うゲーム内世界の説得力と厚みを持たせる事に成功している。

しかしながら、全体的に単調で地味な面が多く「シム」的なゲームとしてロールを楽しむ事が好きな人でないとついていけないだろう。
また、俯瞰視点時のY座標カメラ位置がやや独特で慣れるまでは「見えにくい」と感じるかも知れない。
ユーザーによるカメラ制御は横方向への回転のみであるため、縦方向に回転できないのは地味ながら不便だ。

 

キャラクターインタラクション

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記憶と感情と欲求によって行動する多種多様なキャラクター達

絢爛舞踏祭NPCのAIは非常に手が込んだ作りをしている。
NPC達は「記憶」「感情」「欲求」を基にして行動する。

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プレイヤーに話かけてくる、NPC同士で会話する

インタラクションと言う観点から考えたときNPCからプレイヤーに対して話かけてくれるのも筆者としては凄く嬉しいポイントだ。
プレイヤー側から話しかけるゲームは数え切れないほどあるが、NPC側から話しかけてくれる事のなんと嬉しい事か。
世界の中の自己認識には他者の存在が欠かせない。
そのためNPC側から話しかけられると言う要素は「自分(あるいは自分が操作しているキャラクター)が世界に存在している」と強く感じさせてくれるのだ。これはプレイヤー側からのインタラクションしかないものと比較すれば明確に感じるポイントだろう。
ただ、緊急のタイミングでNPCが話しかけてくる事もあり「空気を読め!!」と思う事があるのが少々リアルな点だろう。
また、見えるところ・見てないところでNPC同士の会話も行われており、それによってNPC間の好感度の状態も変化していく点も面白い。

 

記憶

「記憶」は”いつ”、”どこで”、”誰と”、”何をした”と言ったものを記憶しているという事だ。
ゲーム内では例えば「○○(NPC名)から伝言を頼まれた。」「昨日、○○(NPC名)からこんな話をされた」などが実際にNPCとの会話の中で繰り広げられる。

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NPCの記憶構造

記憶は会話だけで無く、その他にもNPCの人物評価においても利用される。こちらは「過去に行われた行動から、そのキャラクターに対しての印象が決定される」ものとなっている。
記憶は3層のキュー構造となっており、上図を用いれば最近の出来事を記憶する記憶領域Aから固定観念となるような過去の出来事が記憶される記憶領域Cまである。
これらの記憶領域はエンキュー可能数が最大値を超えると古いものから消えていくそうだ。そしてこららの記憶領域のエンキューできる合計数は全キャラクターで共通であるが、記憶領域毎の割合は年齢によって違うとの事である(若いキャラクターはAの割合が多く、年齢の高いキャラクターはCが増えていくそうである)。

 

感情

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現在の感情を表すアイコンが表示される

キャラクターには現在の感情を表すアイコンが表示されており、上図であれば”ご機嫌(爽快)”である事がわかるようになっている。
ご機嫌(爽快)な状態のキャラクターに対しては「何か良い事でもあったのかい?」と聞いたりする事ができる。
感情は前述の記憶と結びついており、「少し前にこんな事があって…」と話をされる事もある。

感情にはニュートラルの普通を始め、爽快や悲哀、羞恥など全部で8つのカテゴリーに分かれている。
実際にはもっと細かなパラメーター(感想)が設定されているようだが、表面上には8つカテゴリーによって判断する事となる。
感情の状態によって行えるインタラクション・行えなくなるインタラクションがあるため相手の雰囲気を確認して話しかけるのがベターだろう。

 

欲求

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空腹・睡眠などの欲求により行動するケースもある

各キャラクターには欲求が設定されており、空腹になれば食堂に行ったり、尿意に襲われトイレを目指すキャラクターもいる。
これらの欲求はキャラクター毎にサイクルが設定されている。

ただし、飲まず食わず、睡眠を取らない(取れない)プレイをしても特に問題は発生しない(体力の回復が遅くなる、士気が落ちるなどのデメリットはある)。
特にプレイヤーキャラクターは欲求を意識する事はほとんど無い点は少々残念だ。プレイヤーとしてはこれらの欲求は設定されていないため、食事も睡眠も実際に行ったとしても「やっているフリ」でしかないのだ(体力回復が遅くなるデメリットは同様に発生するが問題になる程のデメリットにはならない)。
少々難易度がハードコアになるかも知れないが、食事・睡眠をしないと倒れる、死亡するようなサバイバル的プレイスタイルを出来るようになるモードがあるともっと良かったかも知れない。

 

ロール

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役職により異なる行動

ゲーム開始直後のプレイヤーはRB(ガンダム的な立ち位置と考えて貰っていい)パイロット部隊である「飛行隊」に配属されている。
配属は自由に変更可能であり、変更したい人物よりも威信点と呼ばれるポイントが上回っていれば解任・就任などを行う事ができるようになる。
また、就任する場合には一定の技能レベルが必要となる部署もあるため、その場合には技能レベルを訓練して上げるか、アイテムによって上げるなどすると良い。

役職は複数あり、前述の飛行隊、飛行隊に指示を出す飛行長、飛行長に指示を出すのは艦長だ。艦長の下には、操舵長、水測長、航海長、水雷長、機関長、軍医 …これらには更に副官も存在する。
これらは平時では特にプレイを気にする事は無いが、戦闘中には行う事に(当たり前だが)違いがある。そのロール(役割)に浸ってプレイするのも悪くは無いだろう。
とは言え、どの役職も地味な作業でありゲームとしての華やかさには欠けるのは少々物足りない。

 

戦闘

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戦闘は地味だ

本作の戦闘はレーダーチャートのようなトポロジーによって行われる。
これは水中戦闘と言う事もあり説得力こそあるものの、ゲームとしてはダイナミズムが欠けており非常に地味と言わざるを得ない。
また、RBや母艦は場合によっては一瞬で撃沈されるケースもあるため注意が必要だ。
特にRBは耐久値が低いため1発の被弾が命取りになるケースも多い。

RB操作の戦闘と母艦操作の戦闘は基本的には違いは無いのだが、母艦操作の場合には各部署への指示出しによって母艦が操作されるため、RBと比べると攻撃も移動もタイムラグが発生する。これによって仲間(NPC)と一体になって艦を運用していると言う手応えと、指揮している手応えの両方を感じられる点は非常に良い。
RB操作は気楽ではあるのだが、筆者としては母艦操作の方が(見た目は変わらず地味なのだが)断然面白いと感じる。

 

政治と物流

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本作の世界には政治と物流が存在する

本作の世界は主に火星を舞台にするが、火星での活躍に応じて、その他の惑星や異星人との関係に変化も生まれてくる。

火星の海域では敵対勢力が航行しているが、その他にも物流が存在している(上図、一番右の緑のラインが物流ライン。緑の円が物流船を表す)。
物流船を拿捕すると資金を含めた多様な資源を確保できたり、物流船の所属する都市の政治的民意に変化を与える事ができるが、やりすぎれば火星内の都市間の機能低下が発生して都市の人口が減ってしまう事もある。物流船を襲うべきか否かは慎重になった方が良いだろう。

また、各都市の政党や、各惑星の政権の状況によっても敵対勢力に変化が生まれる。ただ基本的には敵対勢力を潰して戦力を削ぐプレイ方針でも構わないため、この辺りは深く考えなくても問題は無い。

 

グラフィック

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会話時に使用されるモデリングは優秀だ

本作のキャラクターモデリングはフォトリアルとスタイライズドの中間的な表現を採用している。
また、PS2のリアルタイムレンダリングの標準レベルから考えれば非常に高水準なモデリングとアニメーションも特徴的だ。

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艦内には様々な施設がある

自由に歩き回れるフィールドは母艦である夜明けの船の内部しか存在しない。
また、施設のインタラクションも非常に地味だ。

ゲームとしては余り楽しめるインタラクションは無いのだが、潜水艦と言う狭い共同生活空間においてストレスを出来る限り溜めないように施設を配置可能な限り作りました…と言う雰囲気が感じられる構成になっている点は実に説得力があり評価できる。
インタラクションの地味さは「近未来潜水艦生活シム」だと思えばまぁ我慢できるだろう。

 

サウンド

サウンドは全体的に単調で短い周期でループする曲が採用されている。
決して優れたメロディでは無いが、同じフレーズを何度も聞くため結果として記憶には残りやすい音楽だ。

 

総評

絢爛舞踏祭は登場した時代が早すぎたタイトルの代表格だ。
今でこそShadow of Warのネメシスシステムを代表に動的ドラマを生み出す仕組みが見受けられたり、ウォーキングシムなど全体的に地味な進行の作品であってもマジョリティではないながら一定の評価を得ていたりするが、本作のシステムは今なお かなり尖ったシステムである事は疑いようもない。
ビデオゲームの価値観が多様化した2010年代中盤~後半以降に登場していれば全く異なる評価を得ていた事だろう。

NPCとのインタラクションによる動的ドラマというナラティブがゲームの根幹となっており、筆者は大好きだと声を大にして言う事はできるが、(設定の説得力こそあるものの)全体的に華やかさに欠ける点が多く、万人にオススメできる一作とは言い難い。
「近未来潜水艦生活シム」と言うシチュエーションを満喫してみたいと言う方は是非ともプレイしてみると良いだろう。

 

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【レビュー】マリオテニス ACE

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マリオテニヌACE

ニンテンドー64にて初登場したマリオテニスシリーズ。
筆者はマリオテニスシリーズをプレイするのもマリオテニス64以来だ。
今回は2018年の初頭にNintendo Direct mini(どの辺りがminiだったのか疑問であったが)にて発表されたNintendo Switch用ソフトであるマリオテニスACEについてレビューを行っていこう。

 

マリオテニス エース - Switch

マリオテニス エース - Switch

  • 発売日: 2018/06/22
  • メディア: Video Game
 

 

ストーリー

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あるようで無い、無いようであるストーリーはいつもの事だ

マリオテニスACEには1人用のストーリーモードが搭載されている。

マリオシリーズ全般では、その中身自体はあるようで無い、無いようであるストーリーがほとんどだ。本作においてもそれは例外では無い。
ルイージがうっかり邪悪なテニスラケットを手にしてしまう。
するとルイージがラケットに心身共に操られてしまうから、さぁ大変。
何だか色々とヤバそうだからルイージを助けよう(あんまり気は進まないが)。

良くも悪くもゲームプレイが中心であり、ストーリーはあくまでもオマケだ。

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各ステージでちょっとしたストーリーが展開される

基本的にストーリーは紙芝居形式に近い形で展開される。
だがやはりストーリーはそこまで重要ではない。そのステージでどのようなルールで試合を行うのかが説明されると言った事がほとんどだ。
ストーリー上で行われる試合はユニークなものが多く、変わったシチュエーションでの試合ができる事は魅力的だろう。

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チュートリアルも兼ねているストーリー

当然ではあるがストーリーは操作のチュートリアルでもある。
基本的な操作や、本作で追加された新たな操作などを教えてもらえる。
しかし、チュートリアルとしては少々痒い所に手が届いていない。

本作で使用する事になる新しいシステムなどを”強制的に”活用する場面はあれど、プレイヤーが自然にそれを活用するように仕組まれていないため、ストーリーを全てクリアしてもプレイヤー同士での実際の試合との乖離が激しい。
ストーリーを全てクリアしたからと言って試合展開が巧みになる訳ではない。

ストーリーではマリオしか操作できない点も少々不便な点だ。
マリオテニスシリーズではキャラクター毎に性能が異なる(例えば同じパワータイプであっても細部な性能差が存在する)。ストーリーと言うチュートリアル内で各キャラクターの個性やプレイヤー自身の好みが把握できない。

また、ストーリー内のリワードとして獲得したラケットもストーリー内でしか意味を成さない点も勿体ない。
ラケットにまで性能差を付与するかは議論の余地があるが、コスメ的な意味だけでも通常モードにおいても是非とも使用可能にして頂きたかった所だ。

 

システム

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これは我々の知るテニスでは無い。テニスという名の格闘技だ。

マリオテニスACEは「テニス」と名乗った格闘技だ。

強力なショットを放てばラケットが壊れ、試合で使用できるラケットがなくなれば「K.O.」となる。
筆者はテニスゲームで「K.O.」と言う字面を見る事になるとは思わなかった。
しかし、全体的には非常にバランス良く構成されている。
ラケットへのダメージあるいは破壊を狙える強力な”ねらいうち”や”スペシャルショット”。
強力なショットや取れないボールに対して使用する”加速”。前述の強力なショットもジャストタイミングで返す事でラケットにノーダメージで打ち返せるが、加速を使用する事で打ち返しのタイミングが掴みやすくなる。
そしてそれらも決してノーリスクでは無い。
まず、”ねらいうち”や”スペシャルショット”、そして”加速”は通常のラリーで溜まっていくゲージを消費して放つ事になる。
むやみにゲージを消費してしまうと、いざという時に強力なショットを防げなくなってしまう。自分と相手のゲージ量を考慮して、マネージメントしつつ運用する事が重要になるだろう。
また、強力なショット類は大きくジャンプして放つため、相手から打ち返されてしまうと無防備な時間が長く一転してピンチとなる点も注意した方が良いだろう。

更に追加された要素として「テクニカルショット」と言うものが存在する。
テクニカルショットはタイミングよく発動できればゲージを大きく取得できるショット…と言う説明が行われる。
しかし、基本的には手の届かない・普通では追いつけないボールに対してアプローチする手段として活用する事が大半であろう。
これによって足の遅いパワータイプのキャラクターでも多くのボールに対応できるようになっている。
しかし、逆に手元に来たようなボールを打ち返す事は出来ない。
また、タイミングが合っていないと打ち返せても逆にゲージを消費してしまう事もある点がリスクとなっている。

これらの要素はダイナミックであり、カジュアルな要素であるため、大味な要素と感じるかも知れないが、そのバランスは非常に良くまとまっている。
マリオテニスシリーズ自体、(打ち返すだけならば容易であるため)防御がかなり優位であり試合が長引きやすく、またそれ故に単調になりがちであった。
本作でも実力の拮抗した者同士であれば試合が長引く事は変わらないのだが、追加要素によって適度な緊張感の維持と試合を中長期的に考えた戦略を取る事ができるようになっている。

とは言え、テニス自体は良くできているものの、それ以外の面での問題がある。
まずテニスの試合をやる意義が非常に薄い事だ。
試合を数多くこなしてもリワードは何も用意されていないのは問題だ。
テニス自体が楽しい事は嬉しい事だが、それだけでは何回・何十回とプレイするモチベーションには繋がらない。
試合数などに応じてコスメ的なラケットやコスチュームが入手できるなどすれば良かったのだが…。

また、ステージは試合開始時にランダムで決定されるのだが、任意にステージを選択できないのも問題だ。
各ステージではバウンドの性質が変わるため、どのステージでプレイするかは試合における重要な要素の1つである。簡単に選択できない点は不自然だ。
一応、ステージ選択は設定から「ランダム選択の対象から排除する」形で疑似的に決める事はできるのだが不便であることに変わりはない。
そのうえ、例え対象から排除しても一度ゲームを終了してしまうと、その設定は記憶されておらずプレイする度に再設定が必要となるため不便さの二重苦だ。

本作のゲームバランスはシングルスでは良く感じるのだが、ダブルスでは同じようにはいかない。
”ねらいうち”や”加速”、”テクニカルショット”はダブルスでは前衛と後衛の役割を曖昧にしてしまう。そのため、ユーザー同士でダブルスプレイをするのであれば普通のテニスでは一般的では無い陣形を取る方が安定する。
だが、NPCを交えてダブルスをする時にはそうもいかない。
NPCは基本的に前衛時には常に前衛にいようとするし、後衛時には常に後衛で頑張ろうとする。
特に前衛時には困ったもので、後衛が取るべきボールに対してもテクニカルショットを駆使して食らいついてしまう。これによって後衛側のリズムが崩されてしまいプレイフィールに悪影響を及ぼしているのだ。

Joy-Conをラケットに見立てて実際にスイングしてプレイする「スイングモード」は出来が余り良くない。理由は複数ある。
まず一番大きな問題点はユーザーのスイングとキャラクターのスイングが同期しない点だ。マリオやクッパと言ったキャラクターは通常のプレイと同様のスイングをするため、ユーザーがJoy-Conを振った動作とシンクロしていない。
そのため、視覚情報と操作に食い違いが発生しておりタイミングが取りにくくなってしまうのだ。
また、Joy-Conを振った際の判定も曖昧だ。
筆者が十数試合程度プレイした限りでは誤操作・誤認するケースが多く感じた。

 

グラフィック

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彩度が高めのグラフィックは見栄えがある

グラフィックはフォトリアルでは無いため彩度が高めで、コントラストがハッキリしている。
試合中もボールにカラーエフェクトがかかっているため視認性も良い。

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クッパはカッコいい

本作から…と言う訳では無いのだが、クッパのバックハンドショットはオシャレかつカッコいい。スタイリッシュな一撃をブチかまそう。

サウンド

本作ではステージも少なく、ストーリーもそこまで凝っていないため収録楽曲は少なく、印象も薄い。
最も聴き馴染みのある曲となるとメイン画面で流れているメインテーマではないだろうか。

試合中には加速を使用する事でBGMにフィルターがかかったりとインタラクティブな使用のされかたもしている。

 

総評

マリオテニスACEはマリオテニスシリーズ共通のカジュアルさを維持しつつ、ダイナミックな要素を増やしている。
ダブルスでは少々欠点もあるが、全体的なバランスは悪くない。
プレイすれば非常に楽しいテニスゲームを体験できるし、友達とプレイすれば間違いなく熱中する事だろう。
しかし、1人の時にプレイし続けるには余りにも淡泊な内容になっている事は残念だ。

 

外部記事

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